第3星「少年の目覚め」
少年は不安に陥っていたーーーー。
ふと目が覚めれば見慣れない空間。
体の至るところにある傷の痛み。
隣に目を向ければ見ず知らずの少女が眠っている。
無意識に思った。
この少女は『敵』なのか『味方』なのか…。
そして『名前しか分からない自分自身』に…。
「う、、、うぅーーん」
少女が目が覚めたのか、小さなうなり声を発したとたん、少年は体を強張らせる。
額から不安の冷や汗が伝い、少年の心は恐怖に包まれた。
楓は目を覚まし、眠っていた少年に目を向けると、とても怯えた表情をして此方を見ていた。
「あ!良かった!目が覚めたんだね!」
あまりに嬉しくて声をあげてしまった。
「こ、、、来ないでっ!!」
突然の拒絶に楓は目を見張ると、直ぐに状況を把握した。
「あ。ごめんね?突然声を上げちゃって。でも怖がらないで!私は君の『味方』だよ!」
今にも恐怖で壊れてしまいそうな少年の手を己の手のひらで優しく包んだ。
「君。海岸の波打ち際で倒れてて、身体中もスゴい傷だらけで、おまけに高熱だったんだよ。でも目が覚めたみたいで良かった。」
楓のふわりとした微笑みと言葉に、少年は心の底から安堵した。
「私は楓。君は?」
「、、、、、、シェアト。」
ぼそりと呟く。
「え?」
「ぼ、、僕はシェアトだよ。」
今度ははっきりと。
「シェアト君か。宜しくね。お家は何処?」
ただ聞いただけだった。
だがシェアトは顔色が真っ青になっていく。
「何も思い出せないんだ…。自分の名前以外、何もかも。僕は一体誰なんだ?」
「え?」
記憶喪失。
そうとしか考えられない。
楓は不安の中にいるシェアトに語りかけるように励ました。
「大丈夫…。きっと何かヒントを得ていけば記憶が戻るかもしれない。じゃあ次は私の番だね。私の家族は今仕事と遊んでて居ないんだけど、お父さんとお母さんと、弟の勇樹の四人家族なんだ!皆優しいから安心してね。」
シェアトはただただ嬉しかった。
「うん。宜しくね。楓ちゃん。」