表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死にたくても狐(君)の為なら生きよう  作者: れっちゃん
始まり?終わり?
75/112

4歩下がって5歩進む

 多分これで本当に終息したと思う。

 玲や狐凛はこの出来事の後始末、主に隠蔽や改変に力を費やしそこら中奔走させられている。


 ただそんな最中で僕を殺そうとした連中や天城の素性を軽く教えて貰った。

 彼女が愛芽の友人で、僕を殺そうとした理由もそこからあるという事も。


 それでも彼女の事はわからなかった。

 そういう面では終始不思議な人だったと思う。


「なあ其方や、其方飲み過ぎてないか?」


「ん?」


 僕は居間でおちょこに注いだ酒を飲みながら、まどろむ思考で狐露を見た。

 酒は狐露に誘われた、恐らく彼女は気を遣って誘ってくれたのだろう。


「凄い勢いで飲まれていく酒を見て、寧ろわらわの方が酔いが醒めてきた」


 狐露はさっきからつまみしか食べておらず、箸で魚の刺身を食べている。


「其方を見ているとわらわにそれ以上飲むな、後で介抱は誰がやる? と誰かが言っているようだ」


 それでも杉糸は酒を飲み続けた。

 ただ今は何かに溺れたかったのだろう。


「無理は……しておらぬか?」


「無理? してるよ」


 もうおちょこでは足りないので瓶ごと口につけだした。


「でも決めた、生きるよ。ただ生きる、取りあえず生きる、生きて生きて死に(生き)続ける」


 狐露の為に、彼女が泣かない為に、自分を殺してでも生きてやる。

 もうそう決めたのだ。

 

「それなら良いのだがな……」


 そうは言うが狐露は少々納得のいかない様子であった。


「なあ? 其方酔ったら暴力を振るう性分ではないだろうな?」


「僕を何だと思ってるの、前に君が見たがった酔っぱらった僕がこれだよ」


「今でなければ楽しんでいた」


「そう」


 僕はもっと酒を浴びるように飲もうとした。

 だが狐露に止められ、ふと言葉を漏らした。


「どうしたら……罪を償えると思う?」


「……」


「どうやったら……殺した人が救われると思う?」


 狐露は凄く悲しそうな顔をしていた。

 結局生きようが死のうが、苦しむ事には変わりないからだ。

 

「わらわが何を言ってもただの気休めにしかならぬよ……だが」


「?」


 狐露は何か言おうとしたが、口ごもってしまう。


「怒らないよ、だから大丈夫」


 杉糸は優しく狐露の手を握り、彼女はうんと気合を入れるように頷いた。


「わ、わらわと二人で、人助けでも始めぬか?」


「へ?」


 予想外な言葉に軽く酔いが醒めかける。


「だから人助けだっ、探偵のような形でもよいかもしれぬな。其方とわらわで沢山の人を幸せにする、其方とわらわで困ってる人を手伝う、これが償いになるとは思っては無い、幾ら善行を行っても殺した命の等価になるとも思ってもおらぬ……!」


 いつの間にか握ってた手は握り絞められていた。


「それでも其方を……血塗れの生涯で終わらせたくない……っ!」


「そっか……そっか……」


 杉糸はその言葉にどう返していいのかわからなかった。

 僕が幾ら人助けをしても罪は消えない、変わらない。気休めにもならない。


「でも遅いよ、僕なんかじゃ結局また誰かを殺す事に__」


「わらわがそうさせないように努力する、今回の出来事で掌の上で踊らされたわらわの言葉では頼りないかもしれぬが……もうこうならぬよう頑張る……一度だけ……一度だけ……わらわを信じてくれぬか……?」


 瞳に涙を浮かべ、本当によく泣く女性だ。と内心苦笑いしていた。


「所詮口約束」


「そ、そうではあるがっ!」


「でも好きな女性の口約束を信じられなきゃ駄目だよな……」


 僕は軽く笑い、狐露は嬉しそうにうんと頷いた。


「でもどうやるか具体的な考えとかあるの?」


「そ、それは……あの探偵に仕事を分けてもらって……」


「結局友達頼りだね……」


 それを言うと狐露は怒ったようにぽかぽかとこちらを叩きだした。


「いたいいたい」


 特に痛くもない打撃を適当にあしらいながら、ふと狐露の着物が乱れ胸元が見えてしまった。


「……」


 自分はもう生きると決めたのだ。

 

 もう手を出してもいいのかな。


 酔っていたせいか、邪な考えが頭に過る。そしてすぐに汚染されてしまった。

 

「ん、杉糸? どうしたそんな怖い顔をして、なんだ、わらわの顔に何かついて__」


 これは無理矢理だろうか、合意の上だろうか。

 どっちでもいいか、それくらい酔いが回った頭で狐露の唇を奪った。


「んー!? んーっんーっ!?」


 やはり突然過ぎたのがいけなかったのだろうか。彼女はバランスを崩し、畳の上であおむけになっていた。


 何が起きたのかわからない顔をしたまま、口元を隠し、彼女は顔を紅潮させていた。


「そ、そ、そ、そ、そ、そ、そ、そ、其方今何をした!?」


「何ってキスだけど……」


 このままだと殴り飛ばされそうなので即座に行動に移った。


 着物の隙間に手を入れ、それだけで狐露は今から何が起こるのか理解したのだろう。


「ま、ま、ま、ま、一度正気に戻れ!!」


 バチン!

 青い炎に染まった手で頭を叩かれ、酔いが急激に抜けていく。

 そして高揚した気持ちが一瞬で消え去った。


「あれ?」


「よ、よかった。そ、そなた正気に戻ってくれた……ハッ!」


 狐露は押し倒されたまま急に頭を抱えだした。


「わ、わらわはせ、折角のちゃんすを!!」


 どうやらさっきのは嫌がったのではなく咄嗟的にやってしまった行動らしく少し安心した。

 嫌がってのビンタなら一時間くらい寝込んでた。


 もう逃げるのはやめにしよう。


「いただきます」


 据え膳食わぬは男の恥と言う。

 杉糸は狐露に向けて両手を合わせ、


「え、うわっ、其方何をする、ま、待__」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ