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第5話 あの頃のあの人たち

出かける準備を済ませ、2人と一緒に車のあるアパートへ向かうと、そこにはすでに3人の青年が待っていた。

私の姿を見た途端、3人は驚いた表情を浮かべる。

そのうち一番背の高い青年が、長髪の青年を問い詰めるように声を上げた。



「ねぇ、その子誰?まさかとは思うけど、誘拐してきたんじゃないよね?」


「そんなわけないじゃん!辛いことがあって元気がないって言うから、俺らのライブで元気出してよって誘っただけだよ!」


「本当に?嘘じゃない?」


「本当だって!ね?…あ、名前聞いてなかった!」


「あ、本当ですね。私は沙也音と言います。星月沙也音です。」


「沙也音ちゃんっていうんだ!可愛い名前!俺、サヤちゃんって呼ぶね!

じゃあ、俺たちも自己紹介しまーす。」



疑いの目を向けられていることに気づいた長髪の青年は、私に話を振って名前を訊ねてきた。

名前を告げると、「可愛い名前だね」とクシャッとした笑顔で言い、「サヤちゃんって呼ぶね」と続けたので、ちょっとドキッとした。

とても軽いノリだったけれど、嫌ではなかった。

そして、長髪の青年たちも自己紹介を始めたので、私はそちらへ視線を向けた。



「俺は春翔はるとって言います!で、俺と一緒にいたのが涼介。

運転してるのがれん、助手席がそう、後ろの席にいるのが音馬とうま

一気には覚えられないと思うから、覚えやすい人から覚えてね!」


「……?」


「あれ?サヤちゃん?どうしたの?」


「あっ、いえっ…な、何でもないです!皆さん素敵なお名前で…!

そ、そのお名前はステージネームですか?それとも本名?」


「本名だよ!」


「…そんなことって…ある?まさかね…?」



5人全員の名前を、長髪の青年改め春翔くんが紹介してくれた瞬間、私は固まってしまった。

この名前、私は知っている。

私の大好きなLumiyのメンバーと、まったく同じ名前だったから。

でも、そんなことがある?そんなわけないでしょう。

そう自分に言い聞かせて、自己紹介を終わらせて次の話題へと移った。



「サヤちゃんは音楽好きなんだよね?普段はどんな音楽聴いてるの?」


「えーっと…そうですね。

ルミッ…じゃない。J-POPもJ-ROCKも好きで。

地元ではよく友達とアーティストのライブに行ったり、

地元の先輩のバンドのライブを観にライブハウスへ行ったりしてます!」


「そうなんだ?じゃあ、本当に音楽が好きなんだね!」


「そうなんです!音楽で私はたくさん救われました。

音楽がない生活はもう考えられないですね。

だから、今日は皆さんの“音”を楽しみにしています!」



春翔くんに「普段どんな音楽を聴いてるの?」と聞かれた私は、

思わず「Lumiy」と答えそうになり、慌てて無難な返答をした。


そして、ライブハウスにもよく行っていることを伝え、

「今日のライブを楽しみにしています」と言うと、みんなの表情がパッと明るくなった気がした。

この人たち、音楽が本当に好きなんだな。

そんな表情に見えた。



「ここが、俺たちがいつもやってるライブハウスだよ!

ちょっと古いけど、スタッフさんもみんな良い人なんだ!」


「Neon Arkネオンアーク?!」


「そう!“夜の街の箱舟”とか“避難船”みたいなイメージ。

何かあったらこの場所においでってそんなニュアンスで付けたらしいよ。」


「そ、そうなんですね。素敵なネーミングです。」



車を走らせて30分ほどで、ライブハウスの駐車場に到着した。

どこか懐かしく感じたけれど、その理由は分からなかった。

だけど、春翔くんからライブハウスの名前を聞いた瞬間、私はギョッとした。


Neon Ark。

それは、昔からあるライブハウスで、Lumiyがメインで活動していた場所だった。

だから懐かしく思えたの?


頭の中がパニックになりかけていると、春翔くんがライブハウスの入り口に掲げられた広告を指さした。

そこに書かれていた名前を見て、私は完全に言葉を失った。



「俺たちのバンド名、Lumiyって言うんだ!」


「Lumiy…嘘でしょ…?」


「このバンド名、皆でいろんな単語をかき集めて響きが良かったやつにしたんだよね。単純でしょ?でも、名前の柔らかい響きがすごく好きでさ。包み込んでくれてる感じがしない?

俺たちはちっぽけな存在だけど、誰か一人でもいいから包み込んであげられるような、そんな存在になりたいなって思ってるんだ。」


「…知ってる。」


「え?」


「あ…いえ!すごく素敵なバンド名ですね。

想いがこもっていて、とても魅力的です。」


入口に貼られていた広告には、“Lumiyワンマンライブ”の文字。

春翔くんは、それが自分たちのバンドだと教えてくれた。


そして、その名前に決まった理由も教えてくれた。

私は思わず「知ってる」と口にしてしまい、慌てて言い直した。


知ってる。知ってるんだよ、私。

どうりで…どうりで、出会った瞬間から怖いなんて思わなかったはずだ。

よくよく顔を見回すと、音楽雑誌で見たことのある、デビュー前の写真にそっくりだった。


そう思った瞬間、心臓がバクバクと鳴り始め、鼓動はどんどん速くなっていった。



「あ…あのっ…きょ、今日は…が、頑張ってくださいね!」


「どうしたの?サヤちゃん。急にしどろもどろになっちゃって。」


「あー…いえ。えーと…

ワ、ワンマンライブをやられるくらい有名な方々だったんだと思うと、驚いちゃって…」


「あははっ!そんな緊張しないでよー!大丈夫だからー!」



どうしていいか分からず、しどろもどろになっていると、

春翔くんは笑いながら肩をポンッと叩いてくれた。

他のメンバーも「大丈夫だよ」と声をかけてくれて。


私はそのまま、みんなと一緒にライブハウスの中へ。

この場所が、“始まりの場所”なんだ。

そう思うだけで、胸のドキドキが止まらなかった―…


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