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第8話 あの頃の話

あれからリハーサルは無事に終わり、メンバーたちはそれぞれの時間を過ごしていた。

怜くんはPAさんと打ち合わせ、蒼くんは「曲作りの続き」と言ってノートを広げて創作活動を始めた。

音馬くんは仁那さんと一緒にコンビニへ。


春翔くんと涼介くんは、他のスタッフさんたちと一緒に客席の端にあるテーブルに、

デモテープや広告を並べ始めていた。

そのスタッフさんたちにも、春翔くんは私のことを紹介してくれて、

「そのうち正式なクルーになるから」と笑っていた。


春翔くんの行動力を目の当たりにすると、ほんと驚かされちゃうな。

今日初めて出会った私に、こんなにも優しくしてくれるメンバーたち。

どれだけ人間ができてるのよって、思わず心の中でツッコミたくなる。


そんなことを考えているうちに、私も何かお手伝いがしたくなって声をかけると、

涼介くんが「昼食を買いに行こう」と誘ってくれて、近くのスーパーへ出かけることになった。

実は、私はずっと涼介くんを応援していた。

だからなのか、ずっとドキドキしっぱなしだった。


まだまだ幼いはずの涼介くんなのに、こんなにも胸が高鳴ってしまうのは、ファンだからなのかな。

なんて思いながら、うるさい鼓動が聞こえていないかハラハラしながら歩いていた。


そんなとき、涼介くんがふと、自分がバンドに入ったきっかけについて話してくれた。



「俺さ、あとからこのバンドに入ったんだけどさ。怜くんに“手伝ってほしい”って言われて。

でもさ、まず見た目が凄かったの。派手。超ド派手。だから俺、どうしようって思っちゃって。」


「ふふっ、確かに皆さん、とっても個性的でしたもんね?当時。」


「そうなの。このバンドの存在は、地元にいるときから知ってたんだよね。

あ、俺たち地元が同じなの。で、地元では有名だったんだよ、Lumiyってさ。

たまたまベースの人が辞めちゃって、俺に声かけてくれたんだけどさ。


ね、見た目がすごくて、俺ついていけるかなって心配になってたんだけど。

ハルくんに、“元々カッコいいのに勿体ないね?”って言ったの。

そしたら、次の日に化粧せずに来てくれて。ビックリしちゃった。

他のメンバーも、俺が提案したことを素直に受け入れてくれたんだよね。

だから、“俺、大丈夫かも”って思ったの。」


「あはは、そうですね。そんなこと言ってましたよね。」


「え?」


「あ!い、いえ!皆さん、とっても優しくて素直な方たちだったんですね。

涼介くんが安心しちゃうくらい。」


「そうなんだよ。それから俺、Lumiyが大好きになっちゃって。

だからさ、沙也音ちゃんにも好きになってもらえたらいいなーって。」


「涼介くん…。きっと好きになると思います!

さっき演奏された曲、私、大好きですから!」



涼介くんは、バンドに入ったきっかけを楽しそうに話してくれた。

もちろん、私はその話を知っている。

『Lumiyの足跡』という書籍の中で、涼介くんが語っていたから。


だから思わず「そんなこと言ってましたね」と答えてしまって、慌てて言い直した。

だけど、そんな話を私に聞かせてくれるなんてすごく嬉しかった。


それに、「Lumiyを好きになってくれたらいいな」と言った涼介くんの横顔は、

まるでお日様みたいな温もりを感じた。


あのね、もうずっと大好きなんだよ。

そう心の中でそっと呟きながら、私は涼介くんの歩幅に合わせて歩いていた。



「沙也音ちゃんとは今日初めて会ったのに、たくさん話しちゃった。

ごめんね?俺、普段こんなに話すことあんまりないんだけど。」


「いえ!涼介くんの話をたくさん聞けて、すごく楽しかったです。

見ず知らずの私に、いろいろ話してくださったのは、とっても救いでした。」


「そう言ってもらえるならよかった。

…そういえば、“迷子”って言ってたよね。

今日さ、ライブのあと打ち上げがあるんだけど来ない?

そこでゆっくり話を聞かせてくれたら、俺たちも嬉しいかも。

何かの助けになれるかもしれないし。」


「え…あ、ありがとうございます!もし、ご迷惑でなければ……ぜひお願いします!」



ライブハウスへの帰り道、涼介くんは「初対面の人にこんなに話したのは初めて」と笑っていた。

そういえば、人見知りする性格だって言ってたっけ。

それなのに、一生懸命話しかけてくれたことが嬉しくて。


そして、打ち上げで私の話を聞かせてくれたらと言ってくれた。

ああ、そうだ。涼介くんって、こういう気遣いができる人だった。

若い頃から、ずっとそうだったんだな。

やっぱり、人間できてるなぁ。


他のメンバーも、若いのに見ず知らずの私を受け入れてくれて、なんて優しいんだろう。

自分が好きになったバンドは、こんなにも温かい人たちだったんだなぁ。

そんなことを思いながら、ライブハウスまでの道のりをゆっくり歩いていった―…




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