4.エクソシスト、暴力シスターを仲間にする
今更だけど、私たちを異世界に誘拐した国の国名は『はじまりの国』。
今から目指すのは、『はじまりの村』にある『はじまりの教会』です。
大荷物を故意に減らしたので、移動がかなり楽になったのだ。
移動中、魔物が出るかもしれないと警戒したのだが、徒労に終わって良い日になった。
どうやら、こちらが持っていた大荷物を魔物の方が警戒してしまったようだ。アレは、かなり戦意喪失させるようなものです。魔王によって、私たちを殺す命を受けている魔物たちが警戒してしまうのも無理ないことかもしれない。あの時、魔物たちが大荷物を前にして逃げ出すのを見て羨ましくなった私はきっと悪くない。絶対に悪くない!本当に悪くない!
森を通り抜けると、歴史を感じさせる教会が見えてきた。
教会の扉を開けると、シスターが神父様を蹴り飛ばして殴っていたのだ。
「なにすんじゃ、このクソ神父!人にセクハラしやがって!」
お腹を容赦なく蹴りつけている。
お腹って蹴られると、以外と痛いんですよね。
その後は、頭が禿げかけている神父様に容赦なくバリカンで残り少ない髪の毛を嬉々として剃っていた。
神父様は残り少ない髪の毛がなくなっていることに気付くと、
「私の大事な髪の毛が―――!私の命の髪の毛が―――!」
狼狽しうろたえていた。
やはり、シスターは容赦する気がないようで本気で殴り神父様を気絶させた。
「チッ、煩いクソジジイが!」
ちなみに、神父様はおじいさんではない。若い(?)お兄さんだ。
そこに、『はじまりの教会』の神官長が現れた。
「なにをしているのですか?シスター・ミリアリア」
「セクハラ神父に正義の鉄槌を食らわせていました」
「また、ですか」
遠い目をしながら、こめかみを揉んで神官長が言った。そして、私たちに気が付いた。
「お恥ずかしいところをお見せして申し訳ありません。ところで、あなた方のご用件は?」
なので、私は答えた。
「異世界より誘拐、じゃなかった召喚された者です」
「噂の異世界から誘拐された方ですか。それで、こちらに寄られました理由は?」
「国から旅の案内人をつけられたのですが、予想以上に使えませんでしたので放置してきました。なので、こちらでご紹介いただければと」
「国からの案内人って、貴族の坊ちゃんだろ?使えないのが当たり前じゃん。それにしても、森には強い魔物がいるのにあんたたちだけでよくこれたね」
「シスター・ミリアリア。口が悪いですよ」
「元の世界で、神様に依頼されて仕事をしています」
「「神の御使い様―――!?」」
「どうしましょう、シスター・ミリアリア。この世界の神はとうとうやってしまわれました」
「私に言っても知らないよ。神の御使い様は召喚してはいけないルールじゃなかったのかい」
「ええ、そうです。世界の秩序を守るのに必要な方ですから。この世界に召喚してはいけない決まりになっているのです」
「あのー、この世界の神様に会話を聞かれない部屋ってありますか?」
「ええ、もちろんあります。それでは、『沈黙の間』に移動しましょうか。例え神様での人の話に割って入ることは許されないですからね。なので、こういう部屋があるのです」
『沈黙の間』に移動した。
ティータイムを楽しむ用に作られた広間のようだ。
私たちは、椅子に座った。
「ところで、ここまで移動して話す内容なのでしょうか?」
「勘違いしているようですので。私は、上司を通して神様から異世界召喚に巻込まれるよう言われたのです」
「じゃあ、エミリーは私の誘拐に敢えて巻込まれたのね?」
「はい、そうです。上司が言うには、神様が『新しい神を派遣するので、この世界の神を使い物にならなくしてもかまわない』と言っていたそうです」
「じゃあ、魔王様同様、調教してもいいのよね?」
「もちろんです。まりあさんに調教されるか神様の法によって処罰されるかの違いです」
「神としての尊厳はないかもしれないけれど、犬としての犬権は与えてあげるわ」
「優しいですね」
まりあさんの優しさに少し感動した。
あの、無茶ブリ法王様も見習って欲しいものだ。
「いぬけん...?じゃあ、神の御使い様は私たちのミスで誘拐されたわけじゃないのかい?」
「そうなりますね」
「安心しましたね、神官長」
「ええ。もう少しで胃薬を常備しそうになりました」
神官長は、安心したようにお茶を飲み始めた。
「ところで、シスター・ミリアリア。あなたが、旅に同行しなさい。かつて冒険者だったあなたが、聖女様と神の御使い様の旅に同行するなら私も安心できます」
「私がいないと番犬がいないじゃない」
「それなら大丈夫です。私だって、まだまだ現役ですよ。いざとなれば、禿げ神父を囮にみなで逃げます」
「禿げ神父は、セクハラ魔だけに耐久性があるからね」
「それに、ここの神官たちはみな戦えます。あなたが、魔物たちを殲滅する旅に出る間くらい楽勝ですよ。行ってきなさい」
「分かった、神官長。行ってくる」
「怪我をなるべくしないように、教会に帰ってきてくださいね」
「もちろんだよ。改めて自己紹介しないとね。あたしは、ミリアリア。ミリアって呼んで」
「エミリーです」
「まりあよ」
「で、あんたたちは闘えるのかい?」
「元の世界の職業上、必須です」
「私?調教ぐらいしかできないわ」
「戦えるかはともかく、まりあさん攻撃力はありますよ」
「じゃあ、あんたたちにが捨てた馬鹿貴族よりましだね」
「アレと一緒にされたくありません」
「きゃあぁぁ―――!?ナニコレ―――!?」
床に這いつくばって、まりあさんの太ももを撫でて頬を染めている禿げ神父様がいた。
私とミリアさんは、思わず禿げ神父様を思い切り容赦なく踏み潰した。
まりあさんは、
「ちょっと、この部屋から出てくれる?この禿げの性格を去勢させなきゃいけないの。ここって、神聖な教会で女性の信徒もいるでしょ。これ以上、女性にセクハラさせないようにしなきゃ」
数時間後___
晴れやかな表情のまりあさんと犬のように従順になった禿げ神父様がいた。
「神官長、禿げ神父をセクハラできないような体にしたわ」
「聖女様...!本当に、本当にありがとうございます。さすがは、聖女様ですね。聖女様のお力なのですね」
神官長が涙を浮かべて感動している姿を見て、私とまりあさんは視線を逸らさずにいられなかった。
そこまでいいものじゃないから!強制的に性格を捻じ曲げただけだから!
私とまりあさんは、ミリアさんと拳を交えて戦闘能力を確認しあって、『はじまりの教会』を後にした。




