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死にたくても狐(君)の為なら生きよう  作者: れっちゃん
終わりと始まり
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襲来


 ここで財布でもあれば喫茶店でも入りお茶でもおごるのだが、無一文の自分は近くの公園のベンチで座り、前回のお返しとして缶コーヒーをおごって貰った。


「また会えるなんて思いませんでしたよ」


 というか普通に間隔が短過ぎである。天城におびき寄せられたと一瞬思ったが、それは考え過ぎだろうと否定した。


「あら口説いてるのかしら」


「ははは、好きな相手ならもういますよ」


 それに呪いの問題だってあるので正直、会いたくなかった側面も強い。


「そう、でもまた会えるなんてアナタと私は赤い糸で結ばれてるのかしら」


 天城はおしるこを飲みながらどっちが口説いてるのだかわからない事を言った。


「そっちが口説いてません?」


「私は最低五本の指は糸で結ばれてなきゃ嫌よ、貴方は親指と人差し指ってところかしら」


「独特な赤い糸だ」


 それに薬指と小指と言わない辺り絶妙に縁が遠そうだ。


 しかしこれからどうしようか。地域を聞く限り京都まで来てしまっているらしい。少し距離はあるが一日で帰れない距離ではない。

 

 だが金を借りるなどしてこれ以上関係を作りたくない、ここは連絡手段を借りて玲辺りに助けを求めるのが得策か。


 そんな事を考えていると天城はため息を吐いた。

 それもわかりやすい、というかわざとらしい。


 一回、二回、三回。


 わざとらしいため息は続いていく。

 もしやこちらの反応待ちだったりするのか。


「何か悩みでもあるんですか?」


「聞きたい?」


「え、あーはい」


 一応はいと答えた。


「言わないわ」


「そうですか」


 まあ変わった人だし、で彼女の行動を片付けコーヒーを飲み続けるが、


「最近__」


 言うんだ結局。


 彼女の言う悩みは自分の周りで不審な事が増え続けている事らしいかった。


「でもおかしい事って何がおかしいんですか?」


「よく私の命が狙われてたりするわ」


「メンヘラの妄想ですか(そうなんですか?)」


 しまった、本音と建て前が逆になった。


「貴方の命が狙われないかしら」


 彼女は特に気にしない様子で毒づきながらも具体的に話し始めた。


 それは家のガスが抜かれてたり、風呂のバスタブに頭上からドライヤーが落ちるようなトラップ、スープに洗剤が入れられてたり等等……


「チャッキーと同棲してるんですか?」


「いいえ一人暮らしよ」


「誰か潜んでるんじゃないんですか」


「さあ」


 それでいいのか、天城の言い方は全てにおいて真剣みがないせいかこちらも釣られて日常会話のノリになってしまう。

 

 だが一応、狐露か玲に頼み彼女の近辺を調べて貰うのはアリかも知れない。

 これで本当に狙われていたとして見捨ててしまった形になると後味が悪い。


「ほら」


 するとふと天城は前方を指さして言った。


「今も狙われてる」


 そして杉糸の心臓が一気に縮こまった。

 前から車が猛牛のようにこちらに向かって走り出して来たのだ。


「嘘だろ……?」


 何故? 何故公園内に車が? そもそも塀や入り口が狭いこの公園に入る事など不可能では?


 頭の疑問を追っていけば先に死んでしまう、頬を叩き助ける事だけを頭に入れた。


 杉糸は天城を抱えて横に飛んだ。


 壊れ、痛む音が耳に響く。

 杉糸は砂埃に目を顰めながらも出来事の結果を見た。


 車はベンチを破壊する以上に背後の草むらの木まで傷つけて停止した。

 危ない、後数秒遅れていたらミンチになっていただろう。

 自分だけならいいが他の人まで死ぬのは御免こうむりたい。


 そうだ、彼女は。


 杉糸は押し倒す形になった天城の安否を心配した。

 彼女の体は病に侵されている。あまり負担はかけていないか不安になった。


 天城の服は血で染まっていた。


「っ」


「吐血しただけよ」


 青ざめかけた杉糸の反応とは逆に天城は冷静で、服を汚した事にうんざりしていたようだった。


「吐血しただけって大丈夫じゃないでしょ」


「車に轢かれるよりはマシじゃないかしら」


「……そうですね」


 杉糸は苦笑いして身を起こす。そして血を吐いた天城を立たせ、おんぶする形になった。

 背中に彼女をおぶり、まだ体力的に余裕はあって安心する。ここで足走ったから足腰立たないは情けない。


 改めて車の方を見ようとした。

 運転手も怪我してなければいいのだが、これは先に警察か、救急車を呼ぶべきか。

 

「え?」


 だが遅いかかってきた車は影も形もなく、壊れたベンチと荒れた草むらの結果しか残していなかった。


     φ


「あわわわわわす、杉糸は何処へ行ったのだ!!」


 杉糸が渦に飲まれ消えてしまった後、狐露は慌てふためて、彼を探す道具が何かないかと青い炎からぽろぽろガラクタやら何やらが雨のように降り注いでいた。


「わ、わらわのせいだ……わらわが杉糸を鍛えようなど思わなければー!! うわーん!! 今から其方のいる黄泉へ行くぞー!!」


 泣きわめく狐露は青い炎から刀を取り出し、刃で自刃しようとしていた。


「お、落ち着くのです姉様!! いつも通りに索敵すればいい話です!!」


「そ、それはそうだ」


 狐露はさっきまでの涙が嘘のように一瞬で枯れ、刀をぶん投げた。すると天井に刺さった。

 そして掌から大量の人魂を生み出し、こやつらに杉糸を探せと命令する。


 これで一刻も経たぬうちに杉糸は見つかるだろう。


「しかし姉様、どうして急にサヨナキさんを鍛え上げようと?」


 先ほど漏らした杉糸を鍛える云々に反応した狐凛が首を傾げていた。

 まあ妹になら隠す理由はないだろうし聞いてもらった方が全面的に協力してもらえるだろう。


 あくまで推測の段階だが、玲によって告げられた事を自分なりに解釈しながらも伝えた。


 すると、


「これだから人間は!! また狙われるのですか!」と怒りを露わにしていた。


 逆に狐露の方はこちらの命を狙う行為には容赦はする気はないが、仕方ないと落ち着いている面もあった。


「まあ奴らにも事情はある、内輪揉めが厄介なのは其方も知っておるだろう」


 彼女にも思い当たる節が多すぎるのか、口を尖らせながらも押し黙った。


「少なくとも今は何処にいようが奴が死ぬ事はない」


 藁人形を自信満々に掲げ、さっきまで子供のように泣いていた狐とは思えない冷静っぷりだった。


「もし死んだとしてもこれが全て肩代わりし、こちらまで転移され__」


 ピシっ。


 藁人形が少し痛み、二人は目を丸くする。 


「奴は外で死にかけているのか……? まあこちらに来るのは時間の問題か」

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