幸せの理由を
置き去りにされた歓楽街の出口に立つ
派手な化粧をした若い女達が言う
「最近最初から枕してくれる人多いよね」
やけに目立つ赤い口紅と、体形を強調する洋服
出会った初日の夜に枕を共にする
貴女の値段を訊いてみたい
どんな偽善を言ってみても
先立つ物が必要な時代
何枚か増えたその紙切れを
貴女は何と交換するのだろう
浴びる様に飲んで
馬鹿な振りをして笑って
深く舌を絡めても
0.01mmの膜を隔てれば
貴女は傷つかずに済むのだろうか
この街で生まれ育った大半は
中学をまともに卒業すれば良い方で
大抵は痩せ薬かアルコールに溺れて
脱色した髪と穴の開いた軟骨で少年院を出て
通っていた小学校の裏庭からは葬儀社が見えて
今日も光化学スモッグ警報が鳴り響いて
ホームレスが水浴びしないように噴水が止められて
そういう
そういう街を見て成長していく内に
大体解ってしまうんだ
男は肉体労働に、女は夜の街へ沈んで
そうしていつかクスリか暴力でしょっ引かれて
福祉とかいう真綿で首を絞められながら
抜け殻の身体と見えていない目でパチスロを打つ未来の姿を
今夜買われた貴女は
妥協か諦めか幻想で、早くに子供を産むと思う
そして結婚と離婚を繰り返して
子供を養う為に朝も昼も夜も働くと思う
貴女の子供はこの街で成長していって
暴力や不良や男やドラッグやイジメを回避できるだろうか
もし不登校になっても芸術的才能が開花して認められて
テレビやインターネットで有名になって稼げるだろうか
もし就職もできず才能も開花しなければ
きっと貴女か貴女を買った男と同じ大人になると思う
貴女は今幸せですか
貴女は明日の朝も幸せですか
そして今日という1日は幸せでしたか
貴女はかつて誰かの子供で
そしていつかの親になる
貴女の子供は大きくなって
いつか誰かと子を作る
貴女の血も、この街の血も受け継いで
その子は歓楽街の出口で立っていて
そんな初対面の女性とホテルに消える
かつて子供だったあなたへ
あなたは今幸せですか
あなたは明日の朝も幸せですか
そして今日という1日は幸せでしたか
よかったらその言い訳を
きっと理不尽でどうしようもなかった言い訳を
少し話してはくれませんか
この街の不幸のその先を知らない僕に
幸せの理由を教えてくれませんか