第八章 世界的規制論争の激化
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第八章 世界的規制論争の激化
世界が「賢者の石」を疑い始めた
SPによる私刑事件が報じられた翌日、
世界中のニュース番組が一斉に論じ始めた。
- 「賢者の石は国家の暴力装置か?」
- 「命の選別を個人が行える危険性」
- 「国家は賢者の石を管理できているのか?」
- 「人間は“神の道具”を扱えるのか?」
これまで賢者の石を絶賛していたメディアでさえ、
論調を変え始めていた。
SNSでは、
賛成派と反対派が激しく対立した。
「賢者の石は必要だ。要人を守るために」
「いや、もう人が死にすぎている」
「対価が必要な時点で倫理的に破綻している」
「でも、誰かの命が救われるなら……」
世界は、
賢者の石を“希望”として語ることをやめ、
“恐怖”として語り始めた。
国連が動いた
国連安全保障理事会は、
緊急会合を招集した。
議題はただ一つ。
「賢者の石の国際規制について」
各国代表は、
それぞれの立場から意見を述べた。
- 「賢者の石は要人警護に不可欠」
- 「対価として命を奪う技術は危険すぎる」
- 「国家間の“命の取引”が始まる可能性がある」
- 「テロ組織が奪取したらどうする?」
- 「死刑囚の命を“資源”として扱うのは許されない」
議論は紛糾し、
結論は出なかった。
しかし、
世界が賢者の石を“規制対象”として扱い始めたのは、
この瞬間だった。
各国で起きた“独自規制”
国連の結論を待たず、
各国は独自に動き始めた。
- A国:賢者の石の使用を要人警護に限定
- B国:対価として使える命を「犯人本人」に限定
- C国:死刑囚の命の使用を禁止
- D国:賢者の石の輸入を一時停止
- E国:国内での所持を軍と政府に限定
世界は、
賢者の石をどう扱うべきかで分裂し始めた。
そして、
その中心にいるのは──
アーク・バイオテックだった。
アーク・バイオテック社内の緊張
政府から届いた分厚い報告書を、
木下浩二が読み上げていた。
「……複数の国が、
賢者の石の輸入停止を検討しています。
“倫理的に危険な技術”という理由で……」
太郎は、
静かに目を閉じた。
木下は続ける。
「社長、これは一時的な混乱です。
賢者の石は人を救う技術です。
規制されるべきは“使い方”であって、
技術そのものではありません」
太郎は、
机の上の賢者の石を見つめた。
淡い光。
美しい輝き。
しかしその光は、
世界中の倫理を揺さぶっていた。
「……浩二。
世界は……
この石を恐れ始めている」
木下は、
太郎の言葉に反論しようとしたが、
言葉を飲み込んだ。
太郎の表情が、
あまりにも苦しげだったからだ。
ニュースは連日、
賢者の石の規制論争を報じ続けた。
- 「賢者の石は人類の未来か、破滅か」
- 「命の価値を国家が決める時代」
- 「技術は倫理を超えてしまったのか」
街では、
賛成派と反対派のデモが衝突し、
暴動寸前の国もあった。
太郎は、
その映像を見つめながら、
胸の奥に深い痛みを感じていた。
(……私は……
世界に何を渡してしまったんだ……?)
その問いは、
もはや胸の中だけでは収まらなかった。
世界は、
賢者の石を“規制すべき危険な技術”として扱い始めた。
そして──
その中心にいる太郎は、
初めて“逃げ場のない責任”を感じていた。
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