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第18話 要らぬ客とはこのことである

 我とルルで共同作業をし、バレッタと骨折しておるイーナを合わせた四名で、どうにか明日の開店準備を進めておる。

 目玉商品は魔道の小瓶であるが、それ以外にも用意されたものがあるのだ。

 まずは半額となった店舗代金を支払うだけの金額は用意出来るであろう。

 しかし見直さねばならぬところが多くあるのは事実である。

 そんな中、外の店構えを見てうなっているルルがおるので確認しにいった。


「どうしたのだ、ルルよ」

「んー、なんかな。便利道具屋イイナって名前、違うもんに出来へんかなって思て」

「ふむ? ルルはそう思うのか」

「この名前やとな? 便利道具ってなによってうち思うねん。それに他の店見て思ったんやけど、うちらの店で売るもの、異質やん? それが伝わる名前がええなって」


 ルルの知識は我が思っていたよりすごいものであった。

 名付けのセンスも良いし、ルルは良く周りを見ているように思える。

 我が学ぶことなど無いと思っていたが、我はこの世界に来て人と話すのも悪くない。そう感じ始めておる。


「ルルの言う通り、我の魔道具はただの道具に留まらぬ。しかしこの店はあくまでイーナの店であるからな」

「それは分かるんやけどね。イーナちゃん名前にあんまり興味無いんよ。ううん、店にもそこまで興味があるように思えへんねん。仕方なくっていうか…ううん、やらなあかんからやってる。せやから無理してるように感じするんよね」

「無理をしておる……か。それは分かるかもしれぬ」

「便利道具イイナ。これやったらイーナちゃん、無理して働いてまうかなって。それに何売ってるか分からへんし。やからね……基本道具はベリやんとうちで作るでしょ? うちら異世界から来たやん? それってこの世界に無いものばかりやろ? せやから……こうでどう?」


【異世界道具屋レーベル】


 これは……そうか! 我らの売る道具がいかに不思議な道具であるか。

 それを一目で分からせることが出来る名前ではないか。

 その後に続くレーベルとはなんだ? 


「ふふ。レーベルってなに? って思てる顔やわ。これな。バレッタちゃんのレ、イーナちゃんの伸ばす部分、それにベリやんのベ。うちのル。これでイーナちゃんに重く圧し掛かる雰囲気も無いし、みんなの名前入っててええやろ? どう?」

「ルルよ。お主は本当に名付けが得意であるな。素晴らしい名前だ。先頭に魔王が付けばもっと良いがな! ぐわーっはっはっはっはっは!」

「なんで魔王とかつけんねん! 怖いわ! ってこれでほんまにええんか?」

「他のみなに聞いてみれば分かるだろうが、反対は誰もすまい……ん?」


 何やら柄の悪い三人組……いや四人組がこちらへ来るな。

 一人はドワーフ。残り二人は人族であるか。

 一人は怯えながら案内をしておるようだ。

 ……なかなか強そうな奴らである。


「ここで間違いないか」

「そ、そうです。間違いなくここに入っていくのを見ました」

「ちょうど店員がいるじゃねえか。おいそこの……ん? 何だお前ら。見ない面だな」

「あらお客さん? まだお店開けてないんよ。明日また来てくれへ……」

「俺に命令するんじゃねえ、女!」


 むう、乱暴者か! いきなりルルの顔面に迫ってにらみつけおった

「やだ、怖い……ベリやん助けて」

「お前がここの店長か……いや、魔族!?」

「ほう? 我を一目見てそう思う貴様は何者であるか」

「くっくっく……やっぱり魔族が絡んでやがったのか。どうも話につじつまが合わねえと思ったぜ。てめえの仕業だったんだな。ピンク色のモンスター、それを操った正体!」

「む……」


 この男、突然剣を抜きおった。これはまずいのではないか? 

 ふうむ、それにしても……ただの銀の剣であるな。

 銀の剣はそれこそ加工が難しく切れ味もそこそこで寿命も短い。

 ただの銀剣であるなら鉄の剣を選ぶべきであるが……。

 魔力を鉄より流しやすく、魔銀とするなら優れた武器に成り得る。

 しかし魔銀となれば値段が跳ね上がるからな。

 金が無いのであろう。いやしかし。それならば鉄の剣をだな。


「おいヤザク、ここで剣を抜くな! アギトが聞いたらただではすまんぞ!」

「そうよ。話をしにきただけでしょ?」

「お前らはだまってろ。こいつの目が気に入らねえ。何を企んでやがる」

「……くっくっく。ぐわーっはっはっはっはっはっは。そうか、そんなにも早く我が魔道の小瓶が欲しいのか……しかしな。道具屋というのは公平でなければならんのだ。お主がどれほど武器を振り回し、今すぐ開店しろと言ってもそれは出来ぬ相談である。大人しく明日、出直すがよ……」

「ちっと痛い目みねえと分からねえみたいだな! シルバードレイク!」

「ちょ、ベリやんに何すんの!?」


 ふむ……我の周囲を突き刺す瞬速の連撃であるか。

 適格に我の周りを突いていくが……ふむ、少しだけからかってやるか。


「はっはー。どうだ俺の剣技。もし動いていたらちったぁ斬れてたかもな。びびって動けず正解だぜ」

「ううむ、やはり銀の剣は鉄より処理しやすいか。しかしもろい」

「ああ? 何言ってやがる。どうだ、勝負する気になったか?」

「そのような先の曲がった剣で何を勝負するというのか」

「ああ? ……なっ」


 ふうむやはり気付いておらぬのか。

 こやつがかすめた我の鎧から炎の魔力を細く発して先端を溶かしたというに。

 我の作った魔道の鎧からはおおよそ二千度近い極細の炎を放出することが可能である。

 銀であれば一千度……つまり半分ほどの火力で溶かすことが可能であるが。


「俺の銀剣シルバードレイクが……てめえ、何しやがった!」

「それはこっちの台詞である。一体何がしたいのだ? 我に戦いなど挑んでどうするつもりであるか。我は……ここ異世界道具屋レーベルの者であるぞ?」


 と、我が曲がった銀剣を持つ男としゃべってる間に、別の人族がルルと話し込んでおったようだ。


「あんたがバカやってる間にそっちの人から話を聞いたよ。ごめんね、こっちの早とちりだったみたい」

「ああ? アリシャ、てめえ勝手なことを」

「勝手をしておるのはおまえだヤザク。これはアギトに報告するからな」

「ちっ……どうやら報告の必要は無いようだぜ。本人が来やがった」


 ……ええい。次から次へとなんであるか。

 今度は青い長髪の白コート服の男が近づいて来おる。

 我は忙しいのだ。いい加減にせぬか。

ベリドーグは魔王である。

しかし魔王であることを出来る限り伏せると決めている魔王である。

彼の実力はどうなのか。

それは未だ不明だが、彼の身に着けている装備品は全て彼が作り上げたもの。

その全てがアーティファクトと言ってもよい性能である。


そして現れたアギトという者。

開店一日前のタイミングで、ベリドーグもそろそろお怒りになるだろうか。


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