第1話 イケメンに関わるとろくな事がない
「そうか、悪いな。俺はお前みたいなイケメンとは関わらないと決めてるんだ」
エリート学校、王立魔法学園の中庭にて。
最終学年である三年生に突入した俺は声をかけてきた深紅の髪の一年生に向かってそう宣言した。
ソイツはポカンと間抜け面をしているにも関わらず、どこまで行ってもイケメンだった。
「ごめん、何言ってるか全く分からない」
「だから俺はお前みたいな───」
「いや僕たち幼馴染だよね!?」
一年生、幼馴染のウィルフリートは勢いのままにそう叫んだ。
「確かに俺とお前は幼馴染だ。けど、この一年間は他人だ」
「理由になってないから!僕、ルーファスのこと頼る気満々で来たのに!?」
「諦めろ」
「え、ちょ、どこ行くの!?」
慌てたようについて来ようとするウィルフリートに俺は溜息をつく。
もっと簡単に引いてもらう予定だったんだけどなぁ。
「……隠密魔法 ハイド」
そんな難しい魔法ではないが、二年生で習う魔法を応用しているため、見破られることは無いだろう。
俺は自身を周りから見えなくする魔法をかけ、その場から逃げ出した。
こういうことをすると、決まって周りから「やり過ぎだ」と言われる。
しかし、俺は全くやりすぎていないし、むしろもっと徹底した方がいいのではないかとすら思っている。
勿論、これにはれっきとした理由がある。
実は、俺は魔法学園の三年生を前に一度経験している。
一応言っておくが、これは別に留年のカミングアウトでは無い。
一回目の時、卒業式で俺は名前がわからん女に「虐められた」と言いがかりをつけられ、それからよく分からないまま犯罪の冤罪をかけられ、処刑されかけた。
されかけたというのは処刑の前日に時が戻り、気がつけば魔法学園の一年生に戻っていたからだ。
原因はおそらく牢屋で会った女だろう。
そして、その女に言われたのだ。
「繰り返したくなければイケメンに関わるな」と。
思い出してみれば、名前がわからん女の言葉を鵜呑みにして俺に冤罪をかけたのは無駄に権力を持ったイケメンだったし、突然俺を裏切った奴もイケメンだった。
別にイケメンが全員悪い奴とまでは思っていないが、こうして俺はイケメンに嫌悪感を覚える「イケメン嫌い」、及びに名前がわからん女のせいで前に仲の良かった奴らを失った。
ウィルフリートとも前回は卒業式前あたりから疎遠になっていたので信頼出来るかどうかなんて分からない。アイツイケメンだし。
コソコソと逃げてきた俺は気づけば1年の教室近くまでやって来ていた。
入学式ということは俺の不幸の元凶である名前がわからん女が入学してきたということだ。
流石にいつまでも名前がわからないままじゃいられない。
「名前がわからん女……様子見に行くか」