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第4話 見知らぬ訪問者

「はぁ…私、これからどうなるのよ…

おばあちゃんは、居てくれるんだよね?」


「どうだろうね?まぁ、何かあったら声をかけなさい。

とりあえず、この世界を楽しんでみなさい。」


「楽しむって言われても…」


「私はいつでも奥の部屋にいるから。

困ったことがあれば、言いに来なさい。」


「うーん…分かった…。分かんないけど。」


今のこの状況で、一人でいるなんて考えられなかった私は、

おばあちゃんに「ここにいてくれるよね」と懇願した。

すると、奥の部屋にいるからと優しく言ってくれて、私はホッと胸をなでおろした。

この場所で一人で暮らさなくてもいい。それだけでも安心だった。


「ひとまず、お風呂に入っておいで。沸かしてあるから。

着替えは置いておいてあげるからね。」


「ほんと?!それはめっちゃ嬉しい!」



少しだけ安心していたところに、おばあちゃんからの“お風呂”の提案。

服もお風呂もどうしようと思っていたから、まさにナイス!と思いながら、

浴室へ向かうと、湯気が立ちこめる暖かな空気が私を包み込んだ。

体を洗って湯船につかると、昨日だけで一気にたまった疲れが、じんわりと溶けていくようだった。



「今日から、どうやって暮らせばいいんだろうなぁ…」



首まで湯船に浸かりながら、これからのことを考える。

答えが出るわけない。怪奇現象とも呼べる意味不明な状況だし、何をすればいいのかも分からない。

ただただ、不安だけが募って、体を重くさせていくだけだった―…









「いいお湯だったよー!って、あれ?」


お風呂から上がり、髪を乾かしながらキッチンに戻ると、

さっきまでいたはずのおばあちゃんの姿がなかった。

別の部屋にいるのかと思って探してみたけれど、どこにもいない。


“いつでもいる”って言ってたのに、もうどこかへ行っちゃったの?

そう思っていると、大きな時計がある広間の方からガタンッ、と音が聞こえた。



「なんだ、いたのー?」



そう声をかけながら広間へ向かうと、そこには見知らぬ二人の男性が立っていて、私は思わず固まった。

一人は黒髪が長く、まるで女性のような雰囲気。

もう一人は私よりも幼く見える、可愛らしい顔立ちの青年。

…って、感心してる場合じゃない。

これは不法侵入では!?マズい!

内心パニックになっていると、幼顔の青年が焦りながら長髪の青年を止めに入った。



「やっぱりやめようってば!不審者だよ、俺たち!」


「大丈夫だって!

ねぇ、君はここに住んでるの?」


「え?」


「いつもはこの屋敷、暗いんだけど、今日は電気がついてたから。

まさかドアが開くとは思わなくて、勝手に入っちゃったんだけど…」


「ごめんね、勝手に入っちゃって…。止めたんだけど、聞かなくて。」


「いえ…」



幼顔の青年は焦った様子で長髪の青年を止めていたけれど、

長髪の青年はお構いなしといった様子で、私に話しかけてくる。

普通なら、すごく嫌な感じだし、怖いと思うはずなのに、

なぜか、そこまで恐怖は感じなかった。


とはいえ、この状況でどうすればいいのか分からずにいると、

長髪の青年は再び「ここに住んでいるのか」と問いかけてきた。


何て答えるのが正解なの?

そう思いながら、しばらく考えた末に、私は、ぽつりと言葉をこぼした。



「…分かんないんです。」


「え?」


「分からないんです….。気づいたらここにいて。

東京だし…何でって…考えても分からなくて…」


「分からないって…もしかして、迷子?」


「はは…かもしれません。

この屋敷、おばあちゃんが住んでるんですけど、

今は住まわせてもらってる感じです。昨日からなんですけど…」


「ええっ…?そうだったんだ…」



迷った末に出てきた言葉は「分からない」だった。

自分でもこの状況が分からないのに、どう説明すればいいのかなんて分からない。

私がそう言うと、長髪の青年は悲しそうな顔をした。

幼顔の青年も、困ったように口を一文字に結んでいた。

何も言えないよね。私だって、何を言ったらいいのか分からないし。

そう思っていると、長髪の青年が突然「あっ!」と声を上げて、手を叩いた。



「ねぇ、今日時間ある?よかったら俺たちのライブ、見に来ない?」


「え?ライブですか?もしかして、音楽されてるんですか?」


「そう!それで、今日これからライブハウス行って、リハーサルして本番なんだけど。

行くところがないなら、俺たちと一緒においでよ!」


「ちょっと!急にそんなこと言ったら迷惑だよ!ねぇ?

無理に付き合う必要ないからね?」



長髪の青年が突然言い出したのは、どうやら音楽の話。

今日はライブがあるらしくて、音楽好きな私の心は、少しだけ揺れた。

どうしようかと迷っていると、幼顔の青年が「無理しなくていいよ」と優しく声をかけてくれた。


その言葉に、私はふと気づいた。

この人たち、悪い人じゃないかもしれない。

私の直感が、そう言っていた気がした。



「ライブ…観たいです。私、音楽がすごく好きで…」


「本当?!じゃあ行こうよ!もうすぐ車が出るから、一緒に行こう!」


「ごめんね?本当に迷惑じゃない?大丈夫?」


「大丈夫です…!ちょっと凹んでて…。元気ほしいなって思ってたので。」


「そっか!じゃあ、俺たちの音楽で元気になれるといいな!」



自分の直感を信じて、ライブを観たいと伝えてみた。

すると、長髪の青年はパッと表情を明るくし、

幼顔の青年は心配そうに、ちょっと困ったような笑顔を浮かべて私を見つめていた。


その二人の笑顔は、どちらもとても優しくて。

私は、少しだけ心が軽くなった気がした。



「よし、じゃあ準備が出来たら行こっか!」


「はい!よろしくお願いします!」



突然の訪問者に驚いていたはずの私。

でも、その訪問者が優しくしてくれたから。

どんな音楽をやってるんだろう?

どんな楽器を使ってるんだろう?

どんなライブハウスなんだろう?


そんなことを考えているうちに、私は少しだけ、心が軽くなり楽しみになっていた―…


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