◇9話◇出会い
☆☆☆
目覚めたヒラリスは、肩傷の痛みに顔をしかめた。
いや……有り得ないだろう?
その考えに、ヒラリスの貌が引き攣る。
確かめる様に、そっと躯を起こして、静かに腕を回してみる。
痛みの割には、そう酷い怪我でもナイ様で……つまりは更に異常だと云う事だ。
前夜の状態を思えば、有り得ないくらい回復していた。
多分、姫の夢を見たのだろうか?
切ないくらい姫君が慕わしい。そんな気分になった。
いつになく、鮮やかな程の…碧と金赤の眸が焼き付いた記憶の如く蘇ったが、ヒラリスは首を傾げた。
脳裏に浮かぶ美しい幻は、昨日迄よりも鮮やかで、奇妙な程に熱い思慕に駆られた。
いや、勿論…自分は姫に恋い焦がれているとも。と、ヒラリスは頭を振った。
だが、自らに云い聞かせるように恋心を育てたソレと、今の状態が重なる訳もナイ。
魔法……か。
独り言ちる。
顕著な体調の快復を思えば…やはり魔法の力を否定出来ない。
ソノ術を施した人間が、何らかの魔法をヒラリスに残したのかも知れない。
と、すれば…姫を自分に救わせようとする立場な筈だから………
味方…なのか?
勿論。
断定は出来ない。
クルトに仇なす者も、ヒラリスが恋狂いなのは悪い話ではナイ筈だからだ。
だが、敵に近いとしても……すぐには死なせたくナイのは確かだ。
傷はかなり深かった。死ぬかも知れない、とさえ思った。
少なくとも、アレを今の状態まで回復させるのは、自国クルトでは神に縋る事でしか叶わナイ。
西国の、そしてクルトの、魔法の遅れと受け止めるか。
東国の、魔法の特化と見るべきか。
ここ迄の力だと、先ず平民とも思えないが…と、ヒラリスは考える。
東国で?
トウゼ王に翻意する者が居るだろうか?
無理が有る。
奇跡に近い回復とは云え、未だ完全ではない自分の体調を確認する。
余程親しい者でないと知らない事実だが、左手で剣を遣う彼は、痛む肩が右である事を感謝した。
幼少の折から、右も同じ様に使える様に鍛えてはいるが、真剣勝負なら…左が断然有利なのだ。
とは云え、かなりな回復を認めても完全な復調ではナイ。
「取り敢えず、今日は休むか。下手に進んで悪化させたくない。」
冷静に、ヒラリスは断じた。
勇ましさと無謀は違う。痛みに対する我慢も、この場合は無駄だ。
寧ろ、正しく我慢強くあるなら、休養の大切さを知り、焦りを耐える事だろう。
先に進みたいのは山々だが、大切なのは姫君を救い出す事であり、怪我をおして勇ましく進む事ではない。
魔王と戦う時には、万全の態勢を整えたい。
その為に、東の森の手前でも、休息を考えていた。
魔王に勝てるかどうかなど判らないが、姫君を逃す事さえ出来れば、少々痛め付けられるくらい大した問題ではない。
勿論、「戦うのなら」負ける気は無いが、敵が強大な事をヒラリスは知っている。
ましてや、その敵に出逢う以前に、その辺の盗賊等に殺されるのはゴメンだった。
「莫迦じゃないからね。」
自らに云い聞かせる様に、ヒラリスは呟いた。本当は今にも飛び出したい様な気持ちを宥める為だった。
今日のヒラリスは、やたらと姫君に思慕が募って、気持ちが焦るばかりだった。
左は赫と金。右は蒼と碧。煌めく黎明の月。その美貌………そこ迄想起して、ヒラリスは首を傾げた。
「何かが違う……様な?」
道に迷ったような、奇妙な感覚が心を掠める。
まさか本当に魔法なのか?
いや、やはり焦っている所為だろうか?…そうヒラリスは自得して頭を振る。
洞窟は存外居心地が良い。洞窟にしては……の注釈付きでは有るが。休むと決めても灯火を無駄に使う気にもならず、愛馬の様子も気になった。
食事の必要性も強く感じ乍ら、獲物を狩る体力は大丈夫だろうかと自問する。
表に出ようとしたヒラリスだが、出口に至る前に足を止めた。
まるでサンルームの様に、吹き抜けになった小さな空間が中庭の様相を呈していた。
小さな…とは大国の皇太子の主観だから、通常の民ならば「宮殿の奧庭の様な別世界だ!」と想像を逞しくするかも知れない。
果実を実らせた木々に、柔らかい芝生。温泉迄有る。
「お前も……無事………と云うか。元気そうだね?」
緑の向こうに愛馬の姿にヒラリスは安堵して、その場所の観察を続けた。
茂み…いや、生け垣の向こうから、愛馬が嬉し気に寄って来て……ヒラリスは昨夜は放置した筈の馬が、清潔で艶やかな毛並みをしている事に小さな驚きを覚えた。
――…やはり、誰か居るのか?
優しく馬の首を叩き乍ら、そう考えたのだが。
それ以前に「此の場所」が「不思議」を抱えていたので、ヒラリスは治癒を施した存在と、愛馬の様子を結び付けるのを保留する事になった。
顕著な人工の痕跡を見出だし、長く手入れはされていない様だが、この洞窟が単なる自然とは異なると強く感じた。
「盗賊でも住まいしていたかと思ったけど……。」
迷い込んだ時は熱の所為と、夜の闇に気付かなかったが、聖なる結界が編まれた石が、自然を装う小路を作っていた。
「いや…無理が有るから。」
王宮の中庭同様に、こんな場所に自然の道など有り得ない。
不自然極まりない「自然」に、ヒラリスは苦笑した。
誰か、身分有る人の隠れ家ででもあったのかも知れない。そうヒラリスは考えた。
少し動いただけで、熱が上がり目眩がした。
明かり取りの役目を果たす洞窟の吹き抜けを見上げると、採光は晴れ間そのもので……太陽の温もりを肌が感知するにも拘らず、どうやら外は雨の様だった。
雨は洞窟に落ちる前に掻き消える。
本当に消える訳ではなく、「自然」を模した小さな水呑場に苔を飾る石の狭間から「自然」に流れ出る水流に紛れているらしい。
「………中々芸が細かい。」
この「庭」を編んだのは、かなりの庭師と術師の様だった。
このまま神殿に続いても奇異ではナイくらいの、高度な術を見つけてヒラリスは熱の所為で定まらない思考を重ねようとして……断念した。
東の森の近隣で、神々を迎えても大丈夫な場所?トウゼ王が関知しない場所だ等と云えるだろうか?
だが、長期に渡り、放置された場所には違いないし、悪意有る者は入り込めない聖なる結界も有るし……。
何より、所詮は坊ちゃん育ちのヒラリスは、ここ数日の旅路で……安全に休息出来る場所に飢えていた。
何か食べないと……そう思った傍から野兎が姿を現したのを発見するに至り………、深く考えるのは止めたヒラリスである。
魔法。
も。
自分に懸けられた、何等かの魔法も、治癒だけかも知れないし、そうでナイかも知れないが……此の場所で享けたからには、そう悪いモノではナイだろう。
そう云う訳で、ヒラリスは暫時の休息を自分に許す事にしたのだ。
◇◇◇
それでも、その日から続いた視線が、気にならない訳ではナイ。
いや。
認めるのは釈だが……、多分もっと以前から。
と、なれば自分を治癒した魔法を連想もする。
たまたま多少はマシになったから隙が減じて近寄れないだけで、もしかしたら……あれからも治癒を施してくれる気が有ったのかも知れない。
3日を経て、体調は思わしく無かった。
傷は再度痛みを増し、熱も上がって下がる気配もナイ。些細とは云い難い悪化は、最近の疲労が一気に出たとも云えるだろう。
非常に釈だが……と、ヒラリスは考える。
痛みを耐え、熱がまた高くなったのを自覚し乍ら、このまま再度倒れるよりも……とヒラリスは考える。
助力を頼む方が、より恥は少ないと見るべきだろう。
せめて。
未だ虚勢を張る気力が有る内に……と。
そう考えて。
その日は朝から機会を窺っていた。
昨日と。一昨日と。
ヒラリスは変わらず洞窟の中での日常を過ごした。けれど、その気配を完全に忘れる事はナイ。
相変わらず、馬は放置しても誰かが世話をしているかの様に清潔を保っていた。
この場所なら、飼葉の心配も要らず、ヒラリスは愛馬に対する義務も、此処では殆ど気にせずに居られた。
それでも愛馬を見れば心が和む。草を喰む姿を視線の先に映しつつ、ヒラリスは自らの食事の為に火を焚いた。
肉の焼けるのを待ち乍ら、ヒラリスは地図を広げる。
本来の旅程ならば、この道でも、後5日も有れば行き着く距離だったが、まだまだ敵は多い。
「三弥山にも後2つ。赤鬼党と馬黄炎を名乗る山賊には、どうしても遭遇せざるを得ないか。弥塚の方角なら大きな所帯は無いが、小物が50?……うわぁ面倒くさっ。」
冒険用の地図は危険の印を指し示す。
ヒラリスの地図は高価なだけあってリアルタイムに更新された。
「………?」
どうやら此の辺りにはヒラリス以外にも冒険をする「者」なり賞金稼ぎでも存在するのか、先日地図を開いた時に比べ……明らかに「悪人」が減っていた。
「賞金稼ぎ?まさかな。」
それは滅多に遭遇しない「冒険をする王族」より、尚…珍しい存在だった。
賞金稼ぎは神々の従僕だと云われる。
「神の代行者」を賞金稼ぎと呼ばわるのは不敬と云う者も居るが、……彼等は自らそう名乗る事も有るらしいから、微妙な問題だった。
――まさか例の治癒者だったりしないかな?
ヒラリスは考えたが、それこそマサカだよな……と自ら否定した。
賞金稼ぎに魔法力を持つ者が居ない訳では無いだろうが、彼等は「賞金首」を倒すのに、相手の能力に準じる獲物を使用する……と云う掟が有る。
武器の種類迄は問われないが、武器を使う者に魔法の使用を赦されない。
武器を使う者が魔法を使えない場合は多いが、対して、魔法を使う者で武器が使えない者は先ず居ない。絶対とは云わないが、得手不得手は別にして、道具を学べば利用出来る能力を有しない者は、滅多に居ない筈だった。
そして、賞金稼ぎは、その惑星に許可された範囲の、武器の使用しか認められて居ない。
性能はかなり良いらしいが、剣を百本持ち歩くより、半永久的に使用出来る方が良かろう……との理由が主流の性能だと云うから、推して知るべしだろう。
この惑星は科学を棄てている。
実弾を使う銃の存在さえ、王宮の奧に眠る「歴史的な道具」な訳だから………使える武器の主流は、剣や弓だ。
この星で賞金稼ぎをする能力を持つ者なら、それらの武器に精通し、並々ならぬ技量を持たなければならない訳だが………そんな存在が、魔力も域値を超える?
「有り得ないね……。」
ヒラリスは呟いた。
万が一そうなら、伝説級の存在だった。
それこそ、国を挙げて歓迎するくらいの。
そんな噂は聞いて無い。現在、そこ迄の存在がフライサに滞在する根拠は全く無い。
絶対不在だと云う根拠も無いが。
「この手の強い人が、味方になってくれたら助かるんだけどな。」
倒された「悪人」を検索して、倒した「相手」を表示しようとしたが「?」と成った。
たまたま旅人にヤラレたか、「目的完遂」までの非表示の手続きが為された相手か……と、何件か検索をしたが総て「?」だった。
冒険者にしては数が多い。目的を持つ賞金稼ぎ?
「って云うか……今すげえ噂が流れてそうだな。」
ヒラリスは自分が倒した相手を避けて検索したが、一般の人間はそうはイカナイ。
その総てをヒトツの存在が為したと云うなら、それはとんでもない存在だ。
ヒラリスが調べた限りでも、十分とんでもなかった。
「しまったな。西なら何とか捜し当てて味方を頼むんだが……… 」
東国では、噂に過ぎない相手を捜し出せる程のツテを持たないヒラリスだった。
無い物ねだりをしても仕方が無い。
ヒラリスは切り替えて、目下の標的に意識を戻した。
魔王に魔法が効果が有るとは思えないが、それでも大した存在では有るだろう。
その気配も、ヒラリスがかなり気を付けないと判らない。
治癒の後で判別出来る様になったのだから、それさえも、わざとかも知れない。
多少、自尊心を刺激されはしたが、ヒラリスは明るく声を掛けた。
調度、今日の兎が焼き上がったところだった。
「3日も観察すれば充分だろう?出ておいでよ。」
熱をおして、笑顔を浮かべた。
その笑顔は完全な作り物でも無かった。
ヒラリスは自分では王族として最適化していると自覚するが、実際にはそうでもナイ。
王族なら、自分を失う事を注意深く避けるべきだが、ヒラリスは他者に対する事以上に、自己に対する執着に欠けた。
大概の状況に楽しみを見出だし、明るく…軽く、姫に対する心配さえなければ、魔王退治さえ楽しめるだろう。
それで自分が死に至ると可能性さえも、ニッコリ笑って賭の対象にしてしまうのだ。
自尊心は高い。誇りも忘れない。国に対すり義務も忘れたりしない……が、いざとなったら「仕方ないよね?」と棄ててしまえる。
同じく猫被りの東の姫とは、大きく違うのがソコだった。
王子として、口にすべきでは無いから云わないだけで、初めて執着に近い感情を覚えた紫蘭姫を助ける為なら……命を棄てる事になっても、「仕方ない」と思ったし、「悪くない」とも思っていた。
全力を尽くしてダメなら「仕方ない」では無いか?
普通。そんなに簡単に、自然体で、納得したりしない。
ヒラリスも所詮は、神に愛されたモノ独特の……「虚」を抱えていた。
ヒラリスの、ともすれば軽薄な誘いに乗った人物は、焚火の向こうにフワリと着地した。
どうやら木の上から観察されていたと知り、流石に少し驚いたが、そんな事より一層……心に響く画を、ヒラリスは観た。
悪びれずに、歩み寄る姿に目眩を覚えた。
蒼い銀の髪は晴れた空の青も含む。金赤?金が混ざるルビーの輝く赤。赫。紅玉と神庭の桃の木の実を混ぜた様な、冷んやりと……だが強い魅了の魔力を持った左の眸は夜の月の紫に色を変える。顕らかな程に、セリカ王族の色彩。
右の眸だけなら西国の血筋を疑える色で、蒼と青が煌めく、髪と同様に昼の空。
白い肌、銀の光を零す睫毛、冷たい美貌……冷ややかな月の神々に似た美貌…………。
――――姫?
勿論違う。が。
ヒラリスは姫に向かう筈の思慕を一瞬の内に乱されて、苛立ちすら覚えた。
気の迷いにも程が有る、と内心を押し隠す。
気まぐれな猫の様に、気品溢れる生き物が、ヒラリスの横に腰を下ろした。
どんなに粗野に振る舞おうとも、育ちの良さが滲み出る。
そして、その容姿。
「私は砂久弥と云う。旅の同行を願いたい。」
低い声は、季節に例えるならば冬だ。
男の声で、冬の冷然たる厳しさを湛えた声で、自分が蠱惑される訳が無い……筈なのだが。
ヒラリスは砂久弥の魅了の能力が、生来のモノと推察して困惑した。
本人が使う気もナイ「能力」は「魔法」とは見做されず、依って……抗議も出来ないからだ。
紫蘭姫の姿も、その魔力に満ちていたが、もしかして砂久弥のソレは姫より強い。
同行者としては相当嫌なタイプだと云えよう。
命令する事に慣れた者特有の高慢さは有るが、静かな声音で、礼儀正しい問い掛けだった。
ヒラリスに対し、充分な敬意を含んだ態度で有るのも確かだが、淡々とした口調や眼差しは、彼の本心を教える手助けはしない。
表情に欠けた男だとヒラリスは思ったが、不思議と嫌な感じはしない。魅了のチカラも有るだろうが、奇妙な慕わしさを抱かせる……不思議な魅力を感じた。
「うん。で、君はセリカの人かな?」
あっさりと頷いて尋ねたヒラリスを、彼は相変わらずの無表情のまま視つめ、そっと嘆息した。
「そんなに簡単に認めても宜しいのか?私が敵とは思われぬのか、貴方は?」
どうやら呆れている様子だが、それも判然と仕難い口調で有り、表情だった。
砂久弥の真意を読み取る事が可能な人間など居ないだろう。そう思えば、「特別」過ぎる存在に最早楽しくなってきて、ヒラリスは笑いが零れた。体調は厳しいが、自然明るい笑顔が浮かぶ。
「勿体振って何の意味が有るのさ。それで?僕の質問に答えは貰えないのかな?」
柔らかく明るい声に、銀色の冷たい声が応じる。
とんでもない声だ……とヒラリスにして思わせた美声で、彼は静かに言葉を紡ぐ。
「セリカ公家出身。白の塔に所属している。」
「姫君を助けに……ですか?」
頷いて、月の光を纏う美貌が最初の言葉を繰り返した。
「供を許して戴けるか?」
「勿論、宜しいですよ。けれど、白の塔からとは、お早いお付きですね?」
感心して見せたが、当然の事だとヒラリスも知ってはいる。
同様に術を修めた魔王の結界内には降りられずとも、白の塔から一瞬で「此処」に移動して来る事が出来るのだ。
ヒラリスの事情を知っているのも当たり前と云えた。
「失礼ですが、階級は?」
セリカ公家ならば、辛うじてヒラリスと同等に会話が出来る程度だ。
その人物が「塔」に上がる事で、真実同等になる。
だが、それ以前に王室の人間は「塔」に上がる前に公家に降るのが倣いだから、実際は皇家の可能性が有る上に。
砂久弥の泰然たる態度や、物腰を見る限り……更なる地位も予測された。
「白衣と、青の色を許されている。」
案の定だった。
本来ならば、ヒラリスこそが礼を尽くさねばならない立場だった。
数在る塔の中でも最たる位置付けの「白」で、しかも白の位。ヒラリスも流石に退いた。
そんな奴はもっとエラソーにして欲しかった。
ヒラリスはそう思ったが、途端に遜るばかりの態度が取れる程、可愛気を持ち合わせてもいない。
だが大人だから、とヒラリスは自分に云い聞かせ、慇懃な言葉遣いを採択した。
「参りましたね。ではどうか、私に対して先程のような言葉を用いられません様。立場がなくなってしまいます。」
これも相当不遜な台詞だったが、砂久弥は微笑った。
ほんの微かな笑みでは有ったが、まるで月光が振り撒かれたかの様な、玲瓏たる美しさだった。
昼の月の燦然とした輝きではなく、夜の月の…蒼く冷たい美を砂久弥は湛えている。
対する昼間の月にも例えられるのがヒラリスで、二人が並び立つ様は一幅の絵画の様だった。とは云え、二人以外に人影の見えない此処では、その美を観賞する存在は、人ならざるモノでしかない。
☆☆☆