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舞踏会には呼ばないで

作者: 日々野 新
掲載日:2025/12/22

 「アレン王太子の舞踏会にお前も出席しなさい」


「嫌です。絶対に行きません!」

 父である侯爵の言葉をシェリルは即座に拒否した。

 けれどそれは王の招待のため断れない、彼女はしぶしぶ王都へと向かった。


(去年の舞踏会で失敗してからは、誘いを断ってきたのに、うまく踊れるはずがないわ)


 舞踏会が華やかに始まった――

「あの子が、どうしているの」

 去年、ダンスの最中に王太子の足を踏んだシェリルを、皆冷ややかな目で見ている。


「王太子様、次は私とお願いします」

「その次は私と……」

 今日の主役、王太子は次々とダンスの申し出を受け、パートナーが変わっていった。


 昔は、小さくて泣き虫だったのに……

 幼い頃に病弱だったアレンは王位継承候補から外され、療養のためにシェリルの住む侯爵領に滞在していた。その頃、毎日のように一緒に遊んだ思い出を、彼女は今も大切にしている。


 去年、成長したアレンと久しぶりに会い。恥ずかしさのあまり上手に踊れなかった。

(足を踏んでしまったのは、あなたのせいよ)


 彼と踊る女性を見て、羨ましいと思う自分に気付くが、その気持ちの正体は、まだ分からない。


 シェリルは誰からも誘われないまま、舞踏会、最後の曲がかかる。


「一緒に踊っていただけますか?」

 そう言って、手を差し出したのはアレンだった。

 王太子の誘いを断れるわけがない。シェリルは立ち上がり、そっと手を出す。


「去年はごめんね。あれからダンスを練習したから、今年は恥をかかせたりしないよ」

 彼女の失敗をまるで自分の責任のように話て、アレンは笑った。


 曲の途中、シェリルは何度もバランスを崩して足を踏みそうになるが、

 アレンは顔色一つ変えず彼女をリードし、最後の曲が終わる。


 王太子の顔が少し紅潮して、頬の傷が浮かんで見えた。

「ごめんなさい。顔の傷、残ってしまったのね」

 その傷は、幼い頃お転婆だったシェリルが木から落ち、それを助けた時の怪我の痕だった。


「この傷は僕の勲章だよ!この傷のおかげで僕は強くなろうと思えたんだ」

「君を守るためにね……」

「そしたら、ついでに王太子にもなれたよ」

 そう言って笑うと、アレンはシェリルをそっと抱きしめた。


 二人のまわりで、歓声が上がる。


 一年後、王太子の結婚を祝う舞踏会で、誰もが見とれるダンスを二人は踊っていた。

「小説家になろうラジオ」大賞の応募作品です。

ラジオで読まれることを意識して、聞いてわかる物語を自分なりに考えました。

そのため、いつもの小説では省いてしまうような行も書いています。

ただ、後半の「君を守るためにね……」のセリフが必要だったか、少し迷っています。

1000字以内という制約の中で、かけなかったストーリーもあるので、

想像して読んでいただければありがたいです。


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― 新着の感想 ―
1000字は結構制約ですよね。まとめた苦労がにじみ出ていますね。お察しします。
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