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From the past in the world  作者: 冠 三湯切
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Future history

 サンフランシスコ郊外 TIM鉄砲店裏


 「2017年1月、儂のとこに一通のメールがきたのさ。そこに書かれていた事は、45口径、9ミリ、12ゲージを5000ドルで購入した記録を確かめろとな」


 老人は地下室への梯子を降りながら事の顛末を話し始めた。


 「儂はそれを確かめた。購入したのはタイラーという男だ。だが、その3丁は売ったにも関わらず、何処にもその銃が登録されていなかったんだよ。何処を探しても、その銃たちは存在していたのに無かった事になっていた。そして、タイラーという奴もな。


 儂はそのタイラーが気になって仕方が無かった。ベンジャミン タイラー、儂と同じ苗字。どうにも引っかかるんだよ」


 老人はその地下の更に奥にある鍵を開けた。


 「その時だ、新たにメッセージが来たんだよ。タイラーの秘密を知りたければ2030年の4月2日、もう一度その銃を購入する者が来る。タイラーは儂にとって大切な存在だった筈だ、彼の願いを信じるなら、その日までに戦いの準備をしておけとな。普通ならスルーするとこだが、タイラーと言う名をどうしても放っておけなかった。だから準備したんだよ」


 「・・・・・」


 奥にはズラリと大量の銃火器が置かれていた。


 「民間には売られない物まで・・・何処でこれを?」


 サディアは大きなショットガンを手に取る。


 「お偉い方は知らんだろうが、銃規制の強化は逆効果を生んでる。軍人上がり、元グリーンベレーの連中なんかの中には、こう言う銃火器の裏取引をしてたりする連中がいる。儂にもそう言う知り合いが居たからな。


 特に最近は田舎の過疎化が進んで無法地帯化してる。抑止力の為にもこれくらいの装備を法の目を掻い潜ってでも欲しがる連中は多いのさ。豆鉄砲じゃ命がいくつあっても足りないんだよ」


 「・・・・・」


 テレサたちもサンディたちも目を逸らした。


 「だが、流石にこれは多すぎるだろうな。なんせ国相手に対決するレベルの銃火器を調達した。で、お嬢ちゃん。こいつで何をする気なんだ?」


 「言ってしまえばテロ行為になるかもね。あの男の狙いは自身の復活に、サクリファイスと流動機械を利用した世界統治。


 それに加えてあいつが残した権力がある。あいつの権力は政府中枢にまで及んでるから多分、あいつはラングレー内部に既に入り込んでる。下手すると既にテレサとサディアを国家反逆の罪を着せる準備でも済ませてるかもね」


 「はぁ、敵があいつって時点でそのうちこうなるだろうなとは思ってたよ。まだ長官に就任して1年経ってないのに・・・」


 テレサは苦い顔して俯いた。


 「あいつの事だからあえてテレサを長官に仕立て上げてたのかもねー、監視しやすいようにってね。けど、私としては長官の素質があるのはあんな奴よりテレサだよ」


 セイバーはニッコリと笑った。そしてテレサは少し照れていた。


 「さ、おしゃべりはこれくらいにして、この武器をトラックに詰め込むよ。で、次の目的地はCIA本部、モルガンおじちゃんも独自で動いてるだろうからね。彼と落ち合うよ」





 テレサたちはハンドガンやらショットガンやら、マシンガンなんかをトラックの荷台に詰め込んだ。


 「よっ!」


 セイバーもやたら重たい弾薬類を軽々運んでいる。


 「テレサ」


 「なに?」


 そのセイバーの裏でサディアはこっそりとテレサを呼んだ。


 「今更だが、ほんとにあいつを信じて良いのか?」


 サディアは一連の流れの進み方に疑問を持っていた。


 「言った筈よ。私は信じた、それだけの事。確かに怪しいよ?そもそもセイバーは本当に私たちの味方なのか、下手すりゃリチャード長官の罠って考えられる。けど、あれ見てよ」


 サディアは視線をセイバーに送る。そこではセイバーはダニエルとサンディと一緒に積み込みがてら、誰が一番重たい物を持てるかの対決をしていた。


 セイバーはドヤ顔しながら、数百キロの荷物を軽々と持ち上げて力自慢のダニエルは敗北していた。


 「サディア、彼女は自分をプログラムって言ってたよね。感情的に見えるのも、私たちのとコミュニケーションを円滑にする為だって。けど、あれがプログラムだって思えた?」


 「・・・いや」


 「そゆこと。彼女に自覚は無いんだろうけど、彼女はプログラムで動いてる訳じゃない。タイラーへの思いが行動させてる。でなきゃあんな無駄な事はしないよ」


 「仮に前長官が裏で手引きしているのなら、あんな存在は生まれないか・・・」


 「そう言うこと。セイバーは生きてる女の子、機械じゃない。この国で、世界で生きてる」


 サディアは少し目を瞑ると、自分の心に問いかけた。そして、目を開きセイバーの手伝いを始めた。


 「ねーねー!サディア!これどう?似合う?」


 セイバーはサディアに携行出来る砲身が6本ある兵器、M134を見せてきた。


 「それが似合うのはサングラスかけた筋肉モリモリマッチョマンだろ」


 「えー、ノリ悪いなぁ。まいっか、んしょっと」


 セイバーはそのミニガンをトラックに乗せた。その時だ、


 「あ、」


 突然セイバーはサディアとダニエルを掴んでトラックの荷台に投げ入れた。


 「っ!!何をっ!!」

 「いってー!」


 「敵!!」

 「っ!!」


 セイバーが叫んだ。その直後店舗を突き抜けてトラックが一台突っ込んできた。そのトラックからは1人のコートを着た男が降りてくる。


 男は降りた瞬間、サブマシンガンを掃射した。


 テレサとサンディは物陰に隠れて銃弾の嵐をやり過ごした。


 男はすぐにマガジンを交換する。それと同時にセイバーは同じ装弾数のサブマシンガン、マック11を取り出す。




 『バラララララララララララララッッッ!!!』




 2人は同時に乱射した。しかし、銃弾は何処にも当たらずその2人の中間で火花が散り、潰れた弾丸の山が出来上がった。


 弾丸が無くなったと同時にセイバーと男は真っ直ぐ走り、互いに掴みかかった。


 「あらら!?」


 しかしセイバーは推し負け、ズルズルと滑って壁にぶつかる。男はセイバーに向けて拳を突き出す。


 拳はセイバーの額にグリーンヒットし、後ろの壁が粉砕された。セイバーの頭は壁にめり込んだ。


 「セイバー!!」


 テレサが走ってセイバーの所に向かう。


 「テレサすとーっぷ!」

 『バゴォォンッ!!』


 男が吹っ飛んだ。


 セイバーは無傷でその手には、短く切り詰めたレバーアクションのショットガンを持っていた。


 「やれやれ、思いの外早く来ちゃったねぇ。サディアー!トラック出して!!ここは私が食い止めておくからー!みんな連れてラングレーまで行っててよー!」


 「セイバーはどうする気だ!?」


 「こいつぶっ壊すから、ちょいと時間かかるの!!」


 男は急にむくっと起きた。ショットガンを撃ち込まれたにも関わらずその身体に傷は一つもない。


 「優先順位、テレサ マーキュリー・・・」


 男は今度はセイバーから視線をずらし、テレサ1人をじっと見た。


 「えぇ!?ちょっ!?テレサ!!そいつターゲットをテレサに絞ってる!!逃げて!!」


 「分かってる!!」


 『ダァン!ダァン!ダァン!ダァン!』


 テレサは9mm拳銃を撃つ、しかし男には全く通用せずゆっくりとテレサに近づいてくる。


 「テレサさん!!伏せて!!」

 「くっ!!」


 サンディが手に持っていたグレネードランチャーを男に向かって撃った。


 男の所で爆発が起こり、男は店のガラス窓に突き刺さった。


 「今のうちに!!セイバーちゃんも乗って!!」


 「ひゅー!サンディやるじゃん!!うん、あいつは学習するからね、今はさっさと逃げた方が賢明かも。テレサ!乗って!!」


 「了解!!」


 トラックに全員乗り込んで走り出した。




 「ふぅ・・・セイバー、あれは何?リチャード前長官はもう未来の技術を手に入れたの?」


 トラックの荷台に乗り込んだテレサは先ほどの男の正体をセイバーに質問した。


 「いや、あれは現在の技術の最高峰ってとこ。流動機械アンドロイドのプロトタイプ。機体名は『X-i0』通称は『サイ』私は日常生活向けモデルを少し戦闘に応用が効く設計だけど、あいつはガッチガチの戦闘特化。しかもあいつに組み込まれてるAIは、人間とのコミュニケーションや倫理観なんて度外視して、いかに効率よく敵を殲滅出来るかを思考するヤバい奴。


 中でも厄介なのは、技術を簡単に吸収する能力。さっきの銃撃戦で私のやった、銃弾を銃弾で叩き落とすのをあいつは学んだ。あいつと戦うなら学習する前に完全に破壊するか、逃げるかのどっちか」


 「さっきのグレネードランチャーで壊さなかったのか?」


 サンディが質問した。


 「あれくらいじゃ壊れないよ、あいつの破壊方法はシェルターバリに硬い流動機械骨格を剥いで、流動機械の生命線である受信媒体を破壊しなきゃならないの。やるには戦闘機に積まれてるような機銃を撃ち込むか、口ん中にでも気化爆弾を突っ込むかぐらいだね」


 「やべーな・・・」


 ダニエルが口をぽかんと開けている。


 「だからあいつは無視して元凶にたどり着いた方が楽な訳」


 「っ!!テレサ!!後ろ迫ってきている!!」


 運転していたサディアが何かに気がついた瞬間、トラックは大きく揺れた。


 『バスバスバスバスンッ!!!』


 「何だっ!?」


 トラックの荷台に穴が開く。


 「あいつ!!車奪って追って来ちゃった!!」

 

 空いた穴を覗くと一台の車に乗ったサイが追って来ていた。


 「ハンドル右っ!!」


 サディアは言われた通りにハンドルを切る。サイの撃ってきた銃弾は逸れて別の車に当たった。車はパンクし、バランスを崩して横転する。


 「くっそ!!」


 サディアは転がってきた車を避けるがガードレールに車体を擦った。


 「あいつー、トラック狙わずに周りの車ひっくり返してこのトラック止める気ぃ?」


 サイは銃を乱射するが、トラックにはあえて当てずに周りの車のタイヤを撃ち抜き、トラックの進行を妨害する。


 「もー、面倒くさいなぁ。テレサ、ちょっとやり返してくるよ」


 セイバーは立ち上がった。


 「やり返すって、何をする気なの?」


 「そりゃ目には目を、歯には歯をだけど?」


 「おい、それって一般車両を巻き込む気か!?」


 セイバーが何をしようとしてるのかを察したダニエルが真っ先に突っ込んだ。


 「うん、そうしなきゃやられるよ?」


 「アホか!!それだとあいつらと何も変わんねーじゃんか!!セイバー!一般人を巻き込むな!!」


 「でも、もうこんだけひっちゃかめっちゃかなんだからあんま変わんないでしょ?それに、このままじゃ任務達成前に全員死ぬよ?必要な犠牲は仕方ないよ」


 セイバーはなんの悪びれもない表情で言い放つ。


 「・・・確かに、このままじゃヤバいわね。あのサイって奴も、今の私たちじゃどうしようもない事はわかる。けどね、だからと言って私は民間人を巻き込んでまでこの事態を終わらせてたくない。CIA長官として、ここは私が何とかする」


 テレサもセイバー同様に立ち上がる。


 「何するの?」


 「サイの第一目標は私だったでしょ?」


 そう言うとテレサは荷台に積まれた一台のバイクに跨った。


 「まさか囮になる気ぃ?死んじゃうよぉ?テレサがあいつから逃げ切れる確率知りたい?」


 「セイバー、世の中計算だけじゃないのよ。そもそも私って歴代で1番若くて、歴代で1番、アグレッシブなCIA長官だから!!」


 『ブルルゥゥオオオンッッ!!!』


 テレサはバイクのエンジンを回す。


 「ゲット、レディ・・・サディア!!」


 「あぁっ!!」


 サディアが急ブレーキを踏むと同時にテレサは一気に加速。トラックの荷台の扉を突き破ってバイクは飛び出した。

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