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第15話 救出したのである

 オー君に映し出されたコウモリ共は、一匹一匹がでかく、音波攻撃をしておるようだ。

 混乱したゴンとブリがなぜか敵対してオー君の前におる。何をやっておるのだあやつらは! 

 しかしオー君の強さは大したものである。

 我が授けた適当に作っただけの装備である槍を、巧みに振るってコウモリ三匹を払い落としおった。

 さらにマジ骨が火魔法、ファイアランスを見事にさく裂。

 残りは三匹であるが……ゴンとブリが混乱したままおそい掛かり、それらの攻撃をまともにオー君が食らっておる。

 我の命令通りに行動しておるから、混乱して敵対した相手を攻撃出来ておらぬな。


「ベリやん、これ一体なに? なんでオー君たちあんなでっかいコウモリと戦こうてるの? バレッタちゃん気絶してはるし……でもこの子かわええな……ちゅーでもしたろか」

「ふうむ、あれはジャイアントシザースバットであろうか? オー君たちはな。ダンジョンに行ってしまったイーナを助けに向かわせたのだ。むう、まずい。このままではゴンとブリの混乱が治せぬではないか。これは今後工夫する必要があるな」

「ほんまや。ゴンとブリ滅茶苦茶オー君どついとるわ。全然効いてへんけど。最初びっくりしたけどこの映像おもろいわぁ。迫力満点や! いけー! オー君ガンバレー!」

「そうであろうそうであろう。何せドーグさんが造ったものであるからな。ぐわーっ……」

「ぐわーっはっはっはっは! てわろてる場合ちゃうわ! ピンチやないの?」

「ふうむ仕方あるまい。アイアンゴブリンよ、役目を終え消滅せよ」

「わわ、ゴンとブリが消えた!? どこ行ったん?」

「あれは元々ただの鉄鉱石に過ぎぬのだ。材料となったものも一緒に消滅してしまうのがこの魔法の難点であるといえるが、これが我の能力よ」

「へぇ。どこでも消せるなんてすごいわぁ。元にも戻せるんやろ?」

「いや、元には戻せぬ。そもそも材料ごと消滅してしまうからな」


 ……この魔法は完璧とは言えぬ。

 現状では使い捨てとなってしまう上、効果時間も永遠ではない。

 方法は考えておるのだが、設備、道具、素材……不足しておるものが多い。

 残りの戦闘はオー君たちであれば問題あるまい。

 我の成すべきことを成そう。


「どれ、状況を見つつ道具屋で売るものを造るとするか」

「そしたらうちも手伝うで。何したらいいの?」

「実はな。イーナが受け取らなかったこの世界の通貨があるのだ。それを持ち、食糧と薬草などを大量に出来るだけ安く買ってきてはくれぬか? 場所はこの部屋を出て左回りに進むと店が何件かあるであろう」

「でも薬草買うてきてそれを売ったりしてええの?」

「そのまま売るわけではない。我がポーションにしてしまえばいいのだ。ぐわーっはっはっはっは!」

「なんや転売みたいで嫌なんやけど……」

「転売とな? 我は薬草という素材を買ってきてもらい、それを全く別のものにするのだ。無論、今回だけだがな。それに、イーナは自分で取って来たものを売りたいと言っておった。なれば我はイーナにポーションを、我は魔道小瓶を造るのに専念して売るのがよかろう」

「へぇー。ベリやんていろいろ考えてるんや。そのイーナって子、気に入ってるんやね。よっしゃ、うちも頑張ったる! 行ってくるわー……とお腹空いたからうちの分も食べ物買うてきてええ? お金持ってないんよ。あはは……」

「構わぬ。買えるだけ買うがよい。どうせその金はイーナに渡そうとしても受け取りはすまい。真面目な娘である」

「ほな行ってくるわ。イーナちゃんとバレッタちゃんの分も買うてくるからねー!」


 うむ、実に元気が良いのである。

 我も見習い元気に魔道小瓶を量産しておくとしよう。

 はかりがあればポーションの容量を考えて造ることが可能である。

 そして測りがあれば縦の長さを均一化し、飲みやすい飲み口に設計可能である。

 だがさすがにそろそろ鉱石類も尽きてくるな。

 次回探索時はもっと強いモンスターをサクリファイスする必要があるが、この方法を大きく変えねばならぬ。

 そのための道具をマーク殿にお願いしてみるか。


「む、イーナがおったようだな。そしてイーナは怪我をしておるではないか。相手は両手が刃物のブレードマンティスか! 苦戦を強いられる相手……ではあるはずだが、あっさりオー君とマジ骨の連携で倒してしまった。あ奴ら、やるではないか」


 ううむ、普段よりモンスター共の動きが良いように感じるな。

 これは名付けの効果であるか? 

 分からぬが……腰を抜かしておるのはイーナである。

 戸惑っておるようだが、オー君の魔道の首飾りに気付いたようであるな。

 その場で泣いておる。よほど怖かったのであろう。

 オー君の嗅覚とラビビンの聴覚で見事イーナを保護。

 そしてムイの奴がまた宝箱を発見したようだ。

 

「我が封じられし魔道具よ、その中に対象を埋めよ! ビジットスペース!」


 よし、イーナの目の前にあった宝箱を収納したぞ。

 むむ、イーナが膝から崩れおってまた泣き出しおった。

 どうしたというのだ? 

 ただ単純にくたくたであっただけであろう。

 オー君にかつぎ上げられ戻って来るようだな。

 よし、イーナも無事であった。

 我は道具造りに専念するとしようではないか。

 ダンジョン地下一階はナイトメア攻略済み。

 とはいえダンジョンには多くのモンスターがいる。

 しかしベリドーグがサクリファイスしたオークヘヴィナイトやマジシャンズスケルトンは弱いモンスターではない。

 あっという間に蹴散らしてしまったが、彼は当然どころか気にしてすらいない。

 ベリドーグは今猛烈に道具が作りたい症候群であるのだから。

 彼は魔道具造りこそ好きだが、それ以外の興味はあまり多くない。

 自ら作った道具をどれだけ理解し優れているものか。

 それを世に広めたい……そんな魔王である。

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