僕
僕は死んだ。
その死に方はあまりにも無残なものだった。事故で死んだのではなく、誰かに殺されたわけでもない。
そう。僕は自殺した。その理由は簡単だった。クラスメイトから受けるいじめだ。
僕は僕自身の人生を恨んだ。なんで僕はこんなにもいじめられるんだろう?僕は誰にも必要とされていないんだろう?
そんな思いが僕の頭を埋め尽くした。僕は人生に飽き、その身を地へと葬り去った。
現実世界に残してきた両親や友達、そして僕の唯一の存在であった妹を残して僕は死んだ。
残された人達の悲しみなんて考えもしなかった。僕は僕のお葬式を見た。そこには悲しみに沈む両親や友達、現実を受け入れられずにいる妹の姿があった。救いの手はあった。僕が死なずに済んだ方法はあった。僕が手を伸ばせば届く距離にあった。でも僕は、それを払いのけた。
どうせまた同じ事が起こる。それが怖くて僕は救いの手を払いのけ、自殺を選んだ。
僕は天国に行くのか、あるいは地獄に行くのか。そもそもそんなのが存在しているとは限らない。僕はそんなことを思いなが僕は死んだ。
「・・・・ん?」
僕は目が覚めた。周りには何も無かった。
「そうか。やっぱり僕は死んだんだね。周りには何も無いし」
そう。ここはやっぱり天国なんだろう。
「ああ、また一人増えちゃったよー。どうするの兄ちゃん?」
「もっと丁重にお出迎えしなさい。失礼しました。うちの弟が失礼なこと言ってしまって」
白を基調とした衣装を身に纏っている二人の兄弟が僕の目の前に姿を現した。
「あ、あのう?貴方たちは一体・・?」
「すいません。申し遅れました。私はジル。私はここでお亡くなりになられた方が天の塔へ行くための案内をしております。こちらは弟のリトです。私と一緒に案内をしております」
ジルとリト。二人も多分死んだ後にこの世界にやってきてここで働いているのだろう。
「僕の名前は・・・・です!あれ?!声が出ない・・!」
自分の名前を言う。その能力が僕の中から無くなっていた。
「自分の名前を言えないのは当然だよ。だって死んじゃったんだもん。死んじゃった人にはもう名前も名字もないからね」
「そ、そうなんですか・・・」
僕はもう、僕という名前でここで生活していくんだ。そう思った僕は少し暗い気持ちになった。
「でも心配しないで!この世界では自由に自分で名前を決められるんだよ!この世界は自由なんだよ!」
「そう。自分で何もかも決める。それがこの世界の唯一のルールです。さぁ、自分の名前は?」
「僕の名前は・・・・和人で・・す」
僕は和人という名前に憧れていた。僕が尊敬する兄さんの名前が和人だった。ただそれだけの理由だったのに、僕は和人という名前に憧れていた。
「和人くんだね。今日から君の名前は和人だ」
ジルは和人に優しく微笑んでくれた。
「じゃあ和人くん。さっそくで悪いんだが・・・」
先程とは裏腹に冷酷な顔をして、和人にこう言った。
「君には、天の塔を上る資格はない」