舞踏会には呼ばないで
「アレン王太子の舞踏会にお前も出席しなさい」
「嫌です。絶対に行きません!」
父である侯爵の言葉をシェリルは即座に拒否した。
けれどそれは王の招待のため断れない、彼女はしぶしぶ王都へと向かった。
(去年の舞踏会で失敗してからは、誘いを断ってきたのに、うまく踊れるはずがないわ)
舞踏会が華やかに始まった――
「あの子が、どうしているの」
去年、ダンスの最中に王太子の足を踏んだシェリルを、皆冷ややかな目で見ている。
「王太子様、次は私とお願いします」
「その次は私と……」
今日の主役、王太子は次々とダンスの申し出を受け、パートナーが変わっていった。
昔は、小さくて泣き虫だったのに……
幼い頃に病弱だったアレンは王位継承候補から外され、療養のためにシェリルの住む侯爵領に滞在していた。その頃、毎日のように一緒に遊んだ思い出を、彼女は今も大切にしている。
去年、成長したアレンと久しぶりに会い。恥ずかしさのあまり上手に踊れなかった。
(足を踏んでしまったのは、あなたのせいよ)
彼と踊る女性を見て、羨ましいと思う自分に気付くが、その気持ちの正体は、まだ分からない。
シェリルは誰からも誘われないまま、舞踏会、最後の曲がかかる。
「一緒に踊っていただけますか?」
そう言って、手を差し出したのはアレンだった。
王太子の誘いを断れるわけがない。シェリルは立ち上がり、そっと手を出す。
「去年はごめんね。あれからダンスを練習したから、今年は恥をかかせたりしないよ」
彼女の失敗をまるで自分の責任のように話て、アレンは笑った。
曲の途中、シェリルは何度もバランスを崩して足を踏みそうになるが、
アレンは顔色一つ変えず彼女をリードし、最後の曲が終わる。
王太子の顔が少し紅潮して、頬の傷が浮かんで見えた。
「ごめんなさい。顔の傷、残ってしまったのね」
その傷は、幼い頃お転婆だったシェリルが木から落ち、それを助けた時の怪我の痕だった。
「この傷は僕の勲章だよ!この傷のおかげで僕は強くなろうと思えたんだ」
「君を守るためにね……」
「そしたら、ついでに王太子にもなれたよ」
そう言って笑うと、アレンはシェリルをそっと抱きしめた。
二人のまわりで、歓声が上がる。
一年後、王太子の結婚を祝う舞踏会で、誰もが見とれるダンスを二人は踊っていた。
「小説家になろうラジオ」大賞の応募作品です。
ラジオで読まれることを意識して、聞いてわかる物語を自分なりに考えました。
そのため、いつもの小説では省いてしまうような行も書いています。
ただ、後半の「君を守るためにね……」のセリフが必要だったか、少し迷っています。
1000字以内という制約の中で、かけなかったストーリーもあるので、
想像して読んでいただければありがたいです。




