第2話 名前がわからん女、名前判明
アイツ、何組だ。
ここに来て俺は名前がわからん女のクラスが分からないことに気がついた。
何せ、前回の俺は勉強ばかりしており、後輩の女なんかに興味を持つことはなかったのだ。
それに加えて、純粋にこの学校は人数が多いので比例してクラスも多い。
そういえば、同じクラスの奴が一年に超可愛い子がいるとか言ってたような気がしないでもない。
そもそもウィルフリートが中庭にいたように、教室に残っているのかすら分からないが、そんな可愛いなら歩いてりゃ気づくか?
「おい、あれだろ、シャーロット・ヒーロイン」
「マジだ、可愛い」
ヒーロイン?サーロインみたいな名前だな。
近くにいた一年の会話にそんな感想を抱きながらも「可愛い」という単語に思わず一年と同じほうを向く。
そこにいたのはピンクブロンズの髪をした小柄な女だった。
そうだ、アイツだ。
前に俺に向かって妄言を吐いた女と瓜二つな容姿にイラつきが募る。
可愛い?どこがだ。あの性格ド畜生め。
ニコニコ笑いながら男子の相手をしているのを周りの女子たちと同じように睨みつける。
初めてこういう状況下の女子の気持ちが分かった気がした。
にしても、なんか異様な気がする。
周りの男子たちの視線に熱が篭もり過ぎてるし、囲んでいる男子たちの数も異常だ。埋もれるんじゃないか?
しかしながら、たった一日で状況判断なんて出来ないし、かといって近づいて確かめに行くのもリスキーだ。
今日のところはひとまず引き上げるとしよう。
……まあ、名前が分かっただけでもいいだろう。
名前がわからん女じゃ長いし、下の名前で呼ぶのは癪だからこれからはヒーロインと呼ぶことにしよう。
おそらく口に出して呼ぶことはないだろうが。
任務完了とばかりに俺は一年の教室がある廊下を後にする。
これ以上いて何かに巻き込まれでもしたら面倒だし、前の記憶のおかげでずっとキープしている首席をここで落とす訳にもいかないので課題でもやろう。
お陰様で前よりも親から文句の手紙がくる回数も呼び出される回数も少ないし、勉強以外に回せる時間も増えたように思える。
これからに備えて課題が終わったら早く寝よう。
確かこの課題は前期の成績の中でも配点が高かったはずだから、誰かに見てもらってもいいかもしれない。
食堂の前を通りかかり、今日の夕飯は何にしようかなんて前では一度も考えたことがないようなことを考えながら俺は自室へと戻った。