正月のクソ袋スペシャル
「さてさて、わらわの買った福袋でも開けるとするか」
正月の終わり頃、狐露は運試しとして買った福袋に手を取った。
表面上まあ記念に買ってみるか、のような顔をしながらも内心は何が出るのか心底楽しみであり、尻尾の動きがそれを物語っていた。
手を入れると何か四角く薄い板のようなものが当たった。
「ふむ、まずはっ」
そして出すと、それはでぃぶいでぃがわらわの手にあった。
「貞子……十?」
そう言った題名の恐怖映画のようだった。
「ふーむ、こういう映画はわらわ得意かと言われると……」
誰もいないので気を張る必要はなかったので普通に怖いものは怖いと言った。
「まあ次だ次」
畳の上に置き、次だ次と袋の中身を漁ろうとした瞬間、
背後から殺気。
狐露はばっと後ろを振り向くのだが、誰もいなく首を傾げかけた。
だがお笑い番組を映していたテレビが突如砂嵐が巻き起こり、狐露は眉を顰めた。
「何か嫌な予感がするんじゃが……」
そして狐露の予想通り砂嵐から手が飛び出し、
「ふっふっふ、私はクソ映画の呪い……貴方を呪い殺して__」
「またこの展開かっ! 成敗!!」
死装束のような白い布を着た髪の長い女幽霊の出来損ないを手刀で脳天直撃するのだった。
「強すぎじゃないですか?」
「まあわらわはただの狐ではないからな」
二度目の糞呪いに片頭痛を起しかけながらも、狐露は映画の呪いを見る。
「それで其方は何故怨霊になった?」
殆ど理由が読めたりしているのだが、形式状聞いてやる事にした。
「私はとりあえずさざ子と申します」
「さざ? 貞子ではなくてか?」
「はい、さざ子です」
すると狐露は目を丸くしながらも目の前の女が写ったDVDを持って指さす。
「ならこの題名はなんだっ」
「それはパチモン映画でよくある、アレです。後十作品目っぽく書かれてますけど十個も続いてません、今作が初めてです」
「よくあるあれとはなんだあれとは……」
狐露はこめかみに手を置きながらを言う。
狐露だって貞子は知っている。杉糸と過去に見た事がある。だが目の前の女は正直に言うと確かにさざ子が似合う印象だった。
説明しづらいが全体的に安っぽい。
「その……要は貴様は貞子の威を借りた偽物、という事か?」
「まあ早い話そうです。でも容姿には文句言わないでくださいね、これ、私の容姿じゃなくて女優さんの顔を借りてる、って感じですから」
「わらわは人の容姿にあれこれいう趣味などない、妖な分、価値観という物が多少は違っているからな」
「へぇ、やっぱり妖怪っているんですね」
狐露は前にもこのやり取りやったな、という事で軽い説明も面倒臭くなって無言になる。
「後私はクソクソ、言われ続けたレビューの集合意識体です」
「だろうな」
狐露は赤人の事もあって、特に驚きもせず肯定した。
「さて、わらわは忙しい、すまぬが貴様の呪いに付き合ってる暇はない」
流石に二度、あのような出来事に付き合わされる気はない、だからといって深入りし過ぎると前回のゲームのような事になってしまうだろう。
何か人に危害を加えるようなら強制成仏で良い、そう思い福袋に再度手を入れる。
「おっ、これは大きい、片手では掴みきれぬな」
狐露は両手を使ってかぶのように引っこ抜くと、箱が出てきた。
そして箱の中には……
「なぬっ」
確かこれはふぃぎゅあと言う。現代に発展した新種の人形だ。
わらわもその一風変わった細かい造形にほれぼれするものもあったのだが……
「これは酷い」
わらわがそう言葉を漏らしてしまうくらいには出来が悪かった。
制服を着た美少女の人形なのだが、目は魚のように離れ、全身は溶けかけの蝋のように見てて不安を憶える造形だ。
後、原案になった絵と実際の物があまりにも違い過ぎた。
これを正規の値段で買わされたのなら、詐欺と訴えても通じるだろう。
「ギャハハハ!! 俺は呪いのフィギュ__」
シャカシャカシャカシャカ!!!(ミーは呪いの売れ残りアニメふりかけ!!)
僕は呪いの漫画考察本!!!
「ええい、貴様ら、全員並べ並べ」
福袋全て開け終えた狐露は、何故か全てが自立行動できるほど恨みを募らせた存在になっていた事に頭を抱えた。
「しかしなんだ、福袋というのに在庫処理のような面子であるな……」
「てめえ、俺が一番気にしてる事を!」
自立でき、何故か四肢をぐるんぐるん動かしている人形が吠える。
「実際そうだよね」
亀裂が入り、そこから牙が生え口のようになっている半開きの考察本は肯定していた。
「それで貴様らはどうしたい、お望みなら強制成仏で全員片付けてもよいが」
わらわがうんざりしたようにそう言うと全員、それはちょっとというおどおどした雰囲気になる。
「ぼったくりだな」
「はい?」
幽霊女にわらわは頬杖をつきながら言ってやった。
「今貴様の映画の値段を見たが、定価九百八十円と書いてあった。そしてわらわは一万円を持っていかれた。おい、人形。貴様はいくらだ?」
「約六千円だ」
「おかしいではないかっ? もしや本とふりかけを足して三千円以上するのかや?」
だんだんと狐露は酷い内容の中身を引き当てた事実より、福袋と名乗っておきながら値段相応の価値を入れようとしない店の対応に腹が立ってきた。
「ええい、望んだ内容の物じゃないのは百歩譲って許そう、だがそれは値段相応の品物だった場合の話だっ!」
狐露が怒り、回りの呪いの品物達はびくりと身を?震わせる。
「シャカシャカシャカシャカ!!(まああそこの店長違法行為しまくるからなぁ)」
何故かふりかけの中身を振る音で会話出来ている事実に疑問を抱きそうになるが、まあ細かい事は気にしない。
「ふむ、どんな違法行為だ?」
「プラモの違法転売」
「カードゲームのパック特典ぶっこ抜き」
「その福袋もですねー、あとバイトの子に何十時間の労働も何度も強いています」
「ふーむ、よくわからぬが、阿漕な商売を続けているという事であるな?」
呪い一同全員がうなづいた。
ぴきゅーん。
天啓がわらわの頭でひらめいた。
そしてあくどく笑い、口裂け女のように口元ががばっと開いていく。顔が徐々に人から狐のものへと変わり、声を出す。
「ふっふっふ、ならわらわ達で成敗してやろうではないか……」
φ
アニメショップ『アクドイ』の店長である悪井蔵は裏の事務所でスマホを弄りながら業務をサボっていた。
表では頼めば断れない都合のいいバイトが働いているのをいい気に悪井は他の仲いい無関係者を中に入れ雑談していたのだ。
「彼ほんと良い子だよねー」
「うん、ほんと(都合の)いい子ー」
テレビに映る監視カメラを二人で覗きながらギャハハと小馬鹿にしていたのだ。
「おっ、あいつスマホ弄ってるじゃん」
「これは後で教育が必要だねぇ」
悪井が水を得た魚のように後で軽く叱ってやるかと笑みを浮かべた瞬間、事務所の電気が消えた。
「あ? っち、ブレーカーでも落ちたか?」
天候が雨のため、外の明かりを期待できず、溜息交じりに事務所のブレーカーを確認しようとするのだが、監視カメラは映っていた。
ライトの電池が切れたのか、そう思いパイプ椅子に上がって天井に設置された照明に手をつけようとした瞬間だった。
「お、おい見ろよ」
「なんだよ、そんな震えた声で、ゴキブリでもいたか?」
悪井が友人の指さす方へ振り向いた、すると蛇に睨まれたカエルのように硬直してしまった。
監視カメラが砂嵐が起きた、だがそれだけじゃない。
砂嵐の一瞬一瞬に何か映るのだ。
一瞬だった謎の映る存在は徐々に映る時間が増えていき、白装束の女がこちらを向いたのだ。
「ぎゃあああああ!!!!」
友人と悪井、お互い悲鳴を上げ逃げようと振り返った時、
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
顔の溶けた人形が飛び掛かり、悪井は友人を突き放してでも逃げようとした。
だが足元に置かれていた本に足を滑らせてしまう。
「ひ、ひぃ!!」
情けない声を上げながらも這うように逃げようとするのだが、視線の先に白い女の脚が見えた。
そして震えながら顔を上げると、
ぎゃあああああああああああ!!!
φ
「わーはっはっは!! いい気味だっ!」
狐露は例の店の向かいの建物屋上から、コンビニで買った白米にふりかけをかけながら甲高い笑みを浮かべていた。
術の透視能力で何が起こっているのか視聴していると、悪徳店長は意識を失い呪いの品物達は皆この結果に喜んでいた。
「さて皆の者、帰るぞ」
つまようじを咥えながら、建物から飛び降り店の裏側の事務所へ続く窓を開け顔を出す狐露なのだが、
「む、どうしたかや? 其方ら、そんな恐ろしい形相をして」
そう、雰囲気が少し何とも言えぬ物になっていたのだ。
さっきまでいわゆる体育会系の打ち上げのような明るさを持ち合わせていたのだが、今や不適に笑う。いわば不気味だ。
「ああ、狐露さん。私達、思ったんですよ」
さざ子は冷たく笑う。
「ああ、俺達ならもっとやりたい放題出来るんじゃないかって」
「ええ、僕達をゴミ扱いした人類に復讐する時」
「待て待てい!! 本当に呪いの品になってどうするっ!! 其方らがやりたいのは本当にそんな事かっ!?」
「はい、私達の恐ろしさを……」
強 制 成 仏!!!!
φ
「で、そんな事があったんだ」
翌朝、朝食の時に昨晩あった事を杉糸に話しながら、狐露は深く溜息を吐いた。
「はぁ、まことにやれやれだ。弱者が力を持ったと自覚してしまった途端これだ。弱い者の心を忘れ去ってしまっている」
「なんか悲しいね」
「ああ」
「それでこのふりかけってもしかして」
ごはんにかけて食している杉糸が苦笑いしてさした。
だがわらわは敢えてそれを無視して、
「ああそうだ、玲にさっき話した店を調査させてほしいのだが」
今日も変わらず日常は続いていく。




