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死にたくても狐(君)の為なら生きよう  作者: れっちゃん
長い幕間
83/112

やっと終わった一月一日


 作戦会議三、杉糸が用意した餅に砂糖醤油をつけながらにょーんもぐもぐと食べながら話続ける。


「奴があそこまで愚かとは思わなかった」


「最低です、死ねです、馬の蹄に脳と頭蓋骨をシェイクして地獄に落ちろでぐふぇっ!! げほっ!! 餅が!! 餅が喉に!!」


 罵倒し過ぎた罰か、狐凛は喉に餅をつまらせ、わらわと杉糸の助けにより助かった。


「あんまり人の悪口は言っちゃだめだよ?」


「ぜえぜえ……」


 時刻を見るともう夕方、そろそろ焦らなければならない時間というのに妙に緊張感が欠けてしまう。

 二人の呑気な態度のせいか、それともわらわ自身が安心してしまっているからか。


「それよりも晩御飯どうする? それか先にお風呂入る?」


「ああそうだな……って待てい! 風呂のように流されかけたが、この問題を後回しにされては困るぞっ」


「ぬるいギャグ言ってる姉様も流されているでごほっ!! また喉に餅が!!」


 さっきので懲りずまた餅を食べていた狐凛、しかし二度目は助けに入った方がいいか正直躊躇した。


「ならわらわ達で解決した方がいいかや? 思いっきり殴るぞ? どうなっても知らぬぞ?」


「はぁはぁ……姉様、流石にそれは冗談では済まないですよ?」


「わかっておる、だがこれ以上策がない以上、それを使わせざるを得ない事も理解してほしい」


 そんな会話に杉糸が手を挙げて、


「はいサヨナキ君、どうしたですか?」と先生面をした狐凛。


「あんまり思いっきり殴った場合の危険性とかわからないんだけど」


「そうです! わからない、が正解なのです、だからこそ刺激を加えてしまうと何が起こっても不思議ではない、だからこそ出来る限り無理矢理な解決はしたくないのです」


 すると杉糸は顎に手を置いて「あー」と何かやらかしてしまったような顔をした。


「どうした杉糸」


「いや、さっきこっそり玲君にメール送ってたんだけどね、電話が無理なら文字で送れば全部伝わるし」


 瞬間二人は何故そんな事に気づかなかったのか衝撃的な顔をした。

 もしやわらわと狐凛、杉糸より馬鹿なのか?


「それで玲君はある人を送るって言ったんだ」


「ふむ、それは誰だ?」


 どうせ奴の事だ、ろくでもない輩に決まって__


「君が一番嫌ってる神様が来るって、君が存在を聞くだけで怯えるあの」


 本当にろくでもない奴ではないかー!!!


「きぇええええええええええええ!!!!!」


 名前を聞いた途端、昏倒してしまいそうな悲鳴を上げ、意識を失いかける。


「ね、姉様どうしたのですか!?」


「そ、其方はまだ幼かったから知らぬが、奴は駄目だ!! あ奴はわらわが百人いてもかないっこない!!!」


「そこまで強いんだ」


「そこまでという話ではない!! 存在が違うのだ!!! 本当に何故生きているのだ!! ただの強い人間だと思っていたのだが!!」


「そんなに強い存在だからじゃないかな」


 奴の恐ろしさをあまり知らない杉糸は小さく餅をちぎって、狐凛に食べさせている。


「嫌だ!! 奴が来るくらいならわらわ一生この世界に閉じこも__」


 こたつの中にもぐり、頭隠して尻尾隠さずの状況になった狐露だったが、その時世界にずれが生じた。

 いや外れていた形が本来のあるべき姿へ戻っていく感覚に、今となっては喜びより恐怖を覚える。


 き、来たか……!!


 だが今は機会でもあるのだ、この瞬間、わらわが全速力で逃げれば運が良ければそやつとすれ違う形になる。

 そう判断した瞬間、こたつの外に出ようとするのだが、


「呼ばれたから来たぞ」


 杉糸の話ではそいつは姿形性別を人種問わず自由に変えれるらしい。

 だが今回は非常に悪趣味だ。


 昔、わらわ達妖が奴を妖狩りの鬼として恐れていた時の、愛想の悪い美形の無感情な男子と同じ姿をしていたのだ。


 その男は同じようにこたつに入り、こちらを見た。


「久しぶりだな、狐」


 昔と変わらぬ、いや少しだけ笑うようになったその顔を見て、狐露はぷしゅーと空気が抜けていくように気抜けして杉糸の方へ体を傾けていった。 

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