第二章 世界の熱狂と拡大
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第二章 世界の熱狂と拡大
大統領スミスの蘇生劇は、
わずか数時間で世界中のニュースを席巻した。
「奇跡の復活」
「暗殺未遂、犯人の命で即蘇生」
「賢者の石が世界を変える」
テレビもネットもSNSも、
賢者の石の話題で埋め尽くされた。
各国の要人たちは、
映像を食い入るように見つめていた。
──撃たれた。
──即死した。
──だが蘇った。
その事実は、
世界の安全保障の常識を根底から覆した。
アーク・バイオテック本社。
山本太郎は、社長室の窓から街を見下ろしていた。
木下浩二が、興奮気味にタブレットを差し出す。
「社長、見てください。
世界中の政府から問い合わせが殺到しています。
“賢者の石を購入したい”と」
太郎は静かに頷いた。
「……そうか」
木下は続ける。
「スミス大統領の蘇生は、完璧でした。
痛みの記憶はあっても、恐怖はない。
蘇生直後にあれだけ力強く振る舞えるなんて、
まさに理想的なケースですよ」
太郎は、
モニターに映るスミスの姿を見つめた。
右手を高々と掲げ、
民衆の歓声を浴びる大統領。
その姿は、
確かに“英雄”だった。
だが──
太郎の胸の奥には、
小さな棘のような違和感が刺さっていた。
(……犯人の命が……
あの瞬間に消えた……)
木下が言う。
「社長、これは世界を救う技術ですよ。
あなたが作ったんです。
誇っていいんです」
太郎は微笑んだ。
だが、その笑みはどこか曇っていた。
「……ああ。
そうだな」
(……本当に、救っているのか?
それとも……)
その疑問は、
まだ言葉にならなかった。
世界は熱狂していた。
- 「賢者の石を要人に配備すべき」
- 「暗殺は無意味になる」
- 「犯人は必ず死ぬ。抑止力として完璧」
- 「日本の技術が世界を変える」
各国の政府は、
アーク・バイオテックへ次々と購入申請を送りつけた。
要人たちは、
“自分は死なない”という圧倒的な安心感に浸り始めた。
SPたちは、
拳銃と並んで賢者の石を携帯するようになった。
世界は、
新しい時代に突入したかのように見えた。
だが──
世界はまだ知らなかった。
この“成功例”が、
後に訪れる混乱と悲劇の
序章にすぎないことを。
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