前へ目次 次へ 16/32 (三)-2 「お主、侍ではないな」 右内が構えを解かずにそう数馬に言った。 「だったら何だ。俺の弓は村(コタン)で一番だったんだ。動けば即座に射貫いてやるぞ、賊め!」 数馬がそう言い終わる前に右内が動いた。刀を振りかざして前へ突進してきた。 数馬は改めて狙いを定めて矢を放った。矢は右内に当たると想像していたが、右内の身体が消えて矢は空を切った。 矢が地面に刺さる前に数馬は弓を左手に持ち替え、腰に差している剣ではなく腹に挟んでおいた山刀(タシロ)を抜いた。 (続く)