第四章 神話の崩壊
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第四章 神話の崩壊(エドワード大統領)
その国は、
スミス大統領の蘇生劇を受けて、
世界の中でもいち早く賢者の石を導入した国だった。
大統領の名は──
エドワード・グリーン。
強い指導力と改革姿勢で知られ、
国内外から高い支持を得ていた。
彼は、
「賢者の石は国家の盾となる」
と公言し、
要人警護の中心に据えていた。
その日、エドワード大統領は、
地方都市の視察に訪れていた。
青空の下、
市民との交流イベントが開かれ、
SPたちはいつも通りの警戒態勢を敷いていた。
賢者の石は、
大統領のすぐ近くにいるSPが携帯している。
「万が一があっても蘇生できる」
それは、
この国でも常識になりつつあった。
事件は、
ほんの数秒の出来事だった。
空の彼方から、
小さな黒い影が近づいてくる。
SPの一人が気づいた。
「……ドローンだ!」
警告を発する間もなく、
影は急降下し、
大統領の真上で爆発した。
閃光。
衝撃波。
砂煙。
観客の悲鳴が響く。
SPたちは即座に動いたが──
そこに大統領の姿はなかった。
爆心地には、
衣服の破片と金属片が散らばっているだけ。
「……大統領は……?」
誰かが呟く。
返事はなかった。
賢者の石を携帯していたSPが、
震える声で言った。
「……対象が……いません……
蘇生……不可能です……」
その言葉は、
静かに、しかし確実に、
世界の“神話”を崩壊させた。
ニュースは、
事件から数分で世界中に広まった。
「エドワード大統領、爆発により死亡」
「賢者の石、蘇生できず」
「肉体が残らない場合は無力」
「抑止力の限界が露呈」
熱狂は沈黙に変わった。
SNSでは、
不安と混乱が渦巻いた。
「賢者の石でも助けられないの?」
「じゃあ、結局死ぬじゃないか」
「暗殺の方法が変わるだけだ」
「要人は本当に安全なのか?」
世界が、初めて“現実”を突きつけられた瞬間。
世界は、
賢者の石を“万能”だと信じていた。
だがその神話は、
あまりにも脆かった。
そして──
この崩壊は、
次に訪れる“もっと深い悲劇”の
前触れにすぎなかった。
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