表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死にたくても狐(君)の為なら生きよう  作者: れっちゃん
女殴ってそうな糸目男
31/112

探偵は甘味処にいる

 ここはとある甘味処店、内装を見るに主に氷菓子を主体とした古風な味わいを大事にする和店という印象を抱く。

 そんな店の奥で四人席に座り、ひりひりとした威圧感にも似た気配を漂わせる客達がいた。

 いや、達、というのは少し違う。ただ着物を着た大和撫子が殺意立ってるだけである。


 狐は腕を組み、杉糸の隣に座りながら前方の二人を威嚇する。


「わらわ達が狙いか? わらわか? わらわだな」


 わらわ三段活用で勝手に納得し、ふん、とそっぽむく。


「まあ極端な話、自分はキミ達の味方だぜ? 自分は」


 玲という男は自分は違う、とうすら笑みを浮かべながら強調してくる。


「ふん、わらわからすれば同じ事だ。貴様が味方だろうが敵だろうが杉糸を傷つける者である事には変わりない、それに糸目な男など絶対に裏切るに決まっておろう。そんな怪しい雰囲気を纏い探偵など出来るのか?」


「酷い言われよう、これでも自分、依頼主の助けを掴む探偵として評判ええんやで?」


 くわっと目を開くがそれでも狐露の反応は辛辣だった、


「わらわ達を裏切る時に初めて見せる表情」


「……自分おらんかったらサヨナキ君外出れんかったのにそんな事言ってええんかな」


 薄ら笑いが消え本気で傷ついてそうな顔のまま関西弁で話す玲。


「だからなんだ、遅かれ早かれ、わらわが杉糸の無罪を証明しておったわ」


「ほんとに?」


 すると杉糸が隣で口を挟んできてムッとする。


「其方がわらわを信じなくてどうするっ」


「君のことを信じてるからさっきの言葉が出たんだよ」


「ほうほうそうかそうか、なぬっ!? それはどういうことだっ!」


 狐は杉糸の襟元を掴み食ってかかろうとしたが、店の店員がお盆を持ち大量の氷菓子を持ってきた。


「はい、いちごミルクにみかんにあずきミルクに抹茶をお持ちしましたー!」


 狐露はあずきミルクを頼み、自分の目の前にそれが置かれる。

 大きい、今まで食べた氷菓子よりも2回りほど大きかった。

 うむ、今は怒るより頭に糖分を送る方が先決だな。


 しゃくしゃくしゃく。

 しゃくしゃくしゃく。

 しゃくしゃくしゃく。

 しゃくしゃくしゃく。


 四人とも無言で氷菓子を食べ続け、玲が半分ほど平らげると匙を置き話し始めた。


「そういや華ちゃん陰陽師ちゃうの言うん忘れてた」


 すると狐も同じように食べるのをやめた。


「む……違うのか?」


 玲の隣で無言で氷を食べ続ける華という女を見る。


「ただ名前が変わっただけやけどね、時代の流れと共に縮こまっていった陰陽師はいつの間にか闇祓いとか霊媒師とか言われるようなったの」


 縮こまったか、それを聞くと少し気分が良くなる。

 狐露は相手を馬鹿にしたように言う。


「ふん、妖の絶えた今の世では貴様らの存在など無意味に等しいだろうな」


「いーや? 妖が消えても都市伝説や呪い、人の霊や__」


 玲は話しながら杉糸を見る。


「力ん持ったヒトの悪事とかの対処にまだまだ彼女ら必要やね、自分探偵やからあんま関わりたくないけど」


 杉糸の方を見てまさか、杉糸の呪いの事も知っているのか? と狐露は警戒する。

 

「じゃあ僕も退治対象なのかな? 人を殺す呪い持ちだし」


「阿呆っ何故言う」


 せっかく誤魔化すか何とかしようかと考えてた矢先に自ら此奴はそれを壊した。


「狐露も華さん? の前で僕の呪い暴露したよね」


「む? む? あっ」


 狐は一瞬何の事だと首を傾げながらも思い出す。

 自分が泣きながら杉糸の事で感情的になり、涙を見られた羞恥心と墓穴を掘った愚かさの二重攻撃に思考が混乱する。


「い、一体いつから其方は見ていた」


「ポアロやホームズ辺りから」


「なら止めぬかっ!!」


「自分が面白そうやからもうちょっと見よ? ってサヨナキ君を止めたの」


「貴様が原因かっ!」


「いやー自分ら気が合うかも知れへんね、自分も探偵モノ好きやで? コロンボファンや」


「それは刑事だっ!」


「じゃあ今からコーヒーでも頼んで口に入れて吹き出すね、今ここで練習した成果見せる時が来たわ」


「汚いなっ死ねっ!」


 悪徳探偵のズレたふざけた物言いに苛立ちが増していく。

 それにさっきまでずっと黙って氷菓子を食べていた華という女がギョッとしていた。

 この女は嫌いだがこの点に関しては同情はする。自分が危害加えられようとしている中、玲という男は面白がって止めようとせず覗いていたのだから。


「あ、一応サヨナキ君も今んとこ対象になってないよ? そもそも狐ン封印解かれるまで視界にすら入ってなかったわ、あ、一応狐クンは封印されてたって事でOK?」


「基準がガバガバだね」


「うんガバガバ♡」


 杉糸は玲の質問に頷きながらも話に付き合うが、勝手にペラペラ話さないで欲しいと狐は杉糸の口を塞いだ方がいいか、と少し考えた。いや動きや仕草で答えてるので困るので一度意識を失わせた方がいいかもしれない。


「結局んトコ、人の匙加減でしかないんや、最近も突然現れた狐が危ないからどうにかせぇ、どうにかせぇぶくぶく太った狸みたいな地位だけのジジイ達がうるさいうるさい。こっちは唾吐かれまくって顔中加齢臭まみれや、まあ依頼やから話くらいは聞いたけど」


 やはり目的はわらわの方か。

 しかしさっきの話を聞くに、陰陽いや祓い士は封印が解かれるまでわらわの存在に気づいてなかった事になる。危険な芽はすぐさま潰す、それが臆病者と弱者の行動だがそれをしなかったのはやはり長い年月故か完全に忘れ去られたようだった。 

 それとは別に玲という男に謎が深まる。


「貴様は何者だ?」


「ただの私立探偵件何でも屋」


 そう言って男は名刺を投げる。それを受け取った狐露は「探偵事務所クロード」という名前と住所しか書かれてなかった。

 あまり知りたい情報では無かったので燃やして塵に変えた。


「ああんイケズ」


 狐の頭に血管が浮かぶ。


「そんなつまらぬ事を聞いてはおらぬ、ただの探偵が妖であるわらわに関わるわけないであろう?」


「まぁ、話長ぁなるから端折って話すけど自分、複雑な家庭やけど陰陽系の血筋入っとるねん、それに加えて自分超天才やからたまにこんな依頼降りてくるねん」


「なら何故探偵をしている?」


「だってこっちの方が楽しそうやし」


 ヘラヘラ揶揄うように笑う玲、狐露はまじまじと男の真意を問うかのように睨む。一応嘘を見抜くのが得意な杉糸の方を見た。

 奴は大丈夫と言わんばかりにうなづいた。


 嘘は……ついてないな。

 全容を話したわけでもないが悪意は感じない、違った邪気は感じるがまあいい。この男については後で考えるとしよう。

 

「なら何故杉糸が被害を受けた? わらわへの嫌がらせか?」


「ちょっと違うね、祓い士の界隈ですっごいデウスエクスマキナがおるんやけどその人がキミを退治するなって言ってんねん」


 狐露は突然と出てきたよくわからない単語に思考が飛んだ。

 口をぽかんと開けて十秒後、思考が戻る。


「で、でうしゅえ、え、えくえく……えくれあっ」


「デウスエクスマキナ」と杉糸が耳打ちしてくれる。


「そ、その意味はなんなのだっ」と小声で話す。


「機械仕掛けの神様、意味合いは色々あるけどこの場合は……たった一人であらゆる問題全てを解決できる人、って感じなのかな?」


「ふむ、わらわみたいな奴か」


「…………そうだね」


「なんじゃその間は」


「そろそろ続き話しても?」


 するとからんと皿の上に匙が転がる音がして、わらわ達が話してる間に玲は氷菓子を食べ終えたようだった。

 わらわは何も答えず自分の氷菓子を食べるが、それを了承と勝手に解釈したのかバッと扇子を開き玲は話を始めた。


「まあその人がキミら守ってくれてるんやけどそれでもクソジジイは融通が効かん効かん。じゃあキミが人の世を乱す悪い事をしたから退治すればええんやって短絡的思考に目覚めたの」


 玲は糸目なせいでずっと笑ってるように見えるがさっきから会話にちょくちょく愚痴が混じってるのが感じ取れる。


「だから取り敢えずサヨナキ君に冤罪ぶっかけたらキミは何しても彼ェ助け出すやろ? 犯罪幇助したって事で殺す理由ハイ完成っよっ名案っ」


 玲はポンと両手を叩いた。


「そちらの方が極悪人ではないかっ!!! 成敗してやるっ!」


「行儀悪いからやめなさい」


 狐は袖を捲り、玲に殴りかかろうとするが杉糸に後ろから羽交い締めにされ止められる。


 それに玲はこちらが怒る事を言う時だけ満面の笑みになるのは何故だろう。ハナから性格が終わっているのは顔を見ればわかるが、それでも腹が立つ、一発殴ってもよいか?

 杉糸も似たように笑うが此奴は普通に腹が立つ、杉糸も人の逆鱗に触れるような笑い方をするが杉糸なので許す。こいつは許さぬ。


「いやいや自分はキミらの味方やで? 腐ったクソハゲジジイみたいなタカ派思考は持ってないよ。ハゲタカだけにハゲジジイって狙ってないのになんか面白い洒落生まれたわ」


「ハハハ」


「サヨナキ君わかる? このセンス」


 そう言って扇子をパタパタと仰いでいるが杉糸の目は笑っていなかった。


「まあその証拠にサヨナキ君が罪を犯した証拠はネット含め全部隠蔽したよジブン、余裕そうに笑ってるけどほんま苦労したわ」


 ふむ、記憶を消した。と思っていいのか。

 腐っても陰陽の家系、その手の術に長けているのか知り合いがいるようだ。

 しかし狐露は嬉しいと思いつつも闇祓いに対しては何も恩も情も感じなかった。そもそも此奴らが原因というのに、


「だから許せと? 笑止千万笑止千万、嫌だ。そんな貴様らの茶番に付き合わされわらわの所有物に傷をつけた」


「狐r__」


 杉糸が止めようとしたが、名を最後まで呼ぼうとしなかった。

 杉糸は一瞬、寒気がしたかのように体を震わせる。

 狐の表情が特に変わった様子はない、だが狐は相手を見下すような殺気を漂わせて威嚇をし始めたのだ。


「貴様ら二人の謝罪で足りると思うな? 今のわらわはこれを目論んだ全てを叩きのめすか世界を焼くかのどちらかをせねば気が済まぬ。後悔させてやる」


 だが玲はその殺気に蹴落とされる事もなく目を開き笑う。


「粋がるなよ怪物フリークス、自分ら人間はキミ程度の世界滅ぼす依頼何度もこなしてきたんやで?」


 お互い一色触発、いつ爆発するかもわからない火種、この玲という人間は人間にしてはかなりの強者という事は認識していた。だが狐露は負けるはしない。


「なら言い返してやろう、貴様程度の愚か者、わらわは何度も倒してきひゃっ」


 口に冷たいものが押し込まれた。


「いちごミルク味」


 いつのまにか杉糸の氷菓子を口に放り込まれていたらしく、咀嚼すると美味しい。


「もう少しほしい……」とぼそりと小声で呟く。


「はい」


 そう言って杉糸に食べさせてもらいながらももう一度睨む。


「それにわらわはそんな、ふりすくというたぶれっと菓子みたいな名前ではない、訂正しろっ」


「あ……うん。予想以上にキミと話ししてたら気が抜けてきた」


「何っ! 杉糸が話の間に入ってくるのが原因であろう!」


 そう言いながらも横であーん、と杉糸が運んでくる氷菓子を食べ続ける。

 正直これ以上、いらないという感情もあるにはあるが杉糸に食べさせて貰う事が滅多にない。自分で食べさせて欲しいというのは少々恥ずかしく、こんな機会など滅多にないので見られている羞恥心を無視しながら堪能しているだけである。


「まあええわ、自分、キミと戦いに来たわけやないし」


「なら何しに来た」


「キミらの味方、でも問答無用で手を貸すわけもなくキミらの味方する価値あるか見極めに? やね」


 ニコニコしながら両手を組んで顎を手の上に乗せる玲。


「依頼主の頼みを無碍にするとは、探偵としては二流だな」


「探偵にだって依頼主を選ぶ権利くらいはあるぜ? それにジブンも最低限のポリシーくらいは持ってるつもりや、アコギな連中のぎゃふんとした顔を拝みたいくらいには。それにええんかなー? 自分が依頼受けてもうたらもっとサヨナキ君外出すの手こずる事になるで?」

 

「……全てを見据えたような上から目線な奴はわらわ嫌いだ」


 隣で同族嫌悪、という声がした気がするが無視して、頬杖をつきながら横目で玲の話を聞き続ける。ふん、どうせわららの神経を逆撫でする言葉に決まっておる。

 そう思い今から出来るだけ怒りを抑える準備をしていたが、


「探偵として一つ質問してええ?」


「なんだ」


 探偵としてという部分に惹かれ、無意識に了承の意思を見せてしまう狐。だが次の玲の言葉に唖然としてしまう。


「なぁ、キミ達ってもうヤった?」


「は?」


「もっと獣畜生っぽく言った方がええ? キミらもう交尾し__」


 玲がその言葉を最後まで言う事はなかった。

 玲の後頭部付近で狐の火が爆発し、その勢いで奴は卓の上にデコをゴン!! と強烈な音を出しながらぶつけた。


「死ね! 貴様は卓にぶつけて死ね!!」


「最低」とずっと黙っていた華まで冷たい声を出す。


 狐露は顔を赤らめながら玲に対して追い討ちの罵倒を続けるが隣にいた杉糸が冷静に笑いながら語るのだ。


「あーもう少し関係深めたら普通にできそ__」


 杉糸の後頭部で同じように爆発する。


 ぷすぷすと焦げながら男二人は卓に顎を乗せながら話し続ける。


「うっそやーほんまにヤってへんの? サヨナキ君あの大きい乳揉んでへんの?」


「乳なら何度か揉ん__」


 どかーん! どかーん!

 この不埒な連中共に炎の追撃は続いていく。


「お、お客様! 一体何が!!」


 あまりの音に店員が慌ててこちらの様子を確認しに来るが、玲が突っ伏せたまま扇子を使って空を切る。すると店員は何もなかったかのように去っていく。

 印を結んで認識阻害の術でも使ったのだろう。

 ぷすぷすと焦げながら玲は言う。


「自分の持論やけど、愛に生きる奴は信用できるねん」


「そんな事言って恥ずかしくないのか貴様は」


「うわー辛辣、自分、愛の依頼は無償で解決するくらいにはロマンチストやのに」


「おなごに暴力振るってそうな顔をしている貴様では説得力に足りぬわ」


「それはただの偏見では?」と玲は目を開いていた。


 むくり、と同じく髪を焦がした杉糸が顔を上げる。


「そんな理由で味方しても大丈夫?」


「だって面白そうや」


 狐は絶句する。


「ここでちょっくら嫌がらせでも起こしてェハゲジジイ共の悔しがる顔拝みたいんや」


「ほう、そんな信用できるかわからぬ理由に命を預けよ、と? たわけ、そもそもわらわは貴様らを許したつもりなど毛頭ない、この怒りは貴様ら全てを叩きのめ……」


 がしり、と尻を手で掴まれて変な声を出す。


「ぎゃっ!」


「あ、尻尾ないんだった」


「杉糸ォ! 其方何わらわの尻を触っておる!」


 歯を噛み締めながら隣の男を見るが、わらわの尻を触っておきながら助平な顔など一つもせず、ただこの話を邪魔する為だけに触ったのだと言いたげな顔に腹が立った。


「ごめん、君が話をふり出しに戻そうとしてたから尻尾触れば落ち着くかなって」


「わらわは今尾は生やしておらん!!! それを抜きにしても尾を触ろうとしたとはなんだ!? 尾もわらわにとっては敏感な体の一つぞ!!」


「たまに触ってるじゃない」


「それはわらわが許可したからだ!」


「チッ」


 華がこちらを鬱陶しげな表情を隠さず舌打ちして狐露はまたもや唖然とする。

 いやいや、貴様もそんな反抗心見せれる立場か? 人目を憚らず自分たちの世界に入り込むわらわ達も悪いは否定せぬがなんじゃ今の舌打ちは。


「それに、君が怒ってるのは自分の為じゃない、僕の為だろう? なら僕が気にしないという事で手打ちにしてくれないかな?」


「なぬっ……」


 杉糸の言葉は確信を突いてはいた。自分に降りかかった火の粉なら顔色一つ変えず払っていただろう、自分の怒りは殆ど杉糸に被害を食らったことに対する怒りであった。

 しかし、しかしだ、本人が許すからと言って完、というわけにはいかぬだろう。それで終わらせる事を了承するほどわらわは善人でも器が大きい狐ではない。


「しかしだ、此奴は人を殺した」


 狐露は華に対し指をさす。


「たしかに死んだあの男は外道だ、畜生以下だ、犬の糞にも劣らぬ餓鬼に堕ちた人間の形をした何かだ」


「そこまで言わなくても」と杉糸は苦い顔をする。

 

「だが自らの意思で殺し、その罪を着せた女をお前は赦すというのか?」


「僕はそんな許す許さない立場の人間じゃない、僕も同じ人殺しだろう」


「違うっ、其方と此奴は違う!」


 実際狐はそう思っている。自分の意思で殺した、と殺してしまったでは天と地ほど意味合いが違うと思っている。

 それでも杉糸はその意思を曲げようとしなかった。


「同じだよ」


「話は済んだ?」


 玲がニヤニヤと笑いながらこちらを見つめより苛立ちが増す。

 しかしこれ以上言い返しても、杉糸は揺れる気はないと理解し、行きどころのない怒りをぶちまける。


「ええい! 何故妖であるわらわの方が死生観、倫理観がまともなのだ!!」


「えー自分はどう?」


「貴様は鏡を見てものを言え!」


 狐はそれを最後に拗ねた。もう勝手にしろと言わんばかりに杉糸から目を逸らす。

 わらわがあれほど頑張って守ろうとしたのにこの仕打ちはあんまりである。


「まあキミが納得いかん気持ちもわかるよ、だから華ちゃんは自分らで調教、じゃなくて裁かせてもらうわ」


 一瞬信じられない目で華は玲を睨んだ気がするが狐にとってはどうなろうがもうどうでも良い。


「…………知らん」


 これは受け入れた、というよりただ投げやりな返事であった。

 しかしその時だった、杉糸が自分の手を掴もうとしてきたのだ。

 ご機嫌取りにでも来たか、とわらわはそれを避けて触るな、と目線だけで伝える。

 それでも杉糸は掴もうとしてきて、鬱陶しい男は嫌われるぞ、と本気で振り払おうとした瞬間、杉糸の手に目がいった。


 手のひらに字が書かれていた。


 信じて、と一言だけ。


「…………」


 狐はため息を吐いた。


「わかった、その女の処罰は貴様らに預ける。だが生半可な罰だった場合はわらわ直々に襲いに行ってやる」


「急に聞き分けよくなったの不気味やけどありがとー」


 白々しい笑い、絶対わらわが杉糸に説得されて了承したのを気づいているだろう。

 そして華という女は自分の処罰の会話が投げ返られてるというのに顔色一つ変えようとしてなかった。


「まあキミらが人間襲わん限り自分味方なのは確かや、話は全部上手い事解決させたから安心してラブホでイチャコラ子作r……」


 玲の顔が爆発した。

この回は二つに分けようと思ったのですが丁度いい区切りがありませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ