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 帝国が侵略者に襲われるという知らせが村にも届いた。村人たちは恐れおののき、避難の準備を始めた。しかし、アルベルトは動じることなく、静かに村の広場に立ち、周囲を見渡した。

「帝国が、ついにこの日を迎えたか…。」

 彼は小さく呟くと、手のひらに錬金術の力を込め、空気を震わせるようにして力を発動させた。その瞬間、村の大地がわずかに揺れ、土の中から薬草や作物が次々と生えてきた。自然の力を引き出すことで、周囲の村人たちは少しだけ安心した。

 村の広場に集まった人々は、アルベルトの姿を見て驚いた。

「アルベルトさん、何をしているんだ?」

「彼ならきっと、大丈夫だろう。」

 村の中で彼を信じる者たちの声が上がる。


 その頃、帝国の王宮では、大公ヴァルドが焦りの色を隠せなくなっていた。

「侵略者の大軍が帝国の北部に迫ってきている…。何とかしてアルベルトを呼び戻さねば、我々は滅ぼされる!」

「しかし、アルベルトを呼び戻すことはできません。あの方はもう、私たちには戻らないお方です。」

 重臣たちは口々に言ったが、大公は決して諦めなかった。

「私が追放したことを、あの男に謝りに行こう…。それしか道はない。」


 一方、アルベルトは村の外れにある小さな小屋で、ひとり黙々と錬金術の道具を整えていた。突然、村へ使者が駆け込んできた。

「アルベルトさん、大公が来ています!もう一度、帝都に戻ってくれと言っているんです!」

 使者は息を切らせてそう言ったが、アルベルトは冷静に答えた。

「戻るつもりはない。あの大公には、もはや何の用もない。」

「でも、帝国が危機に瀕しているんです!大公は、アルベルトさんの力が必要だと言っています!」

 アルベルトは少し黙った後、使者にこう言った。

「私が戻るべき理由があれば、教えてほしい。」

 使者は驚いたように言葉を詰まらせたが、やがて必死に言った。

「大公は、貴方が居なければ、帝国が滅びると言っているんです!王宮はもう、手のひらを返すように頼み込む状態なんです!」

 アルベルトは静かに目を閉じ、深く息を吐く。

「分かった。しかし、私は決して無償では戻らない。今の私には、帝国のために動く理由がない。」

 使者は驚きながらも、アルベルトの言葉をそのまま伝えた。

 数日後、大公が村に足を運び、ついにアルベルトと対面することとなった。

「アルベルト・ヴァルス…。私はお前に謝らなければならない。」

 大公ヴァルドは、かつての威厳を失い、頭を下げていた。アルベルトは彼を冷静に見つめた後、無言で頷いた。

「謝罪の言葉で済むと思っているのか?」

「…ああ、そうだ。お前を追放したことを後悔している。あの時、お前を無駄にしてしまった。帝国を守るために、今お前の力がどうしても必要なんだ。」

 大公は必死に言葉を重ねた。だがアルベルトは少しだけ微笑んで答えた。

「必要だというなら、私の力を貸してやってもいい。しかし、条件がある。」

「条件?何でも言え、アルベルト。お前の力さえあれば、帝国は救われる。」

「それなら、まず一つ。私を過去のように扱うな。私はもう、錬金術師としてではなく、一人の力を持った人間として、扱われなければならない。二つ目、今後は私が決めることに口を出さないこと。」

 大公はその言葉に顔を曇らせたが、最終的にはそれを受け入れるしかなかった。

「分かった…受け入れよう。」

 アルベルトは満足そうに頷いた後、力強く言った。

「では、私は帝国を守るために全力を尽くす。しかし、私が戦うのは、私が決めた時だ。」

 その言葉通り、アルベルトは帝国の侵略者に立ち向かう準備を整えた。彼が錬金術を駆使して戦いを挑む時、帝国は再びその力を目の当たりにすることとなるのだ。

 そして、ついに帝国の運命が決まる瞬間が訪れた…。

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