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死にたくても狐(君)の為なら生きよう  作者: れっちゃん
命さえあればどうなってもいい
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また落ちた


 夢か……

 夢を見るのは久しぶりだった。

 それも嫌な夢だ。


 今日で三日目、早く帰る方法を探さないとな……


 しかしどうしたものか、狐露に聞いてもその辺はわからないと言われお手上げ状態。

 とはいえ何もしないのは性に合わない。


 仕方ない、かたっぱしから探す事にしよう。


 そう思って決めたのが書庫だった。やはり城なだけあって書庫も凄い、部屋中棚と本だらけ、小さな図書館と言っても過言ではない。


 だが多いのは逆にやる気が削がれる、でも文句を言ってられる立場じゃない。読もう。


 そうだ、読めないんだった。


 狐露に文字を読めるようにしてもらってテイク2。

 厚い薄い、書をかたっぱしかた読む事にした。


 お伽話のようなもの、痛快娯楽なもの、誰のかわからない家計簿、見てて苦笑する誰かのポエム、春画染みたもの、官能小説的なもの、絵日記、妖の起こした事件簿__


 疲れた。


 あれからどれくらい読んだのだろう、書庫は図書館のようにその場で読む家具があるわけじゃない、その場に座り、棚に背もたれて読み肩も腰も目が疲れた。


 火の玉を見るとかなり濁っていた。

 どうやら夕方、半日近くは呼んでいたようだ。


 自分が求めている情報は得られてない、が、もう少し探して__


 書庫の扉が開いた。


「杉糸、菓子でもどうだ?」


 そう言うのはお茶と饅頭をおぼんに乗せていた狐露、丁度良かった。


「ちょっと休憩しようと思ってたところなんだ、ありがとう」


 そこから二人軽い雑談と小さなお茶会のような何かが始まったのだが狐露は大量に積まれていた本を見て軽く目を丸くする。


「なんじゃ、もしやこの書庫の書を全て網羅するつもりかや?」


「元の世界に戻る情報が得られるまではね」


 すると狐露はぴきーんと目を輝かせ口元をにやけさせた。


「もしや待っておる女でもおるのかや?」


「うん、君」


「…………へ?」


 あまりに堂々と言い過ぎたせいか狐露の表情が固まった。 

 そして何を思ったのか顔色が徐々に赤に染まる。


 これ以上弄るのは可哀想だ、そう思った。


「君とは飲み友達として仲が良いんだ、僕が帰らないと未来の君の付き合いが減って悲しむだろう」


「そ、そ、そうであろうな。うむ!」


 狐露はぱたぱたと手で仰ぎながらも平然を装い、笑い始める。


 過去の君もやっぱり面白いな、なんてことを思いながら口元が少しにやけている事に気づく。


 口元を手で隠しながら、


「お菓子ありがとう、僕はこのまま続けるよ」


「う、うむ! 程々になっ」


 そう言って狐露は扉に顔をぶつけながらも書庫から出て行った。


「よしやるか……」


 杉糸は書に手を伸ばす。


     φ


 あれから二日くらい書庫に籠った。

 二日かけてやっと一棚、うんざりするなと思い、まだ棚は無数に存在しているのだ。そしてもっとやる気が削がれる出来事になったのは他の妖が利用しにきたのだ。


 妖は僕を見て軽く驚きながらも棚に手を触れ、何と棚が百八十度回転した。そして棚の裏にはぎっしりと別の書が存在していた。


 もう書庫で探すのやめた方がいいかな……ああ眠気が__


 書庫の回転を知った途端やる気と疲労がドッと押し寄せ、意識が消えた。


      φ


 体が痛い、背中も痛い、腰も痛い、首も痛い、頭も痛い。

 寒……いや暖かい……? モフモフしてる。


 瞼を開けると、どうやら自分は書庫で寝落ちしてしまったらしい。

 そして体には毛布と中に狐凛。


 どうやら毛布と風邪引かないように肌、いや尻尾かな、兎も角温めてくれてたらしい。

 狐凛の方もこちらが起きるとむくりと身を起こした。


「朝か、おはよう」


「おはよう……」と小さな声で彼女は言った。


 よし、調べの続きをと書に手を取ろうとしたのだったが、狐凛がじっとこちらを見つめていた。

 無表情で気づき辛いが感情豊かで年相応の子供というのは知っている、本当未来で何があったんだろう。


「何かな……?」


 苦笑いしながら書を持つ杉糸だったが、軽く首を傾げ気づく。


 もしかして構ってほしいんじゃないかと。


 杉糸は書を置き狐凛に笑顔を向ける。


「うん、ごはん食べたらちょっと遊ぼうか」


 こくり。

 しかし尻尾は嬉しそうに動いていた。


 おままごととか女の子らしい遊びをすると思ったのだが、狐凛が要求してきたのは木刀のちゃんばらだった。

 城の庭で杉糸は木刀を持ち、狐凛が打ってくるのを笑顔で防ぎ続けた。

 

 狐凛は二つの手で木刀を扱う、というよりは振り回される感じで使ってるが楽しそうだった。


 弟が出来たらこんな感じなのかな、目の前のは妹だけど。


 そうやって遊んでいると生あくびを嚙み殺し、散歩をする狐露と目が合った。


「狐凛、杉糸の邪魔をしては駄目であろう」


 どうやら狐露は狐凛が僕に遊びをねだったと思っているらしい。


「はは、僕が遊ぼうと言ったんだ、少し気分転換もしたくてね」


「む、それならよいが……」


「そうだ、君も一試合どうかな」


 別にそういった意味合いとかで言ったわけじゃないのだが、この言葉が彼女への宣戦布告か何かと思われ狐露の目が勝負師のものになる。


「ほう、わらわと死合したいと申すか」


 試合のイントネーションがなんか違う気がする。


「狐凛、それを借りるぞ」


 狐凛の木刀を借りた狐露は構えもへったくれもない持ち方で木刀を持つ。


「手加減はせぬぞ」


「妖力だけは抑えてほしいかな」


「ああ最初からそのつもりだ」


 軽く息を吸う、さてと、どうやって打ち込もうか。掌の上でペン回しのように木刀を扱う。

 狐露の方は指でくいっくいっと受けの姿勢でいるらしく、それに甘えて不意をつくよう唐突に草を蹴って突きを繰り出す。


 最初の突きはあっさりと木刀の側面で受け止められたが、そこから続けるように剣技というには大袈裟であるが木刀を振るった。


「ほれほれほれっ」


 狐露は涼しい顔で木刀を捌き、やっぱり昔でも敵わないかと苦笑いしながら杉糸は振るい続ける。


「次はわらわから行くぞ?」


 三十秒ほどだろうか、こちらが攻め続けさせてくれるサービスタイムは終わったらしい。

 次は彼女の方から反応するのでやっとな、これこそ斬撃と言える太刀筋が繰り出された。


 しかし何となくだが杉糸も涼しい顔でそれを捌いたり避けたりしていた。守りに徹すれば何とかなってしまっている。

 

「ほうほう、中々やるではないかっ!」


 狐露の顔に笑みがこぼれ、徐々にスピードが増していく。

 多分このままだとスタミナ負けするな、そして運良く捌けているのも似ているのだ、未来の方の狐露と攻撃の仕方が結構似ていたのだ。


 舌噛まないと良いな。


「ははは、未来の君に教えられたからね。これくらいは出来ないと怒られるんだ」


 しかし余裕持って話するのも疲れて来た。そろそろ仮面を被るのも限界かもしれない。

 後一分これが続けば息が上がる。


「そうかそうか! 未来のわらわに! 未来の……わらわに__」


 突然狐露がこちらの頭に木刀を振り下ろす手前で固まった。

 そしてぼんっと何か破裂するような音を出して顔が赤くなった。


「狐露?」


 今なら打ち込めば倒せるだろうか、変に剣の才能ある人なら隙がないとかこちらを誘い出そうとしているんだって思考に陥りそうだけどこちらは素人だ。

 当たって砕けろの精神でいこう。


 木刀をぽんと彼女の頭に置いた。


「勝っちゃった」


 狐凛の方を見ると彼女はこの様子にぱちぱちと拍手をして祝ってくれている。

 そして対する狐露の方は、


「いやしかしじゃ、ただの飲み友達と言っておっただろう。わらわは何を想像したのだ、しかしもしそうでなかったとしたら__」


 何か放心した状態でぶつぶつとつぶやいている。


 何があったの? と狐凛の方にアイコンタクトを取るが、狐凛は首を横に振る。


 まあ取り合えず声でもかけるか。

 杉糸は狐露に近づいた。


「狐露?」


「ひゃあっ近い!!」


 狐露の顔は梅干しのようにより赤くなり、ぷしゅーっと蒸気を放ちながら後退していき、


「狐露、そっちは池っ」


 杉糸は手を伸ばして手を掴む。


「ひゃああああああああ!!!!」


 変な声と同時にぐいっととてつもない力で引っ張られ、体が池に__

 落ちる寸前、僕は何回水に落ちれば良いんだろうと自分の運命を呪った。


 ぼちゃん。

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