第5話 あの人
「で?どうだったの?シャーロット・ヒーロインは」
「未熟、所作が荒い、空気読めない」
「わぁ、辛辣」
ウィルフリートのせいでサーロインとエンカウントしてしまった翌日。
授業がなく、休日のカフェテリアで俺は一人の女性と話していた。
アリシャ・クリエティ。
去年のインターン先であり、国一番の機関である魔法省の若き幹部。
国でもトップクラスの美貌を持つと言われる銀髪碧眼の美女だが、まあ、性格はいろいろ残念だったりもする。
魔法省と学園は同じ敷地内にあるもののほとんど関わりはなく、用事があって偶々学園にやって来ていたアリシャさんに会ったという形だ。
この人にはいろいろあって学園生活を繰り返していることがバレているので、グチグチと日々のことを話すことが出来る。
ちなみに、内容は聞かれたくないため、一応防音魔法をかけている。
「それってどうなの?この学園は貴族も多いし、その子平民でしょ?気に入らない子も多いんじゃない?」
「そうなんですよ。特に女子は分かりやすく嫌ってます」
ウィルフリートはイケメンだし、性格も非常に女子ウケがいい。
アイツがどう思ってサーロインと接してるかは知らないが、二人でいることをよく思ってない女子が多いことも事実。
まあ、俺からしてみればどの女子にも同じ対応をしてるようにしか見えないが、中央貴族の令息なわけで、親しくなって婚約したい令嬢も多いんだろうな。
「でしょうね。まあ、ルーファスも気をつけて」
「大丈夫ですよ。俺はアイツに近づく度警戒心の塊と化してますから。……それはそうと」
サーロインの話は一旦終わりにして、俺は両手を机の上に置く。
今までのは世間話みたいなもんで、どちらかと言えばこっちが本題だ。
俺の意図に気づいたのか、アリシャさんはニヤリと笑うと一枚の封筒を取り出した。
「全く、これを直接ねだってくる学生なんてアンタくらいだよ」
「いえいえ、それほどでも」
しっかりと印が押されていることを確認し、制服の中にしまい込む。
これで暫くは学園に行かなくても良さそうだ。
「まあ、その分しっかり働いてもらうからいいけどね」
……そんな台詞は聞かなかったことにしよう。