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死にたくても狐(君)の為なら生きよう  作者: れっちゃん
長い幕間
80/112

一月一日? (2)


 既視感、既視感、そして既視感。

 夜になった瞬間、その既視感は確たるものに変わった。


 この覚えはただの違和感ではない!!

 

 わらわはこの一月一日を繰り返しているかもしれない!


 だが時間を見ると既に十一時を超え、今すぐにでも日付の変化が近づいていた。


「ええい!! 何故こんなにも気が付くのが遅かった!!」


 今日一日中、だらだらしていた自分を責め、殴り飛ばしてしまいたい衝動に駆られる。

 落ち着け、この希少な発見を無駄にするわけにはいかない。


 状況をまとめるのだ。


 わらわはこの一日を何度か繰り返しているかも、いやいる! だ。

 だがわらわが些細な事を気にする知性ある狐か、それとも力の強い化け物故か他の二人より違和感に気づく事が出来た。

 

 流石わらわだ、うむ、自分で自分をほめても許されるくらい凄い。


 だが何故繰り返す?

 これは術か? 何者かにやられたか? 

 

 逆恨みを買い過ぎてるせいか思い当たる節が多すぎて困る。


 時間がもうない、もう少し考える時間が欲しい。


 次も必ず気づくかわからない分、貴重にしなければならないというのに……


 恐らく日付が変わると強制的に眠らされる、わらわでさえ。


 もう、時間が……


 すると一気に体全身に眠気が来た。

 だが喉に爪を伸ばした手を突き刺し、血の噴水が畳を汚していく。


「かっは……!」


 痛みで眠気をこらえようとしてもそれが絶対というように力が抜けていく。


 喉がふさがっていくのを感じながらも視界が……


「起きろ……お、き……」


     φ


「あ、この映画はわらわ見たことあるぞ、確か__」


 瞬間、狐露は卓の上に頭を思いっきりぶち当てた。


「姉様!?」


 突如のわらわの奇行にドン引きした声を聞きながらも、ぴゅーぴゅー吹き出る血を手で押さえる。


 おせちは全て片付けていたため、料理を無駄にすることはなかった。


 そして杉糸は困った顔をしながら「精神科、動物科」とスマホで調べていたため、尻尾で叩く。


「いやなんでもない、少々蠅がいてな」


「手で叩いてくださいです!」


「なに、今は頭で叩くのがぶーむという奴だ」


「バラエティの見過ぎです姉様!!」


 気にするな気にするな、とわらわは立ち、少し外の空気を吸うというと二人はそれがいいと肯定してくれた。

 さっきの奇行が効きすぎたのかもしれない。


 庭に出て息を吸う。


 狭間の一部でしかないのに清々しい、自然の酸素が胸に行きわたる。


 さて、考えるか。


 しかし何度繰り返した? 

 少なくとも二桁は行った気がする、だがまともに気づいたのは二回目、これでは本当に骨が折れてしまう。


 既視感が積み重なって今の現状に気づくのだが、所々ずれというものが生じ、異変が発生しているのだ。

 それのせいで気づくのを鈍らせる。


 少なくとも大きな変化が生まれる行動をしてみるか。


 狐露は居間に戻り、こたつで伸びきっている二人に言った。


「初詣に出たい」


「もう夕方だよ?」


「それでも出たいのだっ、頼む、この通りだ」


 わらわが両手を合わせ、腰を低く懇願すると二人は目を丸くして見合わせ、そこまで言うのならと重い腰を上げた。


「サヨナキさんのおごりで美味しいもの食べるです」


「そうだな」


「ははは」


 そういいながらみんな冬服へ着替え、屋敷の外の門に出ようとするのだが、


「ぐえっ!」


 狐露は出ようとした瞬間、見えない壁に顔を痛めた。

 赤くなった鼻をさすりながらもう片方で触れる。


「出れないね」


 もしやとは思ったが、やはり外には出れないか……


「狐凛や、これは何かの術か?」


 術だけならわらわよりも上手い妹に問いて見るが、


「いえ、これは狭間の調子が狂っているのです、術ではないと思います」


 術ではない、それで少し胸が安心するのを感じたが、問題は何一つ好転していない。


「まあ少し時間をかければこの壁も安全に壊せるですよ」


「まことかっ!?」


 絶望の中で希望が見え、狐露の獣耳はぴんと張りつめる。


「で、ですけど二日はかかると思います……」


「なっ、今日中には無理かっ」


「無理です」


「そ、そこを何とか……」


「姉様の頼みでも無理です……」


 本気でそれは無理だと嘘をついていない妹の目を見て、軽く頭を痛める。

 なら外から助けを求めるべきか。


「杉糸、少しスマホを貸してくれぬか?」

 

「いいけど」


 そして玲に電話をしようとした。

 だが出ない。


 他の助けになる知り合いにかけても出ない。


 だんだん血の気が引いていくのを感じた。


 まずい、このままでは、本当に永遠の時を繰り返して__


 だがそれも悪くないと思ってしまっていた自分がいた。

 その鈍りのせいで、せっかくの好機を無駄にしてしまった。

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