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  作者: 多那珂Robinson
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2

 事の発端を詳しく書きすぎた。

 僕にはもう時間がない。要点をかいつまんで書くことにする。



 それから、僕たちは最上階で一夜を過ごした。運良く女は近寄らなかった。あとから分かったことだが、女は夜に活動することができないらしい。移動中に女が死んだように倒れているのを見たのだった。それからは、僕らの拠点の移動は夜になった。


 2日目。

 僕らは拠点の移動をはじめた。

 仲間は僕を含めて6人。男子も女子もいる。

 トイレは必ず3人で、2人が入り口に立ち見張ってる間に1人が用を足すルールを決めた。


 廊下は死体の山。昨日でほとんどが死んだようだった。むせ返る血の臭いの中、僕らは下の階へと進んでいった。

 移動の途中、保健室の前に女がいた。女が保健室に入った後、中から悲鳴が聞こえた。僕らには助けることはできない。保健室から投げ出さられたのは女子生徒だった。その上に馬乗りになり首元を食いちぎる女の様子を見てしまった。

 あまりの残酷さに吐き気を抑えられなかった。

 女が夢中になっている間に、僕らは文化部の部室へ辿り着いた。僕らの中に文化部の部員がいたからである。部室には食べ物が残っていたはず、と言うので食料調達のためにもそこへ向かった。

 が、それは失敗だった。

 保健室を見て僕らは学ぶべきだった。

 逃げ場のない部屋に息を潜めて隠れていても、見つかって殺されるだけだと。

 部室は廊下の突き当りにあり、逃げ場はない。見つかれば殺されるしかない。

 僕は激しく後悔した。

 そこに、足音が近づいてきた。

 僕らは部室に隠れるしかなかった。

 震えながら神に祈るしかなかった。

 足音が止まった。

 僕の息も止まった。

 扉が開く音がした。

 ギュッと目をつむった。





「おい、君たち生きてたのか……」

 目を開くとそこには担任が立っていた。

 ホッとした。大人がいると心強い。

 仲間の間にも安堵の声がもれた。



 ―ここで僕の目が覚めた。

 目の前には先生。

「居眠りするな!」

 僕は謝るしかなかった。

「えーっと、ここで今日から教育実習をする先生を紹介します。先生、どうぞ」

 僕の呼吸が止まった。

「今日から、お世話になります。教育実習生の南です。よろしくお願いします」

 そこにいたのは、夢の中で僕らを食い殺した女だった。

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