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死にたくても狐(君)の為なら生きよう  作者: れっちゃん
狐の妹
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険悪


 まるで磁石のSとNだ、今の状況を見て杉糸は思った。

 頭に包帯も巻いた狐燐は狐露とえんえん泣きながら抱き合っていて、側から見ればなんだこの状況と思ってしまう。

 だが幸せそうだしまあいいか、と杉糸は温かい目で見守りながらあまり好きではない狐露が買ってきた羊羹を食べた。

 

 実は和菓子は苦手で洋菓子の方が好きだ。

 苦手と言っても食べれない事はないので問題はないが。


「ぐずっ、しかし狐燐よ。其方は今まで何処におったのだ? ここ数百年、姿を見せぬ物だから死んだのかと……」


 兎に角再会を分かち合うタイムは終わり、状況報告の時間になったようだ。

 杉糸は狐露と狐燐にティッシュを渡し、涙と鼻を拭いて貰おうとした。

 だが妹の方は僕を猫のようにしゃーと威嚇し、本当に狐なんだよなと頭の耳と尻尾を再確認した。


「それがです、今から百年ほど前ある男に斬られ、命からがら助かる為に長い眠りについたのです」


 百年ほど前、廃刀令と少し矛盾するかな? その百年ほどがどの範疇まで入るかわからないけど。


「ぐっ、その男が悪いのだな……! 安心しろ、わらわが敵討ちをやってやる!」


「流石にもう死んでるよ」


 たまに彼女はアホになる、いやたまに賢くなると言った方がいいのか。


「む、それもそうか」


 狐露は鼻をかみ涙を拭いて、よしっと顔を綺麗にする。


「何はともあれ、其方が無事でよかった」


 狐露は妹の肩に手をポンと置き、


「姉様……」


 狐燐の方は感極まった表情でそっと姉の胸に抱きついた。が、抱きついた瞬間、狐露の顔が優しい姉のものから敵意を示す恐ろしいものへと変わる。


「ぐえっ!」と彼女も潰れたカエルのような声を出した。


「そうそう……何故杉糸を手にかけようとしたかじっくり話を聞かせておくりゃせんか?」


 さっきの涙は何処にいったのやら、狐露は実の妹にヘッドロックを決め、ぐえっと女の子が出しちゃいけない声を出させた。


「其方も大事だがそこの男も同じくらい大切でな、どちらに優劣などありゃせんが、殺すとなるとわらわは全力で阻止させて__」


「狐露、堕ちる、堕ちかけてるからやめてあげて」


 何度も狐露の腕をバンバンと叩いてたのでレフリーの杉糸がストップを出した。


「忘れておった、其方肉弾戦は弱いのであったな肉弾戦は」


 そこで肉弾戦を強調する辺り他は恐ろしいのだろう。さっきの鎖とかで一瞬で簀巻きにされてたし。


 ぜーぜーぜーぜー。

 狐露の拘束から逃れた狐燐は息を落ち着かせながらも涙目でビシッと僕に向かって指さした。


「そいつは人間です! 人間によって私達がどんな目に遭わされてきたか忘れたのです!?」


 どうやら僕に、ではなく人間である僕に敵意を表しているようだった。

 まあ妖と人間は争って来たのは何となく想像がつく。


「此奴は別だ」


 癇癪を起こし気味に狐露は僕をフォローしてくれる、がそれが逆効果になってるようだ。


「姉様が閉じ込められる事になった大乱だって人間のせいだったではないですか!」


 狐燐は冷静な姉とは別に怒声混じりに声を荒げた。


 大乱? 杉糸は彼女から出てきた単語が少し気になった。

 狐露は僕の予想以上に過去の事を話したがらない、杉糸も興味はあったが誰だって一つや二つ話したくない事だってあると意思を汲み、勝手に悪さして封印された自業自得な狐と解釈していた。

 しかし大乱と聞くと少々悪さどころの話じゃなさそうだ。


 そんな中、狐露は諭すように言う。


「わらわ達の幸せを奪ったのは人と妖じゃ、今更どちらが悪るうなどという問題ではない。それに杉糸は……関係ないであろう? それに貴様が兄として慕っていた男は同じ人__」


 狐露にも色々思う事があるのか話の後半になるにつれて歯切りが悪くなる。


「それでも兄様にいさまの命を奪ったのは人間です!」


「兄様……?」


 杉糸は初めて聞く兄という存在に黙っていようと思ってた言葉が漏れる。


「それになんですかその男の名は!! 姉様が与えたのですか!?」


 ついでに名前まで非難され、杉糸はギョッとする。この名前に何か問題があるのかと、親に貰った贈り物なだけあって少しムッとなりかけた。


「ええい! 狐燐よ、何があっても杉糸に手を出す事はわらわが許さん! 其方が実の妹であっても容赦はせぬ!」


 とうとう狐露まで強い口調となってしまい、折角姉妹数百年振りに会えたというのに狐露は一口で羊羹を食べると居間から出て行ってしまう。

 

「狐露、待ってよ」


 杉糸が狐露に声をかけるが彼女は聞こうとせず、襖をバタン! と閉じた。


「……参ったな」


 杉糸が軽く困った風にしていると狐燐の方と目が合う。


「話、大丈夫かな?」


 杉糸が何か声をかけようとしたが、彼女は強い敵意のまま睨んで、


「認めません……貴方なんて絶対に認めません……!」と呪言のように呟かれて彼女も去ってしまう。


 嵐のように去っていった狐達の事を考えながらもため息が漏れた。

 しかしどういうことだ? 過去に一体何があったんだと、頭を掻きながら狐露に後で聞いてみようかと思った。

 だが意外にも狐燐は狐露にくっついていてその日問い出すチャンスは無かった。

 まあ姉妹の仲違いはそこまで酷くなかったようでそれはそれでいいかと思ったが、自分の敵意は変わってなかったのでやっぱり良くなかった。


 狐露も狐燐も僕の事を出来るだけ触れない、だから喧嘩しなかっただけであった。

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