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6 特別な存在
耳を生やしたナメクジが不気味に見えたのは、本来の姿から逸脱していたからではなく、ナメクジという存在自体が嫌いだったからだ。
生理的に受け付けないので、管理部の奴等は嫌われている。
「西の方角に気をつけろ」 老いた狩人の忠告は、けれど、臆病風を嫌う若者には不向きだった。
「畜生! 俺だってやれるんだぜ!」 一人の若い男はそう言って、薔薇の棘を摘み取りに行ったのだった。
夢中で投げつけた幸運の壺は、明らかに偽物だった。
何故なら、誰もが特別な存在だから。
白髪の老父も言っていた。それが答えである。
ベルタースオリジナ……おっと、◇がやって来てしまった。