◆神話◆〜誕生〜創世の神
この頁を開いて下さり有り難うございます。
最後迄お読み戴けたら嬉しいです。
女神と、魔王?と、剣と魔法
当たり前に出て来ます。
世界が違うので、違う言葉が有ります。
異世界も、神や魔法使いならば跳べてしまうので、
同じ言葉も有ります。
この話の誤字脱字は雰囲気ぶち壊しなので、かなり気をつけてますが……発見しては修正しております。残ってたら……申し訳ございません。
造語をちりばめているので、え?と思われましょうが、作品内にて殆ど説明が入る筈です。
見逃しが有りましたら、完結後のご指摘を戴けますと有り難く存じます。
少しでもお楽しみ戴けましたら幸いです。
正直、カレラの年齢には触れないで下さい……的な……、登場人物率が高いです。
そもそも人間では……等と云い始めたら、話が進みません。
カレラも恋をします。
しかも、うっかり熱烈なのをしたら国を巻き添えです。
一途に熱烈な恋をする魔王を、どうか見守って下さい。
◇◇◇
リア・リルーラの誕生には諸説ある。
最古の女神と喚ばれ、総ての世界と命を生んだとされ乍ら、14番目の月で生まれたともされる。
17番目の月もまた同様の矛盾を抱える。
原始の初めより存在した唯一の月であるのに、17番目に生まれた月と呼ばれる。
また創世の三柱にも謎は残る。創世の神々は永遠の存在とされるが、その内主月神は代替わりを重ねる。しかも、四代目の主月神こそが創世の神と喚ばれるのだ。
創世にはリア・リルーラ、主月神、そして夜闇の神セルストが坐す三柱と喚ばれる。
◇◇◇
初めに、リア・リルーラが存在した。
そこに混沌を生み。女神は混沌に白き繊手を閃かせた。
女神は最初に、二柱の神を生んだ。
初代主月神と夜闇の主セルスト神である。
女神の誕生を祝う月、白華が生まれたのはこの時だ。
夜闇の神は生まれ落ちると共に、女神に慶賀を述べた。
『無事にお生まれになられた事お慶び申し上げます。我が娘にして、我が母なる女神よ。』
リア・リルーラは頷いた。
『蛇にして林檎。父にして息子。そなたの誕生も、また慶ばしきもの。』
『ならば私は蛇として往きましょう。この混沌を戴けますか?』
セルスト神は二柱が生まれた後の、混沌の残骸を齧った。
セルストが混沌を飲み込むと、それまでは優しい穏やかなばかりだった夜が、恐怖と冷たく昏い闇を生んだ。そこから淫らな性や蠢く化性、熱く燃ゆる憎悪と執念が生まれた。
『すべて喰らったのか!まだ沢山の命をその混沌から生めたのに!』
主月神は闇の身勝手を歎いたが、責めはしなかった。
それは「決まって」いた事でもあったからだ。
そして二柱は世界を、神々を、沢山の命を創造し生み揃えた。
何を創り、何を生めば良いか、二柱は既に承知していた。
二柱は最初に月神達を生んだ。13の柱を生み、20の大神を生んだ。
それらは二柱を扶け、世界の創造を手伝った。
夜闇は永遠だったが主月神は次代を生んだ。
それもまた「決まって」いた事だった。
次代はまた次代を生み。
或る日、4代目主月神と成る、シ・エンが生まれた。
子供の姿で生まれ、しかも子供の精神を持つ主月神など初めてだった。
さざめく神々を他所に、混沌に生まれたとされる、二柱、十三の柱、二十の柱、この始めの神々は当たり前の事とした。
力と知識を持つ始めの神々の静観に、周囲も落ち着きを取り戻す。「そういうもの」なのだと現状は受け入れられた。
シ・エンは14番目の月に宮を置いた。
或る日、夜闇の神々が歌い上げる。女神の到来を。
夜闇の王セルスト神が囁いた。
『女神は傷ついているよ。月水を持って行って差し上げよう。』
リア・リルーラがどうやったら傷を負うと云うのか。
疑問にさえ感じない幼い神だった。
シ・エンは驚き、夜闇の云う通りにした。
果たして、リア・リルーラが顕れた。
もちろん、リア・リルーラに外ならない。
だが、常とは違う姿にシ・エンは目を瞠った。
違う姿の女神に、本来の名を喚びかける訳にはいかない。シ・エンは解答を求めて夜闇を見上げた。
『ああ。違うお姿だねえ。ならば「お姉ちゃん」と呼んでご覧。「怪我をしているね?このお水を飲んで?楽になるから。」そう云って、月水を差し上げるんだ。』
シ・エンはそうした。
月水は少女を壊す。
セルストは笑い、少女の姿を抱きしめた。
そして、少女は声に成らぬ悲鳴を上げた。
肌がひび割れ、裂けた間から濾過に濾過を重ねた純粋な月光が閃光となって吹き出した。
先ずは、その裂けた肌を闇で覆い隠したセルスト神を、刃と化して貫いた。
閃光は沢山の刃から爆発に代わり、総ての世界と命を巻き込んだ。
そして。
リア・リルーラがそこに生まれていた。
リルーラが混沌を生み、二柱を生み、セルストが慶賀を述べる。
いま一柱。リルーラの誕生に手を貸した神は姿を顕さない。
まだ生まれるには早いから仕方が無い事だった。
一瞬の閃光にシ・エンの眸が眩んだが。
少女の姿が、セルストの闇の衣に隠れたのは見て取れた。
そして。
闇のベールが剥がれ、光り輝く肌が覗く。
リア・リルーラが本来の姿で微笑んでいた。
シ・エンは彼女の傍に居たいと感じた。
リア・リルーラの紫月の眸が瞬き、キラキラと光り輝く夢を零した。
14番目の月に置かれた、シ・エンの宮殿は、リルーラの屋敷に姿を変えた。
緑と青と銀の川が、輝く髪から流れる星に成った。
『この女性に相応しい神に成りたい。』
シ・エンが願うと、幼い神は強く濃密な月光に包まれ、次の瞬間には美しい青年の姿をした立派な神が立っていた。
シ・エンはその瞬間に主月神と成った。
そして、4代目主月神は永遠の主月神でもあると、総ての神々が知った。
シ・エンはリア・リルーラに手を差し延べ、リア・リルーラはその手を取った。
以来。
女神の傍らには、常に主月神の姿が寄り添う事となる。
◇◇◇
真に永久の神は創世の三柱。
リア・リルーラと主月神。そして夜闇の神。
主月神に力持ち対抗出来るのは、リア・リルーラを除けば、セルストしか存在しない。
逆もまた然りである。
セルストは常に『枠』の外に存在する。夜闇を創世の神と知らぬ、若き神々がその不遜に憤慨する。
だが、リア・リルーラもシ・エンも、創世の仲間を攻撃する筈も無い。
故に、セルストに対抗する術など、神々の世には無く、まして人間の世では尚更だった。
それは、眩惑の神。悪しきにして善なる神。
美しい夜闇の神セルスト。
混沌より生まれ落ちた誘惑の蛇。
時には正のそれと、総ての負の感情。そして闇の魔物を操る神。
禍々しくも正しく、過ちを推奨するも清らかで、正気と狂気、憎しみと愛、夢と現実、穏やかな眠りと安らぎの夜、狂おしく眠れぬ疑惑の闇。
そんな禍福を行き来して、人々を惑わす幻惑の神々を生んだ混沌であり、彼らを司る王たる神でもあった。
◇◇◇