4話 初めての戦闘 ユタの森①
久々に投稿です。
●黒皇 セリア・フォア・ラムザ視点
この世界に来て5年が経った。
様々な知識を取り入れ、鍛錬を行い、体も大きくなった。
しかし、まだ子供。
この日も親の過保護に悩まされていた...
「駄目よ!まだモンスター討伐なんて早いわ!」
母親である、セリア・フォア・アンナの怒号が屋敷に響く。
「しかしだねぇアンナ、セリア家に生まれた以上、いつかはやらなきゃならないことだ。
大丈夫だ、何も一人でやらせるつもりはない。現場に出て、モンスターがどういった存在なのかを見せるだけだから...」
「いやったらいやよ!ケガなんてしたらどうするの!
まだ跡継ぎだっていないんだから!だぁめ!!」
「アンナぁぁ...」
父親である、セリア・フォア・ギーク。
彼は必死に説得する。
「...母上、僕行ってみたい...」
「え!?」
「なんですって!?」
父親と母親の声が被る。
「駄目よラムザ!モンスターは危ないのよぉ?
もしものことがあったらどうするのぉ?
ここに居たら私が守ってあげるからぁ...」
泣きそうになりながら母親はラムザを抱きしめる。
「...アンナちょっとだけ僕に時間をくれ...」
ギークはラムザを抱きしめるアンナを引き離し、ラムザと向き合う。
「...ラムザ、モンスターはすっごく狂暴だ。もしかしたら殺されるかもしれない。
そうならないように父さんが勿論守る。
でも、とっても怖い目にあうかもしれない...
それでも、行くかい...?」
ギークはまっすぐとラムザを見つめる。
「...行く。」
「...そうか...アンナ、今回はラムザの意思を尊重する」
「...はい...」
「セバス!出発の準備をしろ!」
執事のセバスは、一礼すると、部屋を出ていく。
~数時間後~
あれから馬車に乗り、父親とともに出発する。
もちろん護衛を付けて。
伯爵家の屋敷から馬車と兵の隊列が並び、城壁を出ていく。
「ラムザ、これから町の東部にある森に行く。」
「はい...」
「そんなに緊張するな、兵士たちが守ってくれる。
それに、父さんもこう見えて強いからな!」
ギークは右腕を上げて、力こぶを見せてくる。
確かに、筋肉はムキムキだ。
「閣下。そろそろ到着します。」
外から声が聞こえた。
「わかった。」
外から声をかけてきたのは兵士たちを束ねる騎士、”カムラ”だ。
しばらくすると、隊列が止まった。
「セリア家の方々、ようこそいらっしゃいました。
ユタの村、村長”オグル”と申します。」
「...すまない。少し邪魔する。」
騎士カムラが村長と対面する。
「...ラムザ、どうして僕らが対応しないのか?って顔してるね」
(バレたか...我は顔に出やすいのか?)
「...はい。どうして直接話さないのですか?」
「うむ。ラムザ。僕らは貴族だ。
決して平民と同じ目線で話してはならない。
それをすれば僕らの尊厳にかかわるからね。」
(...くだらないな...)
黒皇は心の中でつばを吐く。
しばらく、するとカムラが戻ってきた。
「閣下。モンスターはここから少し奥に出没するようで、ここからは徒歩になります。
馬車をこの村に預け、ギーク様、ラムザ様には乗馬していただきたく...」
「わかった、そうしよう。しかし、ラムザはまだ乗馬できない。
私が一緒に連れて行こう。」
「はッ!」
馬車が村の中に入って行く。
窓の隙間から外を見ると、人々が道の脇で平服していた。
(...人にはここまで格差があるのだな...)
その後、馬に乗り、森へ進む。
「隊列を維持。そのまま索敵しつつ前進せよ!」
「「「はッ!」」」
兵士たちは、カムラの号令のもと隊列を敷く。
「素晴らしいだろ、うちの兵たちは」
「はい。連携が取れています」
(確かに、統率がよく取れている...
並大抵の訓練ではないだろうな...)
「右からモンスターの反応!数3!」
索敵をしていた魔導士が声を上げる。
「隊列整え!閣下たちをお守りしろ!」
カムラが咄嗟に指示を出す。
「シールド!」
「「「はッ!」」」
前列の兵士たちが魔導で盾を発動する。
*シールド
兵たちが持つ盾の向きに障壁を発動する。
槍や弓など攻撃を防御する。
耐久地は個人の魔力量に比例する。
『バキッ!』『バキッ!』
茂みの向こう側から飛んできた石がシールドに当たり弾かれる。
「魔導士放て!森の中だ!延焼回避!水属性!」
「ウォーターランス!」
魔導士が魔導書を片手に魔導を発動する。
水は槍の形になり、うなりを上げて飛んでいく。
『ドンッ!』
土煙を上げ攻撃が着弾する。
「「「ギャア!」」」
モンスターたちが飛び出る。
「ゴブリンだ!攻撃開始!」
兵士たちがゴブリンに向かって突進する。
~数分後~
しばらくすると、三体のゴブリンは討伐された。
「閣下。三体のゴブリンは討伐しました。」
「うむ。よくやった。
ゴブリンの死体のある場所へ案内せよ。」
「ハッ!」
ラムザが威勢のいい声を上げ、案内を始めた。
しばらく、進むと地面に大きな穴が開いた場所に出た。
「こちらになります。」
ラムザが手を向けた方には、穴の中でミンチになっているゴブリンの死体があった。
「うむ。見事だ。カムラ。」
父、ギークが騎士”カムラ”を褒めると、カムラは跪き、騎士の礼を取る。
「光栄の至り...」
その光景は光に森の陽光に照らされ、神聖なものに見えた。
しかし、我は、そんな光景よりもゴブリンの死体に妙な違和感を抱いていた。




