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英雄一家は国を去る

舞踏会の中、会場に兵士が走り回っていた。


一人の令嬢の前に兵士が頭を下げて訊ねる。


「クロイツ卿の令嬢でありますか。」




青色のドレスを着る令嬢は丁寧に答える。


「はい、そうですが。」




「卿より文が届いております。」




「感謝します。」




兵士が走り去るのを見送り、側にいた婚約者から離れて文を見た彼女は緊張が走る。




「殿下。実家から火急の知らせが来てしまいました。申し訳ないのですが、舞踏会から帰らせていただけますか?」




「火急の知らせなのだろう。早く行って、家族を安心させると良い。」




「感謝いたします。では」




「ああ。帰りを待っているよ、テレジア。」




舞踏会にいる人を縫って会場から出たテレジアは入り口で待機する辺境伯家の馬車に乗り込んだ。


御者は馬を走らせ、一行は王都を抜けて実家に急いだ。


文に記されていたのは辺境伯領での魔物大発生スタンピードだった。





舞踏会から辺境伯領に帰省し、魔物大発生を収束させるのに3年を要した。


テレジアの父である辺境伯は王国における英雄の一人だった。


若かりし頃に、幾度も隣国の武闘派国家からの侵略を防いできた故の立場だった。


家族総出で王都へ凱旋した一行は報告するために王城へ登城した。


謁見の間に通された一行は玉座の前に跪く。




「クロイツ卿と、その一家における魔物大発生の対処、ご苦労であった。」




「恐悦至極でございます。」




「クロイツ卿。我らは貴殿らに褒賞を与えたいのだが、その前に報告しなければならない事案がある。」




「なんで御座いましょうか。」




「その…だな。我が息子とテレジア嬢の婚約を破棄したいのだ。」




「ーーあ゛?」




「勿論、異議はあるだろうが。まず聞いてほしい。ノルツは昨年、パーティーの最中に本人不在にも拘らず、テレジア嬢との婚約破棄を宣言したらしいのだ。報告によれば、他家の令嬢へ恋に落ちたとか抜かしたようでな。今ここで取り繕えない程、既に婚約したものとして扱われている。」




本来であれば婚約破棄などと宣言しても即日決まる話ではない。


だが魔物大発生によって本人も一家も居ないため、情報伝達が遅れたのだ。


法律で半年以上、返答を貰わなかった場合は破棄を受け入れたとするとされている。


辺境伯領で飼育する馬でなければ、辺境伯領までの道中は片道でも二ヶ月を要する。




「罰として他国に留学させ、頭を冷やさせているが、あれが反省するかは分からぬ。」




「ーー陛下。」




「ただで受け入れてほしいとは言わん。儂を殴ってくれても構わない。だから…」




「我がクロイツ辺境伯家は地位を返上し、出国させていただく。」




「へぁ」




当主の決定に異議を申し立てる事もなく、いや全員が国に愛想を尽かしていたため、静々と王城を後にした。


王都邸にいた執事に金品を渡し、総解雇を行ったが、誠心誠意仕えることを条件に辞退された。


辺境伯が懇意にする商会へ宣伝を頼んだ一行は強行軍のように辺境伯領へ帰省した。


後に、多くの商会によって王家の演説より早く国中に辺境伯家に与えられた褒賞というゴシップをばら撒かれた。


英雄を讃えていた国民は何を思うのか、それは国民だけが知るだろう。





辺境伯領の領民にある意味没落を宣告した後、最低限の荷造りをして旅立った。


領民は散り散りに他領へ向かう中、大半が元辺境伯の後を追ったのは慕われていたが故だろう。


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― 新着の感想 ―
[一言] 相変わらず何を伝えたいのか一切描写されない中途半端な作品が多くなりましたな。というよりランキングに上がるようになった、ですかね
[一言] 起承転結で言ったら承の途中くらいですかね?
[一言] この後どうなったか書いて欲しかったです。
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