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14 無礼者
思わせぶりな一言が招いたのは、得体のしれない悪意だった。
先触れに気が狂い、無数に生える手の感触ばかりが重なる。
すべきことはいつも後ろに立っていて、口喧嘩が筵を起こす。
何不自由のない生活に紛れ込んだ朝日の毒舌は、しかし、昨日の善意に嘘ついた。
「もっと上手くやれたはずなのに……」
そう呟けることの、なんと幸福なことか。
苦しみばかりが増幅し、吐けることのない罵詈雑言は行き場を失う。
胃の中が荒れ、出血は血管の破滅。気味の悪い笑みは家出した。
『何も欲しくない』と、強欲な者が一人、崖に立っている。
真実は蝋で塗り固められたものと知っているはずなのに、真っ黒な価値観で独り歩きしていた。




