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死にたくても狐(君)の為なら生きよう  作者: れっちゃん
女殴ってそうな糸目男
34/112

幕間 抱かれるための101の方法

 帰って来てから2日、やはり実家の安心感とは凄く落ち着くものだった。

 過去はここに縛られ、嫌気がさすほど嫌っていた空間であったが行き来が自由となった今となっては嫌いな要素が見当たらない。


 初日は特に何もなくいつも通りに過ごしたのだが、夜、狐露は眠っている最中ある夢に苦しめられた。


『キミらってもうヤった?』


 それはあの品のない糸目の言葉責め。

 わらわはそのにやけつく男の顔を殴ろうとした。だがすり抜けた。


『交尾してないん?』


 下衆男()はわらわの背後に周っており、しゅんしゅんしゅんと姿が増えてわらわを取り囲んでいく。


 ヤった? ヤった? ヤった? ヤった? ヤった? ヤった? ヤった? ヤった? ヤった?


 無限に続くあの憎き相手の品のない言葉責め。


「うう……貴様は黄泉へ堕ちろぉ!」


 恐怖はない夢だが悪夢には変わりない、それが夢だと気づいた時は簡単に勢い余りながらも醒める事ができた。

 頬を赤らめながら頭を抱えため息を吐く。


「こんな夢ばかりでは眠るのが嫌になってしまう……」


 自分に睡眠など必要ない、だが眠る事自体は好きな方だ。

 特に杉糸に尾を撫でられるとあっという間に眠ってしまう事も多いがここ最近、姿形は変われど肉体関係に対する夢ばかり見る。

 今回は特に最悪だった、あの男がずかずかとわらわの夢に忍び込んだのが何よりも許せぬ。


 それはそうとして隣の布団で平然と眠り続ける杉糸を見た。

 もう数ヶ月も同棲し続けてもなおわらわに手を出す事はなかった男である。


 意思が堅いからこそ手を出さない、違う。

 手を出す事に怯えを感じている気弱な小心者、これも違う。

 わらわと杉糸は側から見れば恋人のような仲睦まじい関係とされている、そしてわらわ自身満更でもなく杉糸はわらわの事を好きと言ってくれた。


 なら何故手を出さない?

 冷静に考えてみればわらわは何度も杉糸と肉体的接触を繰り返している気がする。わらわ自身豊かな肉体には自信を持っているが奴は特にこれといった反応を見せてはこない。


 もしかしてわらわは女としての魅力が無いのではないか。

 単に杉糸が特殊な趣向の持ち主という答えも頭に過ったが、あの時の変態発言(DVD)は嘘だったと後に説明してくれた。


 性と生存欲求は繋がっている、と確実には言えないが間違っているとは言えない。

 ならわらわがここで男としての杉糸を立たせ、わらわと杉糸の関係も次の段階に進めても良いではないのか。

 品のない話になるがわらわにだって性欲はあるのだ。


 狐露はうんうん、と頷き、想像すると顔を赤らめながらも悶絶する事はなくギリギリ平常を保つ。

 しかし初めては、自分から抱いて欲しい、と言うのは絶対にしたくなかった。

 渋々抱かれるのは何よりも気分が悪い、向こうから望んで求めて欲しかった。


     φ


「う……」


 早朝、暗い部屋の中でまだ眠っていたい気持ちを抑えてゆっくりと目を開く。

 それは杉糸、今日は自分が朝ごはんの当番だったと米かパン、まずはどっちにしようか考えていた頃ある事に気づき無言になる。


「………………」


 寝間着が乱暴にはだけだ狐露が同じ布団にいたからだ。そしてその露になった胸の谷間に杉糸の手が突っ込まれている。


(フフフフフ……これぞ朝起きると隣に眠っていた作戦! わらわが寝相で入り込んだと見せかけ、其方はわらわの胸を触っている! この構図を作り出す為わらわがどれだけの羞恥心に耐えかねたか! さぁ、いざここで!)


 狐は狸寝入りをしながらどっくんどっくん胸の鼓動を早める。

 ずぼっ!


(ひぎゃー!!)


 乱暴に挟んでいた手が胸から引っこ抜かれ、一瞬変な声が出そうになるが耐えた。

 

(ううっ……驚くではないか……身構えてなければ声が出ていたぞ……)


 目は開いてないがどういう状況かを視界以外の五感を活かして理解し、杉糸がわらわの着物に手を取ったのだ。


(まさか……来るのか……!? わらわの服を脱がすのか……!? こ、心の準備が……いや、覚悟したはずなのだ……ここで恥ずかしがるわけには……)


 しかし肌が露出して風に当たる事はなかった。寧ろ隠れた。


「それじゃ風邪引くよ? あれ、声がヘン、風邪引いたの僕の方かも……」と言い残し、肩をぽんぽん叩かれて杉糸が立ち上がって律儀にわらわに布団を肩まで被せてくれた。

 そして襖が閉じる音がしてわらわは目を開く。


「…………」


     φ


 朝食、今日はパンの卵のさんどうぃっちだが、わらわは米の方が正直好きである。

 だが作って貰ってる分、それを言うのは我儘だろう。

 

「むぐむぐ……おーっとてがすべってしまったー」


 あまりにもわざとらしさの残る棒読みであったが、狐露はコップの水を胸からかぶってしまう。

 そして着物は濡れて透け、肌に張り付く。

 わらわは着物の時はさらしも下着も何も着ない主義だ、そして今は白い寝間着である。

 だからこそ肌が透けて見え、恥ずかしい気持ちもありつつも助平で男の情欲を唆るしちゅえーしょんになるはずだ。


「大丈夫? タオル使う?」


 そう言ってバサッと布を渡された。

 それだけで終わりであった。


「感謝する……」


 なら次だ次、これはまだ軽い弱攻撃でしかない。幾らでも策はある。

 

(少々危険ではあるが夜中に見た動く絵(あにめ)で起きた展開をやって見るか……)


 狐露は池のある縁側で絵を描く杉糸を機会を計らいながら今ここでという時に動く。


「杉糸! 危ない!」


 それは狐露がつまづき、自ら杉糸に身を投げ出すという積極的な行動であった。

 ちゃんと杉糸がわらわの胸に顔を埋めるよう計算し、杉糸に抱きついたはずなのだが。


 ごきん! どん!


 狐は冷や汗を流した。

 何か人として鳴ってはいけない音がなった気がしたのだ。


「す、すぎとっ!!」


 案の定打ちどころが悪くて伸びていた。


     φ


「すまぬな杉糸、其方はさっき怪我したというのに手伝ってもらい」


 杉糸はあの後、狐の高速治療により無事回復した。だがさっきのはやり過ぎたと追い目を感じ、危険な策は排除する事にした。

 そして今は倉で掃除を手伝って貰っている。


「けほっけほっ、今は痛く無いから大丈夫だよ、それにさっきのは事故だし」


 杉糸は軽く咳き込みながら返事をする。


「そうじゃな……」


 事故、仕組まれた事故と知った時は其方はどうするのだろう。怒ってわらわを裸にひん剥くのだろうか、寧ろ結果的にはそっちの方が良いかも知れぬがそれは無いな……待てよ、この考えは無しだ、これではわらわ変態ではないかっ!!


(そろそろか……)


 気を取り直し、狐露は倉の戸をこっそりと人魂に閉めさせた。


「うん?」


 突然と外の明かりが消え、杉糸は不思議そうな顔をする。


「わー、これは閉じ込められてしまったというやつだ、わらわの力でも出られないぞー」


「狐露って実はそんなに強くなかったりする?」


「ふん!!!!」


 バギィと戸を素手で殴って破壊し、杉糸は軽く苦笑いしていた。


「そんなに勢いよく壊さなくても」


 そして狐はしまった、と口をぽっかりと開いてしまった。


(これでもダメというのなら……)


 既に狐の思考は半分迷走していた。

 煩悩塗れというよりは好いた相手に抱かれたという結果だけを求めるズレた変態へと変わり果てていた。


     φ


 ここは狭間の端くれで作られた自然の露天風呂、前までは湯は岩で囲まれただけの簡素な物であったが外の世界で湯治巡りをした結果、何と竹垣の塀を狐露は作り出したのだ。

 帰って来た初日、速攻疲れた杉糸に手伝わせて竹を切る。別にわらわ達以外いないがこういうのはまず雰囲気と形が大事なのだ。


 そして次に大量の灯籠を置き、月光以外の灯りを確保。

 後は屋根も欲しいが、ここから見る夜の景色も外せない。風呂の面積の半分だけ屋根で隠すか、それとももう一つ屋根付きの露天風呂を作り出すか今や試行錯誤段階だが、徐々に変わっていく風呂場に杉糸は一人湯帷子を着てのんびりと浸かっていた。


 そして狐露は遠くでそんな杉糸を見つめる。


「よし手筈通り、よしよしよしっ、落ち着けわらわ……何度も頭の中で練習は繰り返した。最後は羞恥心を捨てるだけで良いのだ……うむっ」


 何度も早口で自分に言い聞かせ、表情が喜怒哀楽コロコロ変わりながらも最後は唇をぎゅっと引き締めて覚悟をした顔になる。


 そして何一つ着ぬ生まれたままの姿(最低限の装備)で狐露は杉糸に近づいた。


「す、すぎっ、杉糸っ」


 あまりの恥ずかしさに噛んでしまいそうになる。だが普段の妖艶な自分の姿を思い出し、徐々に羞恥心が消え寧ろ自分の肉体美に驚く杉糸の反応でも想像して愉むかのような笑みへと変わる。


「どうしたの狐__」


 こちらに振り向き、いつものように反応するが流石の杉糸も一瞬言葉に詰まった。


(いけるのか……? いけるのか……?)


 狐は肩まで湯船に浸かり、胸は手で隠しながらもすいすい近づいてと隣に座る。


「どうしたかや? もしや其方は照れているのか?」


 ニヤニヤと八重歯を出し、大量の尾は勝ち誇った狐露の心情と繋がってるのか今にも暴れそうになる。しかし湯の中でそれは色々とぶち壊しなので抑える。


「どうして裸なの?」 


 恥ずかしがるというよりは顔を顰めたような感じの杉糸だが、これは照れ隠しなのだろう。取り敢えずそう思う事にした。


「風呂は裸体で入るものであろう?」と至極真っ当な返事をした。


「いや前は君、普通に服着て浸かってたよね」


「生憎わらわ昔の事などすぐに忘れる。わらわはずっとこの調子だった気がするが」とすっとぼける。


「恥ずかしくないの?」


「裸を見られ恥らぬ乙女などおりゃあせぬ、しかし其方には見せるその意味は……説明せぬどもわかるな?」


 そして狐露は杉糸と向かい合わせになるよう移動し、杉糸に抱きつきた。

 何度かこのように抱きついた事はあったが、ここまで肌を露出させ密着させたのはこれが初めてだ。

 胸から杉糸の早まる鼓動が聞こえ、いつもこの手の勝負では手玉に取られる狐露であったが今回は自分の勝ちなのだと胸がすかっとする思いになる。


 とはいえここから先は考えてない。これ以上の事を考えると表情の仮面が剥がれ、ずっと顔を赤らめて杉糸に手を引いてもらう事を求めるだろうがここまで持ち込んだだけで十分だと思う。


「其方もそんな布切れ不要であろう?」


 顔に熱が籠っていくのを感じる狐露は顔が見えないよう耳元で囁き、杉糸の湯帷子に手を添える。

 

「いや……肌を見られるのは嫌だな……」


「はえ?」


 突然の言葉に赤い顔が急激に引いていく狐露。


「其方、普通逆ではないか?」


「いや火傷の痕があるし」


 それは知っている、旅行中露天風呂でも個人で入れる部屋ばかり選んだのもそれが理由だ。

 

「いやわらわと其方の仲であろう?」


「君にはこんな気持ち悪い体見せられないよ」


「この状況で急激に冷えるような反応に困る話を持ち出すのではないっ!!」


 狐露はがっくしと肩を下げ、わらわにも傷痕を見せられないくらいには距離があるのかと軽く衝撃を受けた。


「ええい、其方の体に汚いも綺麗もないわ!」


 狐露は杉糸の右腕部分だけ湯帷子を千切って、爛れた火傷の痕がある腕を上から食べた。

 食べたといってもはむっとするような甘噛みで、杉糸の様子を伺いながら口を離さなかった。


「ははは、くすぐったい」


「ぷはっ、なんじゃ、歯を立ててほしいのか?」


「それは勘弁してほしいな、でも、ちょっと心が楽になったよ」


 そう言って杉糸はざばっと立ち上がり、風呂から出て行こうとする。


「もう出るのか?」


「うん、ちょっと体の調子悪いからお風呂入ると治ると思ったんだけどなぁ……疲れてるからもう出るよ」


 そんな元気のない後ろ姿を見守りながら、


「世話が焼ける奴だ」と狐は少し苦笑いをする。

 やはり杉糸は何処か肝心な所で壁を作ってしまっている。お互い依存し合う事を決めても簡単に変わる事はできないらしい。だが今回のようにゆっくりと鱗を剥がすように杉糸の心を溶かしていこう。


「む……わらわ何か肝心な事を忘れて__」


 そして杉糸が去った数十秒後、本来の目的を思い出し声にもならない叫び声を上げる、

 

「ぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」


    φ


 もぐもぐもく。

 夕飯を食べながら杉糸は何か言いたそうにしながらも決心がついたのか口を開く。


「ねえ狐露」


「ん、口に合わなかったか」


「いや君の料理では美味しい方だけど」


 それはどういう意味だ、と狐露は杉糸を睨んだが奴はそれを一切気にせず料理を指摘する。


「すっぽん鍋にウナギに岩牡蠣……この意味は一体?」


「む、料理に意味などない、ただ偶然狭間で取れた食材がそれであっただけだ」


「ここ何でもありだね」


「うむ」


 そう言って再び夕飯をつっつき始めるがこの組み合わせに意味がないはずはなく、これら全ての食材は精がつく食材として有名である。

 つまりあれだ、つまり次へ繋げる為の布石である。

 薬も盛る事を考えたがそれをやってしまっては自分の体に魅力はないのではないかと思いやめた。

 この時点で大分あれだとか考えてはいけない。

 やはり夜だ、男女の逢瀬を交わすのなら夜の方が気分が出て良いだろう。


 狐露は夜に全てを賭ける事にしたのだ。


「む、しかし其方全然食べておらぬではないか」


「うん、ちょっと食欲無くて」


 確かに食欲のなさそうな顔をしている。もしや夏バテか?

 しかしこちらの意図に気づき、わざと食べてない可能性だってある。

 

「食べれば元気が出るぞ杉糸っ」


 そう言って意地でも精力をつけてもらう為食べさせた。


     φ


 そして夜、ついに最後の戦いの時がやってくる。

 杉糸の布団に先回りして潜り、杉糸が眠ろうとした瞬間わらわを見て興奮した杉糸が抱こうとする算段だ。

 しかし簡単に進むとは思ってない、だからこそわらわは新鮮味を意識して洋物の伽用服、つまりべびーどーるというひらひらした黒い下着を着用したのだ。


「ふむ……しかし水着と変わらぬ露出であるな……」


 胸と股の布面以外は全て透けていて、冷静になると恥ずかしくなってしまう。


 だがこれは男の欲情を掻き立てる下着として人気と聞く。今料理を食べて興奮した杉糸なら襲いかかるに決まっている。


 そんな確実とも言えない確信と共に狐露は布団に潜る。

 尾が布団から少しはみ出るので尾は消した。


 10分経った、まだ来ない。


 20分経った、まだ来ない。


 もしやこれは来るまでわらわ耐えねばならぬのか?

 30分経った時それに気づき、このままじっと息を潜めて我慢し続けれるだろうかと不安になる。

 長い間孤独であった狐であるがじっと横たわるのは話が別だ。意識するとむず痒くなり、今すぐ布団を蹴飛ばしたくなる。


 1時間経った。

 うとうとしていたが、やっと襖が開く音と気配が接近してくる。

 狐露はかっと目を開き、布団が布団が暴かれるのを待った。


「狐露?」


 布団を取った杉糸は目を丸くしていた。

 だがそれ以上の反応はなく、平然とこの格好のわらわを見てもいつも通りの表情であった。


 しかしわらわは見逃さない、杉糸の眉が少しだけ上がった事を。

 常人では本当に見抜けない、遠く離れた位置に描かれた文字を読み取る超人如き視力を持った狐露だからこそ微かな違いに気づく事が出来た。


 そして顔が少し赤い、


 これは押せばいける、そう確信し狐露は恥ずかしがりながらも、その面も含めて男の情欲を掻き立てる仕草である事を理解していた。

 演技ではなく本当に恥ずかしいが。


「据え膳食わぬは男の恥という言葉を知っておるか?」


 そう言って腕で胸を挟む体勢を作り、杉糸と目線を合わせるよう座る。


「その……ここから先は……そっ其方が脱がせて……ほしい」


 杉糸はそっとわらわの体に手を伸ばそうとした。

 ここまでやったのだ、わらわはもう全てこの者に体を預けても良いだろう。何が起こるか想像するだけで頭が沸騰し、今にも逃げ出したくなる。

 それでもここは逃げない、ただ瞳を閉じこれから一方的に杉糸に手を出されるのを望みながら……


「やめておくよ、もう少しこのままの関係を楽しみたいんだ」


 否定された。


「ひょえ?」


 狐露はさっきまでの赤面がすんと冷えていくのを感じた。

 それどころか怒り通り越して憎しみまで覚えそうになる。


「そっ、其方はいつもそうだ!! わらわがここまでしたのに!! ここまでしたのに!! わらわには女としての価値はないと申すか!!」


 そして涙目のまま杉糸に訴えを言い続ける。


「そのごめん」


「抱きしめて誤魔化すな!! これでわらわの機嫌が治ると思うなっ!!」


 杉糸を抱擁を引き剥がしてぐるるると吠える狐であるが、杉糸はため息を吐いた。

 なんだそのため息は、本当に呆れたのはわらわの方だ。本当に一発殴ってやろうか其方を。


「違うんだよ、ちょっと僕のデコを触って、いいから」


 普段とは少し違う、投げやりで強気な口調だった為勢いで杉糸のデコを触る。

 熱い、かなり熱い、狐の平均体温は三十八度ほどだが今の杉糸はそれくらいはありそうだった。

 とはいえ人の体温が低いだけで他の動物は基本三十八度等が平熱だったりする。

 ただ人の体温が低いだけで……ん?

 人の体温で三十八度?


「其方風邪を引いてるではないか!」


「うんなんだかすっごい体が怠いん……」


「こんな事をしている場合ではないっ、其方横になれ!! わらわが今すぐにでも氷を持ってきてやる!」


 ふらふらと振り子のように揺らぐ杉糸を寝かせて、急いでこんな服着ている場合ではないといつもの着物に着替える。

 そして頭を冷やす為に氷を詰めた枕と狐露特製の調合した薬を飲ませ、杉糸を寝かせる事にした。

 しかし困った事に熱は少々長く続き、杉糸が完治する頃には自分のした行動を客観的に見る事が出来て冷静になれた。

 

 ついでに杉糸が体調を崩してしまったのは殆どこちらが原因であり、その負い目を感じてか、もうこのような行動は暫く自粛する事にし、一週間ほど杉糸に対して聞き分けが良い狐が誕生した。

 淫な夢は暫く見る事がなくなった。


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