一緒に死なないかしら
今にも吐いてしまいたいくらい気分が悪い、今にも発狂してしまいたいくらいに心が死んでいく。
ああ、また僕のせいだ。
僕のせいで人が死んでしまった。
もう完全に僕が生きていい理由はなくなった。
いつも僕に問いかけてくる幻聴は聞こえない、ただ今は狐凛がただ必死に心配してかけてくる声だけが脳に届く。
ごめん、ありがとう、もうそれしか彼女にはかける言葉がなかった。
死のう、ほとぼりが冷めたら一人で死のう。
ほとぼりが……嫌だ、今死にたい。
駄目だ、飲まれるな、感情の波に少しでも飲まれたら、本当戻れなく__
死なせろ。
少しでもそう考えてしまった瞬間、頭の中で文字が幾つも浮かび始めた。
死なせろ、死なせろ、死なせろ!! 死なせろ!!! 死なせろ!!! 死なせろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!
最後まで保っていた平静が完全に壊れてしまった。
死なせろよ!! なんだよこの紐は!! 誰が縛った!? どうして僕を死なせてくれないんだ!?
「あ……あ……ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」
今まで冷静だったのが奇跡だったかもしれない、完全に壊れ、今にも憤死してしまいそうなほど叫びを上げて発狂した。
世界はぐにぁりと歪み、全てが狂気の色に染まっていく。
目の前の光景が薬物患者と変わらぬ奇妙なものになっていた。
「サヨナキさん! 落ち着くです! お願いだから……お願いだから!」
黒い絵の具で塗り潰したかのような顔をした誰だかわからない女が泣いていた。
誰だお前は、もしかして僕を殺してくれるのか? なら早く僕を殺してくれ。
いやお前は泣いているな? 僕の邪魔をしようとしているんだな? ならどっかに行け、僕を殺さないというのなら早く消えてくれ。
「殺せよ……僕を殺せ!!」
「サヨナキさん!!」
黒い塊は叫び続けていた。
なんで僕の名前を知っている?
そうか、お前も僕の幻聴か? だったら僕を罵れ、死ねと言ってくれ。何故生きてるのか、死んでくれと早く言え。
見えている景色は全て狂っていた。
寧ろこっちの方が現実だったかもしれない、絵具を溶かしキャンパスに無造作に塗りつぶしたかのような不安定な酔う世界。
始めからこっちが僕の世界だった。
何だか笑えてきた。
笑えば笑うほど僕の何かが欠けていく気がした。それが楽しくて楽しくて笑えば、世界がもっと混ざっていくのだ。
その時世界に変化が起きた。
ずっと五月蠅かった声が消えたのだ。泣いていた黒い塊の声が倒れたのだ。
同時に絵の世界に一つだけ不純物が混ざっていた。
それは人の形をしていて絵じゃなかった。まるでアニメの中に入り込む実写化のように異物が入り込んでいた。
その僕が殺した一人は声かける。
「ねえ」
星月夜さん。
「一緒に死なないかしら?」
もう誰でもよかった。
その女は笑い、僕に手を差し伸べ、紐を解かれた僕はそれを救世として手を掴んだ。




