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From the past in the world  作者: 冠 三湯切
2/13

Singularity of history

 2030年 4月2日 サンフランシスコ フィッシャーマンズワーフ アルカトラズ島行きフェリー乗り場。


 テレサとサディアはよく見るサングラスをかけた観光客のような装いで船に乗り込んでいた。


 「何だかこう言うのデートみたいで良いね」


 「良いねってお前、俺が散々誘ってもこう言うのにはあんまし乗ってくれないじゃないか。たまにはこう言うのにも付き合ってくれよな・・・」


 「あ、あれ?拗ねてる?」


 テレサは基本休みになると僻地に行ってクライミングをよくやってる。そのせいでそこまでクライミング趣味のないサディアはたまに家で不貞腐れている事がある。


 「拗ねてまーす。そもそも今日もこれ、仕事だしな・・・」

 

 「あはは、ごめんごめん・・・ついつい崖登りばっかやっちゃって・・・」


 「そろそろ子供作ろうって話してたろ?子供に崖ばっかり見せても意味ないだろ」


 「だからごめんって!」


 この夫婦はそんな痴話喧嘩みたいな会話をしながらフェリーに乗り込んだ。


 



 船の中はかなりの人だ。テレサとサディアは外でアルカトラズ島を眺めながら到着を待った。


 「・・・」


 「と言うかどうした?さっきから顔が険しいぞ?」


 サディアは顔が怖いテレサの表情を指摘した。


 「いや、どうでも良い事なんだけどさ、昨日ハイスクール時代のオタクの人の話したよね?なんか、その子の名前が全然思い出せないのよね。他のみんなは全部覚えてるんだけど、その子だけがどうしても思い出せないのよ。まぁ、影薄かったからかな・・・」


 「逆にその年で1人以外を覚えてるのも凄いと思うけどな。けど、そいつがどうしたんだ?」


 「うーん、あの島見てたら急にそいつのこと思い出してさ。確かあいつはサンフランシスコ出身って言ってたっけ。あ、そうそう、思い出した。私確か先生への嫌がらせで一緒にコンピュータウイルス作ったんだ!」


 テレサはぽんっと手を叩いた。


 「影薄いって・・・お前結構仲良くやってたみたいじゃないか」


 「みたいね・・・あー、思い出せないとモヤモヤする〜」


 そう言ってるうちに島に到着した。


 テレサとサディアは船を降り、順路とは離れた方向へと向かう。




 「あ、ちょっと。この先は立ち入り禁止ですよ!」


 2人はそこの警備員に止められるが、即座に自身の手帳を見せた。


 「あ、ごめんね。この先に用事があるから通してもらっていい?」


 「CIA?本当に?」


 警備員はじっとテレサを睨んだ。どうやら偽物かもと疑ってるらしい。


 (私長官なんなけどな〜)




 「あ、サディア兄さん!」


 「ん?サンディ?」

 「先輩!?」


 そこに更に1人の男がやって来た。彼の名はサンディ マーキュリー、サディアの弟だ。


 「あ、テレサさんもお久しぶりですね。デートですか?」


 「いや、少し仕事。2017年の事件を少し再調査ってね。サンディはどうしたの?」


 「今日は非番ですよ。けど、何となくここに来たくなりまして・・・一昨日ですかね、急にここに何か忘れ物をしたようなそんな感じがしたんですよ」


 テレサは眉間に皺を寄せた。サンディの言った言葉、テレサも同じ感覚だったからだ。ここに来た本当の理由、何かを忘れている気がする、その感覚だ。


 「あ、先輩のお知り合いでしたか・・・申し訳ない。どうぞ」


 「どーも」


 テレサたちは立ち入り禁止区域へと進んでいく。


 その先にある岩場、この先にかつてCIAの裏組織が作っていた流動機械を開発する為の施設がある。ここでテレサは流動機械と言う物を発見した。


 岩場の秘密ゲートを開けると中は真っ暗。


 「PT、ライトを」


 テレサのデバイスが辺りを照らす。一応この施設は放棄されてはいるが、電気はまだ通っている。その為エレベータは稼働している。


 テレサたちはエレベータに乗り、最下層へ向かう。


 「テレサ、この事件妙じゃないか?」


 サディアがテレサに投げかけた。


 「何が?」


 「さっき、ハイスクール時代にコンピュータウイルスを使った話をしてたよな。その話、前にしたことがあったか?」


 「いえ?初めてよ?」


 「聞いたことがある気がするんだ。その話を、何処かで・・・そして、ここに何か忘れ物をしたサンディの言葉・・・俺も丁度同じ感覚をしている。この調査、何か嫌な予感がする」


 不思議、テレサとサディアの中にはこのひと言が渦巻いた。そしてその直後に不安、そして警戒が生まれた。


 2人は念のために銃の安全装置を外した。


 『キーン・・・』


 エレベータのドアがゆっくり開いた。


 「サディア、あんたのデバイスで本部に連絡を」


 「了解。アルファ、本部と繋げ」

 『了解しました』


 サディアの腕時計内臓型、流動機械デバイス、『アルファ series X1』を使いCIA本部と連絡を取った。


 『到着したかね?』


 「はい、映像を共有します。ボディカメラ起動・・・とりあえずは何も無さそうですね」


 サディアはアルファをボディカメラモードにして本部と映像を共有した。


 「この先が私が流動機械を見つけた場所があります・・・っ! サディア、ちょっと待って」


 テレサはある事に気がついて足を止めた。


 「どうした?」


 「PT、地面をもっと照らして・・・」


 地面がより明るく照らされた。


 「これは、足跡?しかも裸足で濡れている。この液体は、海水か?」


 「それに、この足跡は子供よね。年齢は10歳前後の、恐らく女性・・・ねぇ、ここの数分前の映像は出せる?」


 『ちょっと待ってろ、今・・・・ザザッ!ガッ!!ピーッ!!』


 「どうした!?」

 『通信エラー。通話モードをOFFにします』


 突如アルファのデバイスが狂い、通信が途絶えてしまった。


 「なぁ、このご時世、通話が切れるなんて事あり得るか?地下はおろか、マリアナ海溝の中ですら通信可能なこの時代でだぞ?」


 「まずあり得ない。第三者が妨害しない限りね。これはいよいよ怪しいね。サディア、良い?」


 「あぁ」


 遂に2人は拳銃を引き抜いた。


 「伏せろ!!」


 その次の瞬間テレサは叫んだ。同時に2人は物陰に隠れる。




 『ズダダダダダダァンッ!!!ダダダダダダッ!!!』




 その直後、この真っ暗な空間に炸裂音とフラッシュがあちこちから鳴り響いた。そして壁に次々と穴を開けていく。


 「くそ、テレサ!何人いた!?」


 「ざっと数えて30!!装備はM5アサルトライフルだった!!」


 「何っ!?そいつはまだ正式に運用されたのは2、3年前くらいの最新式だぞ!?」


 「まるで!あの事件はまだ終わってないって言いたげね!サディア!!カバーして!エレベータまで行くよ!!」


 テレサはハンドサインを交えてサディアに指示を送る。そしてテレサは更にもう一丁拳銃を取り出した。


 「さぁ、今!!」


 2人は同時に立ち上がり、テレサは両手の拳銃を乱射した。


 『ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!!』


 テレサの正確な射撃は敵武装集団を怯ませる事に成功、エレベータまで駆け込んだ。それと同時にエレベータのドアが閉まる。





 「その二丁撃ち、何処で習った?」


 「ちょっと前にコンダクターって呼び名の奴にね」


 「あぁ、イーサンのやつか」


 テレサはマガジンを交換する。



 『ガコンッ!!』

 


 登っていたエレベータが突然停止した。


 「やっぱ、帰すつもりは無いみたいね」


 「だろうな、どうする?」


 「さっきの攻撃で理解できた。敵は装備こそ最新式だけどそこまで訓練された動きじゃない。運び方次第ではこの二丁だけで事足りる。PT、上に敵は?」


 テレサの指示でPTは天井の裏の透過映像を映し出す。


 「上にはざっと5人待機してる、出てくるのを待ってるね・・・」


 映像には銃をエレベータに向けてる武装集団がいる。


 「・・・テレサ、1つ良いかな?」


 サディアがチャンバーを確認しながらテレサに質問する。


 「何?」


 「このエレベータ、救出口はないぞ?」


 2人は天井を見つめた。このエレベータ、映画のような天井にある救出口は存在しない。


 「あー、なら狙うのは・・・ケーブルか」


 『ガガガガァンッ!!』


 テレサが呟いた瞬間、天井でけたたましい銃撃音が響いた。そしてケーブルは切断されエレベータは急降下した。


 「うおっ!?」


 サディアはバランスを崩す。一方テレサは姿勢を低くして、冷静にとある非常スイッチを押した。するとエレベータの緊急時のブレーキが作動し、地面衝突スレスレで停止した。


 「あーあ、上までは梯子だけか・・・」


 テレサは呑気に上を眺めた。


 「テレサ、どうする?」


 「こうする、サディア。ドア開けるよ」


 テレサとサディアはぐいっとエレベータのドアを開け、テレサは手に持ったスモークグレネードを投げた。


 「PT、熱センサー」


 テレサは熱センサーを起動し、敵の位置を把握した。


 「さて、反撃開始!!」

 「っ!!いや待てテレサ!!」


 反撃に出る為、飛び出そうとしたテレサをサディアは無理矢理引っ張って止めた。


 「何よ!?」


 「アルファが何かを検知してる!!何かが突っ込ん来る!!伏せろ!!」

 「っ!!!」  




 『ドガガァァァァァッッッ!!!!』




 テレサは後ろに飛び退いた。その直後、巨大な何かがこの暗い空間に壁を突き破り突っ込んできた。


 「トラック!?」


 それはこの監獄島にはまずあり得ない乗り物、大型のトラックが突っ込んできたのだ。トラックは綺麗に運転席のドアをエレベータのドアに横付けした。反対側からは銃撃音が鳴り響く。


 テレサとサディアは構えながらトラックに近づいた。すると勢いよく運転席のドアが開く。


 「みーつけた、さてと、一緒に逃げよっか」


 「お前はっ!?」


 出て来たのは、2017年の記録映像に映っていた謎の少女だ。


 「うーん、説明してる時間ないから、さっさと乗ってくれる?テレサおねーちゃんとサディアおにーちゃん」


 「わっ!?」

 「ぐっ!!」


 少女はまるで発泡スチロールを持つかのようにテレサとサディアをトラックの助手席に捩じ込んだ。そして少女も乗り込むとバックで来た道を戻る。


 トラックはまるで後ろが見えているかのように走る。そしてトラックは大きなトンネル道路に出た。


 「何ここ」


 「アルカトラズに続く秘密道路、ゴールデンゲートブリッジまで繋がってるんだぁ。さてと、テレサ、銃構えて。追手が来るよ」


 バックし続けるトラックの正面にバイクの集団が追ってきた。


 「あいつらは?」


 「『捧げられし者たち』この時代じゃまだテレサが捕まえたあのぼんくらの残党ってとこだね。あ、私が指示出すからテレサはその言う通りに撃ってくれる?」


 敵は今にも片手に持ったサブマシンガンをこちらに向けて撃とうとしていた。


 「ちっ!!」

 「PTちゃん、テレサの左手首を支えて。そして撃って」


 『バァンッ!!』


 応戦しようとした時、突然テレサのPTが起動し、テレサの手首に固定された。それと同時に撃った弾丸はバイクのタイヤに命中。バイクは回転しながら宙を舞い、他のバイクを巻き込んだ。


 「な、何これ・・・PTにこんな機能は・・・」


 「私が今追加したの。さてと、ちょーっと捕まってねー。これひっくり返すからさ」




 『ギギギギィィィィィーーーーーーッッ!!!』




 トラックはまるでスポーツカーがドリフトするような動きで方向を転換させ、バック走行から真っ直ぐ走り始めた。


 「っっ!!と、あなたは・・・誰なの?」


 「うーん、その質問を答える前にこっちから質問して良い?テレサ、ベンジャミン タイラーって知ってる?」


 女の子はテレサに質問した。


 「いや、誰それ?」


 「やっぱね、けど君は知ってる筈だよ?君が思い出せそうで思い出せない人、それがタイラーだもの」


 「っ!!!つっ!」


 テレサは急に頭痛が起こり頭を抑えた。


 「けどね、厳密に言うとタイラーなんて人はこの世界に存在なんてしてないの」


 「・・・死んでると言うことか?」


 サディアがテレサを介抱しながら女の子に質問した。


 「そうじゃないよぉ、まぁ惜しい所。タイラーはこの世から記憶、記録、技術、そして存在が全て無かった事にしてる。それが起こったおかげでこの2030年は存在してるの。ただ、一つのミスを除いてね。流動機械だけはこの世に残ってしまった・・・」


 「意味がわからないが?」


 「まだ分からなくても良いよ、とりあえず私は君たちの味方だよって事、敵はもう分かるよね?君を襲ったあの連中。構造だけ見たらシンプルだよ」


 「分かったわ、あなたは私たちの味方って事ね。信じる事にする・・・」


 テレサはヨロヨロと体勢を戻した。


 「あ、テレサまだラングレーには通信しないで、ここサンフランシスコはまだ敵の中だからさ。まずはサクラメントまで行くよ、そこでモルガンちゃんと連絡を取り合って。そこで全部話してあげるから」


 女の子は真っ直ぐ運転しながらテレサの手を押さえていた。テレサはここはとりあえずこの子の言う通りにしようと手を下ろす。


 トラックはゴールデンゲートブリッジに出て、サクラメント方面に向かった。

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