俺をイカせたのはバナナかよ!?~ミッションは異世界救済?生き返りをかけ転生します~
俺をイカせたのはバナナかよ!?~ミッションは異世界救済?生き返りをかけ転生します~2
前回のあらすじ
死んだ少年、氷上英雄は異世界を救う事を条件に神様に蘇生の約束を取り付ける。
いざ復活をかけ異世界へ!
詳しくは前作https://ncode.syosetu.com/n3536fc/へ
あれから二日と少し。俺は今、冒険の旅に出ている。
「行ったぞ、B.N.N!」
「あ、あぁ!」
仲間の声に剣を構え、前を見据えた。一匹のモンスター・ゴブリンが俺に向けて突進して来る。その手には斧。当たれば痛いでは済まないだろう。
「ギキィィー!!」
ゴブリンは勢いそのままに跳躍し、鈍く光る凶器が俺の脳天目掛け振り下ろされる。それをヒラリと躱し、相手の腹を蹴り上げた。
「ゲエェッ!?」
着地に合わせたその蹴りは見事に決まり、ゴブリンは無防備にふわりと宙に舞う。そこに渾身の一撃を叩き込む。
「エクスー……やっぱ辞めた!」
バスンと言う音と同時にゴブリンは真っ二つになり、ドシャリと地面に転がり落ちる。切断された躰は砂のように変化し、ボロボロと崩れて行った。
「お疲れ様!」
「お疲れさん」
「さすがだなB.N.N」
みんなでお互いを労う言葉を掛け合う。この世界での戦闘にもだいぶ慣れてきたとは言え、やはり怖い物は怖い。仲間が居て本当に良かった。
ちなみにB.N.Nとは俺のことだ。この世界ではこの名前で生きている。もちろん自分で名乗った訳ではなく、初めからこの名前になっていた。マジで神様許さない。B.N.Nてあるかい?
戦闘の疲れもあり、一旦休憩を取ることになった。ここはダンジョンになっている森の中。まだ昼ごろだが日の光は木々にさえぎられ、どんよりと薄暗い。
見張りを買って出た俺は仮眠を取る仲間を眺め、これまでの事を思い出す。
二日前。俺は小さな小部屋で目を覚ました。まず状況を把握する事から始めようとして、ふと不思議な感覚に襲われる。おそらく神様の配慮だろう。有り難い事にこの場所の世界感と言うか、基本知識のようなものは自然と知っていた。
簡単に言うと神様の言う通り、RPGと同じようにレベルや魔法・スキルが存在することや、モンスターの情報なんかは目覚めた時点で知識として頭に入っていたのだ。
そこで自分のレベルを確認したところ(確認方法も念じると視界に情報が出て来ると自然と理解していた)ステータスがオールカンスト。思わず出た言葉が「クソチートじゃん」だったのだが、今思えばそれがこの世界に来て最初の言葉だった。その後に例の名前を見たお陰で怒りで忘れていた。もっとマシな言葉言いたかったな。
ひとまず小部屋の外に出ると絵に描いたようなヨーロッパ風の世界・・・ではなく立派な農場がそこら一帯に広がっていた。スローライフてそう言うことか。恐るべしスローライフブーム。
色々な人に話を聞くと、もっと大きな街になら冒険者も集う職業仲介場がある事を知った。俺はそこで魔王討伐に向けてパーティーを組むメンバー探しから始める事にする。
余談ではあるが話しを聞く中で、どうもスローライフを広めた人間は俺と同じく転生者である可能性が出てきた。数年前にある男性が「これで異世界のんびりスローライフだぁ!!」と叫んでいたのを覚えている人が居たのだ。と言うか確定だな。すんません、現地民さん。同じ転生者のせいで魔王ヒャッハーさせてすんません。流行らせんなよスローライフ! って言っておきます。
チートマネー(所持金もやはりカンストしていた)で一応の装備を整え、街へ向かう。一番危なかったのはこの時で、道中初めてモンスターに遭遇した時の恐怖と言ったら……。
相手はポ〇モ〇のウ〇ッキーのような木型のモンスターで、まぁステータスもカンストしているし、舐めて掛かった訳だ。結果的に最初の一撃を簡単に交わされて顔面にカウンターパンチをくらった。そりゃそうだ。プロのスポーツ選手も本気じゃなければ実力は出せない。ましてや初めて剣を握る素人が舐めプなんてもってのほかだ。
こちらがよろけた隙にさらにパンチを繰り出され、負けじと俺も剣を振り回す。ウ〇ッキー擬きを倒した時にはHPが三割ほど減っていた。初戦闘とは言え一匹に三割とは情けない。更に追い打ちをかけたのはそいつがまだ初級のモンスターであったことだ。
これでは仲間を集めようにも相手にすらされないと思った俺は、泣く泣くその日を丸々戦闘に慣れる訓練に使った。
翌日、早朝から出発して日が昇る頃には街に到着し、早速職業仲介場に向かい「魔族の討伐」で登録をして貰う。本当に冒険者の数が少ないのか、受け付けのお姉さんに手を握られ「ありがとう、助かります!」と目に涙を浮かべて言われたときには恋しそうになった。危ない危ない。
時間が掛かる事も覚悟したのだが、程なく同行希望者が現れる。剣士でアタッカーのマイケル、爽やか系の俗に言うイケメンだ。盾とランスによる鉄壁のガーディアンのジョニー、厳つい感じのボスザル系。魔法による回復・後方支援のヒーラー、クリスはパーティーの紅一点、清楚系でお下げ髪の似合う少女。
そこでマイケルから「組む前に実力を知りたい」と言うお決まりの決闘イベントを挑まれ、何とか勝利。チートステータスで無ければやられていただろう。むしろ実戦経験でチートステータスに対抗出来るマイケルに素直に敬意を表したい。
こうしてパーティーを組んだ俺は頼もしい仲間と共にダンジョンへと赴き、今に至るまでひたすら攻略に励んでいる。
しかしすでに三日目の昼。魔王討伐はおろか、その魔王の住処すら見付かっていないのが現状だ。明日、日が昇る頃に期限の丸三日間が過ぎ、ミッションノットクリアとなる。もう時間が無いのだ。
実は多少は期待していたログボなる物も、初日にはこの世界のマップ、次の日は回復薬と当たり障りのない物。そして神様の言っていた今日の朝に貰った三つ目の特典はと言うと……。
【好きなスキルを習得できるチケット/略して好きスキチケット♪】
略すと何だかいかがわしチケットに聞こえる事は置いておいて、確かに便利アイテムではある。
試しに習得可能スキルの一覧を見ると、瞬間転移や一定時間無敵状態、敵のオート感知など様々なスキルが並んでいた。その中で魔王討伐に使えそうなのは一つしか無かったのだが、その文字を見た俺は習得に踏み切れずにいる。
[自爆:自分の命と引き換えに対象一体を葬る]
このスキルさえあれば魔王がいかに強かろうと倒す事が出来るのだ。ただし自分が死んでは意味が無い。
一応クリスに蘇生スキルの有無を確認したところ答えはノー。一流の魔法使いでも使える人は限られている程の高等魔法だそうで、いまだにスキル所持者に会ったことも無いと言う。
それはそうだろう。いくらゲームのような世界でも簡単に生き返る事ができるのは都合が良すぎると言うもの。ここはゲームのような世界であってゲームの世界では無いのだ。
なんとか打開策を考えるが良い案は浮かばず、結局は進むしかないと結論づける。皆を起こして先を急ぐことにした。
しばらく歩くと少し開いた場所に出る。そこには光も届き、久しぶりの日差しにほっとする。ふと、ぽつぽつと複数の木箱が落ちていた。宝箱だ。
「おい、見ろよ! レアスポットだぜ!」
「レアスポット……って何?」
興奮するジョニーに訪ねて見る。宝箱に夢中のジョニーに代わってマイケルが答えてくれた。
「知らないのか? 時々ダンジョンで見付かるお宝スポットさ。噂レベルの話だったんだが、まさかお目に掛かれるなんてな!」
「ははは! ずっとダンジョンに潜ってた甲斐があったぜ!」
ジョニーは言うまでもなく、マイケルも感慨深げに辺りを見渡している。でもクリスだけは少々怯えて見えた。
「あの、どうかした?」
そっと声をかけてみる。ビクリと肩を震わせ身構えるクリス。何かありそうだ……。
「ね、ねぇ……出よう。聞いた事があるの。レアスポットの宝箱にはトラップもあるって。危険だよ……」
「はは、心配性だなクリス! 危険だって言ってもそいつが生きて帰んなきゃ教える統べはねぇ。つまりその程度の危険だってことだ」
「ジョニーに同意だな。何個か開けるくらいは問題ないさ」
二人は取り付く島もなく各々宝箱を物色している。シュンとするクリスが可哀想だ……。
「違うの……教えてくれたのは父さん。開けたのは父さんの仲間で、その人は死んじゃったって……父さん達はそれで急いで逃げ出したって……」
一瞬にして空気が凍る。ひとまず二人を止めようと……
「ジョニー……?」
「わ、悪い……開けちまった……」
次の瞬間、ジョニーの開けた宝箱からサイレンに似たけたたましい音が吐き出される。
「に、逃げるぞぉ!!」
マイケルの声に一斉に走り出すも、すぐさま異変に気付く。
「……出れない? ねえ、レアスポットから出られ無いよ!」
クリスの叫びに足が止まる。宝箱から乾いた声が響く。
『四名カクニン 強制テンイ 魔王城 サイ深ブ』
全員の体が光り始める。しかし俺は別の事に意識が向いていた。
「今、何て言った?」
聞き間違いで無ければ「魔王城最深部」と言ったはずだ。ここに来て最大のチャンス到来。
ごめん、クリス。転移される直前の悲壮な表情、でも俺はこのトラップに感謝したい。
意を決した俺の体がその場から消えた。
「あれ?ほんのりコメディーは」
『シリアスってるね』
まさかの三部作。次回、完結です
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