どうして、オレの右手に〇〇〇?
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皆は信じられるだろうか……。
突然、異世界に転生され。幼女にギルドに登録しろと命令され。
いざ、行ってみると、試験に合格しないと登録できないとその場で言われ。
しかも、その試験内容がギルドマスターと戦えだなんて――どうかしてるよっ!
「さあ、コッチに来い」
ギルドマスターのおっさんに、手招きするように呼ばれ。
俺は仕方なく、ギルマスの後ろを追った。
嫌だあ、生きたくないっ! それが本心だった。第一に、何故、異世界に転生して早速ギルマスと戦うハメになってんだ? 急展開過ぎるだろ!
ギルマスの後を追っていると、奥の部屋に入り、長い廊下を渡る。
そして、更に一つの部屋に出た。否――部屋と言うより、闘技場だった。
建物の中なのに、地は砂や雑草で構築されている。
デカイドーム状の広場で、観客席ももれなく準備してある。
「位置に付け!」
試験の審判のような人がそう言った。
位置って、どこだよ。
俺は適当にギルマスから距離を取った。あの人、怖い。
「まあまあ、そう焦るなってー」
「元はと言えば、オマエの情報不足だろーがっ!」
「へ? 私は元々知ってたのよさ!」
「尚更、悪いじゃねーかっ!」
コイツの情報伝達ミスでこうなったんだ。
そうだ、責任だ。責任を払ってもらおう。
俺は、グイッとセシリアの首根っこを掴んだ。
そして、そのままオレの前に置いた――盾のように。
「な、何するのさっ?」
「ん? 盾の勇者って知ってるか? 否、オマエは神様か」
「なあああああああッッ! 私を盾にするつもりかっ?」
にししと笑って、「もちろん」と返事をする。
こんなガキでも、盾ぐらいには使える。その隙に俺の番だ。
そんな、オレのゲスい考えが光っていた。
「では――はじめっ!」
審判のかけ声と同時に、ギルマスがコチラに急接近し、距離を詰めてくる。
そして、背中の大剣の柄を握り――
「うおおおりゃあああああ!!」
ブンッと風を斬りながら、ギルマスが振り抜いた大剣の攻撃は――空振りだった。
「おっとっ! 危なっ! 危うく、死ぬところだったぞ!」
「問答無用!」
一発目の回避後の隙を狙い、再び距離を詰める、ギルマス。
流石だ、攻撃に隙がない。
俺は、そう思いつつ――避けて避けて、逃げまくった。
「まてえええぇぇぇぇぇ!!」
「待てと言って、待つ奴がいるわけねーだろ!」
縦、横、斜め、一閃。様々な軌道を描く刃が、オレに襲いかかる。
俺は尻尾撒いて、避けるしかできなかった。
いや、今も逃げている。次々とギリギリなラインで攻撃をかわしていると――
「避けるだけじゃあ、話しにならんっ!」
「おじさんもね――ッ!」
「――――何!? グハッ!」
ギルマスが口から、おう吐物をリバースした。
なぜなら、ギルマスに腹部に――セシリアの裏券が入っているのだ。
「うおおっ! アチョー!」
「おい、どこの拳法映画だ」
流石、神様。戦闘訓練は日ごろから、行っておると視た。
オレはセシリアに優しく、
「よくやったな、セシリア。本当、オマエすごいな」
すると、セシリアは苦い表情を見せ、
「――え、今更なんですか? ちょ、キモいんで、本当、そういうのやめてください」
わかった、一瞬でオマエをいい奴と勘違いした、オレが悪い。
だから――頼むから、オレを軽蔑するような眼で見ないでくれ、トラウマになりそ。
「クッ……なるほど……貴様、なかなかやるようじゃのう」
ギルマスが腹を押さえながら、言った。
もちろん、オレではなく、セシリアに対して。
「フッ……私を誰だと思ってるのさ! セシリアさんのすーぱー格闘術を披露してやるのよさっ!」
そう言って、セシリアはギルマスの懐に突っ込んだ。
ノーモーションの動きだし、無駄のない、完璧な動きだった。
流石のギルマスでも、不意を突かれたらしい。だが、
「ふんっ、ワシも甘くないわっ!」
大剣を振り、セシリアを薙ぎ払おうとした。
しかし、そこにセシリアの姿はなかった。
気付いた時には、既に遅かった。
セシリアは――背後に姿を現した。
「どこ見てるのさっ!」
「な――――!?」
そのまま回転蹴りをギルマスの頬に浴びせ、吹き飛ばす。
綺麗に着地し、「えっへん!」と、ない胸で胸を張った――ない胸で。
「クソッ……銀髪めぇ……グッ」
相当、痛そうだった。喋る事すら、困難の状態にギルマスは陥っていた。
これには、流石の観客達も、どよめきだした……って、オマエら居たんだ。
「フッフッフッ、貴様の実力は確かなモノだ、銀髪。それは認めよう。だが――」
そう言って、ギルマスのギラギラとした視線は、オレに向けられた。
おい、マジですか。オレ、戦えないんですって。
「コイツは認められんっ!!」
轟音に匹敵する叫びがオレの耳に届いたのと、ギルマスがオレとの距離をゼロまで詰めたのは、ほぼ同時だった。
オレは、悟った。…………オレ、ここで死ぬの?
「死ねええええええええええッッ!!」
「ごっ、ごめんなさいっ!!」
オレは、責めてものの、謝罪として頭を下げた。
気のせいだろうか――今、オレの頭の上を神速の風が横切った、感じがした。
「な――――!? キッ、サマアアアアアアアッッ!」
ギルマスの怒号が聞こえた、ダメ、もう怖い!
オレは、つい、転生前のクセで――スライディング土下座を行った。
完璧なフォーム、無駄のない動き、綺麗な形、擦りつける額。
気のせいだろうか――オレの頭が何者かの足に当たり、その何者かが倒れたのは……。
「グハァッ! クッ……少々、侮りすぎた……か」
と、声がピタリと止んだ。
ん? 何が起こった!?
オレは、咄嗟に立ち上がり、辺りを見回す。
視界で捉えたのは、眼を輝かせているセシリア。
呆然と、オレを見ている審判と、観客。
そして、ピンクのパンツを露わにし、地に倒れているギルマスの姿。
――と、オレの右手には、大きなシワシワのズボン。