ハロウィンスペシャル
本日は10月30日。
そう、ハロウィンの日です。
とは言え、ハロウィンでお菓子を貰えるのは子供、精々小学生まで。
高校生の私たちにとっては全く関係のない話。
……話のはずが、何をしているんでしょうか、私たちは?
ここは街の体育館。
ここに小学生を集めて、一部の高校生に引率をさせるという企画。
毎年我が高校からは代表として生徒会執行部が引率にいく。
そして生徒会副会長の私が行くのは当たり前のことで。
え?子守り位でギャーギャー言うなって?
子守りだけならまだいいんです。
この街のハロウィンは特殊なのです。
まずはそれを説明しましょう。
ハロウィンの日は学校を含めほとんどの仕事が休みになります。
その日に、家毎にお菓子がたくさん届きます。
夜には小学生を連れてその家を回り、お菓子を貰うのです。
え?普通のハロウィンじゃないかって?
いいから黙ってお聞きなさい。
さっきの通り皆で体育館に集まります。
そこで、まずお祓いをされます。
そして仮装をして街に繰り出すのですが、出るというのです。
そう、お化け、怪物、幽霊が。
あくまでも噂ですよ?
噂で、ジャックオランタンが喋ったとか子供が一人壁をすり抜けたとか。
神様に願いを叶えてもらった何て言う子供も居ます。
まあ、噂話なので気にすることもないと思っていたのです。
そう、思っていたのです!
この怪現象が起こったのは街の一部。
北東部だけです。
私たちの高校の生徒会は毎年そこが担当地区なのです。
しかし先輩がほんとに出るほんとに出ると脅しまくったお陰で皆が皆ビクビクしています。
まあ、話を戻します。
回った後はその地区毎に神社にお参りをして家路につくと。
これを聞いて去年の私は思ったのです。
和洋折衷甚だしいにも程がある、と。
まあ、そんなこんなで説明してると、ちょうど時間が来たようです。
ーーーーーー
まずはこの街に古くから伝わる神社、九頭龍神社の人がやって来て私たち一人一人の頭をワシャワシャした棒で擦ります。
そしてお神酒をほんの少し飲みまして、街に出ます。
ところで、このお酒美味しいですね♪
「おい、行くぞ副会長」
「すみません会長」
この会長、私たち役員を役職名で呼ぶのです。
文武両道、容姿端麗、運動神経抜群。
同性として、羨ましくなります。
もちろん私も会長も女です。
と言うか、庶務以外全員女で庶務君はいつも肩身の狭い思いをしているようです。
ーーーーーー
『トリックオアトリート!』
あちらこちらで響く子供たちの声。
その子達を見る会長の微笑み。
丸でお母さんのようです。
「会長、ツンツンして厳しそうに見えて、実は可愛い乙女ですよね」
「うるさいぞ、副会長。
後輩に聞こえたらどうするんだ?」
否定はしないんですね。
「ところで副会長。
あそこの子供、透き通ってないか?」
へ?
「なにいってるんですか、会長。
そんなことあるはずないじゃないですか」
会長が男の子を指差しな変なことを聞いてきます。
「おい、庶務君!」
「は、はい!
何かご用でしょうか?
ゴキブリですか?
備品壊しましたか?
まさか水道がおかしくなりました?
さすがに水道は直すまでに一日はかかりますよ?」
今の発言で庶務君はどれだけこき使われているのかよくわかる。
「いや、今回は違うぞ?
あそこに、透き通った子供がいないか?」
「え?うわっ!」
庶務君まで男の子を見て悲鳴をあげる。
「庶務君までどうしたんですか?
子供を見て悲鳴をあげて。
かわいそうでしょう」
男の子に近づいて左手を差し出す。
「あそこのお姉ちゃん達がゴメンね。
お姉さんと一緒に回ろうか?」
男の子が頷いて手を差し出してくる。
「副会長、凄いですね」
「そうだな。
ああいう物怖じしない性格はとてもすごいと思うぞ」
会長と庶務君は何を話しているのでしょうか?
まあいいです。
ーーーーーー
「ところで、お菓子は貰わないの?」
男の子はどの家を回ってもお菓子を貰わないのです。
「ちょっと待っててね」
近くの家の人に話をしてお菓子を貰います。
それを男の子に差し出します。
「ありがと……」
小さくて聞き取りにくく、でも、確りお礼を言ってから受けとる男の子。
ーーーーーー
しばらく歩き回ります。
「さて、副会長。
ここで最後の家だ」
「はい」
最後の家が終わると皆で町の体育館で集まって解散する予定です。
最後の家に子供が集まって声を揃えて言います。
『トリック・オア・トリート!!』
家の人がドアを開けます。
すると、男の子が手を離して走っていきます。
家の人の横を通り抜けると、男の子が一度振り替えってこちらに手を振ります。
それに手を振り返します。
「さて、副会長。
何故あの子を家に帰したのか?
このあと体育館に集合じゃないか」
「それなのですが、最初から子供の人数が一人多かったのです」
「よく数えていたな。
20人はいただろう」
「それなのに一人多かった。
この事から……」
「この事から?」
「私はあの子は迷子のなのだと判断しました。
そしてこの家があの子の家。
だからこの家の人は男の子が家に入っても気にしなかったのでしょう」
どうでしょうか、私の名推理。
「まあいい。
さて、体育館に行こうか」
この家から体育館まではほんの数分。
わいわい騒ぐ子供を見ながら道を歩きます。
ーーーーーー
「会長。
副会長って頭がいいけど少しぬけてますね」
失礼な、庶務君。
「なんだ?
知らなかったのか?」
会長まで!
時刻は夜9時。
ハロウィンもあと数時間。
「来年はお前が会長になるな。
頑張りたまえ」
「会長が留年すればいいんですよ」
そんな雑談をしながら夜の道を歩く。
Fin.
トリック・オア・トリート!!
皆さんはハロウィンはどう過ごしますか?
彼氏彼女と過ごす?
爆発してしまえ。
姫都は普通に学校と部活です。
休みにならないでしょうか?