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なんとなくで書いた作品です。ゆるーい設定となっておりますので、軽い気持ちでお付き合い下さい。

 アルベルト・ヴァルスは、帝国の首都で名を馳せる錬金術師だった。彼の才覚と知識は、王国を支えるために多くの優れた発明や魔法的な技術を生み出してきた。しかし、その過程で彼は権力者たちに無理強いされ、過酷な労働を強いられる日々が続いていた。

 その日も、アルベルトは疲れ果てた顔で錬金術の実験室に座っていた。王宮から命じられた新しい「兵器」の開発に取り組んでいたのだが、何度も失敗を繰り返し、精神的にも肉体的にも限界に近かった。

「アルベルト、どうした?また失敗か?」

 彼の上司であるヴァルド大公は、厳しい声を上げる。アルベルトは顔を上げ、無言で大公の方を見た。

「まだ完成していません、もう少し時間を…」

「時間など無駄だ。失敗作ばかりで、我々の軍は待っているんだ。もういい、出て行け。」

 その一言が、彼の運命を変えた。

 翌日、アルベルトは王宮の門を出ることを命じられ、無一文で帝都を追放されることになった。大公は、彼が無能であるかのように告げ、アルベルトの研究成果をあっさりと無視してしまったのだ。

 放り出されたアルベルトは、何も考えられず、ふらふらと当てもなく歩き出した。


 アルベルト・ヴァルスが帝都を追放された翌日、彼はひとり歩きながら思考を巡らせていた。

「まさかこんなことになるとはな…。」

 独り言をつぶやきながら、足元の小道を歩く。広大な草原と静かな風が彼を迎え、自然の美しさに一瞬、心を癒された。しかし、すぐに思い出すのはあの冷たい大公の言葉だ。

「どうせ無駄だ。もう失敗は許されないんだ、アルベルト。」

 彼はあの時の大公の顔を思い出し、ふっと息を吐く。

「けれど、あの時の私には選択肢がなかった…。」

 アルベルトは思わず足を止め、遠くに見える小さな村を見つめた。そこに行けば、一時的にでも安息を得られるだろうか。

 その村の入口に到着すると、すぐに村の人々の視線が集まった。男たちが畑を耕し、女たちは家事をしている。全てが平穏無事に見えた。

 村の入り口で、一人の年老いた男がアルベルトに声をかけた。

「おい、見かけない顔だな。旅人か?」

 アルベルトは微笑みながら答える。

「はい、しばらく休ませてもらえればと、ちょっと立ち寄っただけです。ここには何かお手伝いできることがありますか?」

「ふむ、手伝いか。まぁ、何も特別なことはないが、もし薬草でも摘んできてくれたら助かるな。」

「薬草ですか。」

 アルベルトは心の中で何かひらめいた。もともと薬草や治療の錬金術には詳しかったからだ。

「分かりました。薬草を探してみます。」

 その日から、アルベルトは村人たちに少しずつ力を貸し始めた。薬草を摘んだり、傷を治療したり、作物を育てる手伝いをしたり。彼が持つ錬金術の知識が、静かな村で少しずつ評価されていった。

 ある日のこと、村の広場に集まっていた村人たちの中で、若い農夫が声をかけてきた。

「アルベルトさん、これを試してみてくれないか?」

 農夫が手に持っていたのは、ちょっと変わった形の果実だった。見たこともない色と形をしている。

「これは…新しい作物か?」

「実はな、数年前に遠くの町から持ち帰った種なんだが、うまく育てられなくて…。」

 アルベルトはその果実をじっと見つめ、少し考えた後に答えた。

「面白い。この作物には特別な育て方が必要なようだな。錬金術を使ってみよう。」

 彼はすぐに小さな実験を始め、果実を育てるための特殊な肥料を作り始めた。それはただの土壌改良ではなく、アルベルトの錬金術の技術を駆使して作られた、栄養素を強化する薬品だった。

 数日後、その作物は驚くべき速さで育ち、村人たちはその成果に目を見張った。

「こ、こんなに早く育つのか!すごい!」

「アルベルトさん、あなたは本当にすごいんだな!」

 村人たちは歓声を上げ、アルベルトに感謝の言葉を贈った。彼の評判は瞬く間に広まり、村の中では彼がどんどん重要な存在になっていった。


 その頃、帝国の大公ヴァルドは、アルベルトがどこかの村で生き延びているという噂を耳にしていた。彼は何度も使者を送り、アルベルトに戻るように頼み続けた。

 だが、アルベルトは一度も王宮に戻る気を見せなかった。村での生活が安定し、彼の無双の力がますます大きくなっていく中で、帝国の状況は次第に厳しくなっていった。

 ある日、大公ヴァルドは焦燥の中で、かつての部下であった重臣たちにこう言った。

「アルベルトがいなくて、我が帝国はどうなった!侵略者が近づいているというのに、錬金術師の力を活かすべきだった!」


 一方、アルベルトは村で静かな生活を送りながらも、周囲の動向には注意を払っていた。彼は、ただの一錬金術師としてではなく、帝国の命運を握る存在になることを理解していた。

 そしてついに、帝国は侵略者の大軍に襲われることになった。それが、アルベルトが再び姿を現す時となる。

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