第七章 私刑
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第七章 私刑
エドワード大統領の爆死事件から、
世界は賢者の石の“限界”を知り、
不安と混乱の中にあった。
しかし、その混乱は、
思わぬ形で別の歪みを生み始めていた。
SPの家庭に起きた悲劇
ある夜、
SP部門に所属するベテラン隊員・ロバートの自宅に、
暴漢が押し入った。
金品目的の犯行だったが、
ロバートの妻は抵抗し、
暴漢にもみ合いの末、命を落とした。
ロバートは、
勤務を終えて帰宅した瞬間、
妻の亡骸を見つけた。
救急隊が駆けつけたが、
すでに手遅れだった。
ロバートは震える手で、
腰に携帯していた“それ”に触れた。
賢者の石。
本来、
要人警護のためだけに携帯が許されているもの。
私的利用は、
法律で固く禁じられている。
だが──
ロバートの心は、
その禁忌を押しとどめるほど強くはなかった。
(……妻を……助けなきゃ……
助けられる……
俺には……石がある……)
涙で視界が滲む中、
ロバートは石を取り出した。
賢者の石は、
“命の対価”がなければ使えない。。。。
幸運にも、ロバートの妻の命を奪った暴漢は、
逃走中に交通事故を起こし、自ら車に閉じ込められた状態で発見され、即時逮捕された。
ロバートは、現場に駆け付け、
警察官に取り押さえられた暴漢の姿を見つけた。
暴漢は、
不敵に笑っていた。捕まってもすぐに釈放されると。
ロバートは、
その姿を見た瞬間、
胸の奥で何かが切れた。
(……こいつが……
妻を殺した……
なら……
こいつの命で……妻を……)
SPとしての倫理も、
法律も、
訓練も、
すべて吹き飛んだ。
ロバートは、
暴漢に歩み寄り、
石を握りしめた。
周囲の警官が叫ぶ。
「ロバート! やめろ!
それは私的利用だ!」
しかし、
ロバートは聞いていなかった。
石が光り──
暴漢は静かに動かなくなった。
ロバートは、
妻の元へ駆け戻り、
石を胸に押し当てた。
淡い光が広がる。
果たして、
妻は蘇った、、、が。
目は狂気にまみれ、ひたすら叫んでいた。
「痛い!…嫌だ!殺さないで!
助けて…」
ロバートは、
その場に崩れ落ちた。
翌日、
この事件は内部告発によって明るみに出た。
ニュースは連日報じた。
・ 「SPが賢者の石を私的利用」
・ 「復讐目的で暴漢の命を使用」
・ 「賢者の石は国家の道具か、個人の武器か」
・ 「倫理崩壊の始まり」
街では抗議デモが起き、
SNSでは激しい議論が巻き起こった。
世界は、
賢者の石の“危険性”を初めて真正面から見つめ始めた。
ニュースは、
賢者の石の“私刑”を連日報じ続けた。
・ 「国家による命の選別」
・ 「正義の暴走」
・ 「賢者の石の規制を求める声」
・ 「人間は神になれるのか?」
世界は、
賢者の石を“希望”ではなく、
“恐怖”として語り始めた。
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