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事の発端を詳しく書きすぎた。
僕にはもう時間がない。要点をかいつまんで書くことにする。
それから、僕たちは最上階で一夜を過ごした。運良く女は近寄らなかった。あとから分かったことだが、女は夜に活動することができないらしい。移動中に女が死んだように倒れているのを見たのだった。それからは、僕らの拠点の移動は夜になった。
2日目。
僕らは拠点の移動をはじめた。
仲間は僕を含めて6人。男子も女子もいる。
トイレは必ず3人で、2人が入り口に立ち見張ってる間に1人が用を足すルールを決めた。
廊下は死体の山。昨日でほとんどが死んだようだった。むせ返る血の臭いの中、僕らは下の階へと進んでいった。
移動の途中、保健室の前に女がいた。女が保健室に入った後、中から悲鳴が聞こえた。僕らには助けることはできない。保健室から投げ出さられたのは女子生徒だった。その上に馬乗りになり首元を食いちぎる女の様子を見てしまった。
あまりの残酷さに吐き気を抑えられなかった。
女が夢中になっている間に、僕らは文化部の部室へ辿り着いた。僕らの中に文化部の部員がいたからである。部室には食べ物が残っていたはず、と言うので食料調達のためにもそこへ向かった。
が、それは失敗だった。
保健室を見て僕らは学ぶべきだった。
逃げ場のない部屋に息を潜めて隠れていても、見つかって殺されるだけだと。
部室は廊下の突き当りにあり、逃げ場はない。見つかれば殺されるしかない。
僕は激しく後悔した。
そこに、足音が近づいてきた。
僕らは部室に隠れるしかなかった。
震えながら神に祈るしかなかった。
足音が止まった。
僕の息も止まった。
扉が開く音がした。
ギュッと目をつむった。
「おい、君たち生きてたのか……」
目を開くとそこには担任が立っていた。
ホッとした。大人がいると心強い。
仲間の間にも安堵の声がもれた。
―ここで僕の目が覚めた。
目の前には先生。
「居眠りするな!」
僕は謝るしかなかった。
「えーっと、ここで今日から教育実習をする先生を紹介します。先生、どうぞ」
僕の呼吸が止まった。
「今日から、お世話になります。教育実習生の南です。よろしくお願いします」
そこにいたのは、夢の中で僕らを食い殺した女だった。