3話 貴族として ”人々の歴史”
●黒皇 セリア・フォア・ラムザ 視点
生れてから3年。
一人で歩き、屋敷を徘徊することができるようになった。
貴族としての義務ということで、勉強、鍛錬、心構え。
そいういった時間が始まった。
さらに、魔導の技術を扱うための、魔力鍛錬も始まった。
「魔力とは、体の中に存在するもう一つのエネルギーだ。
この力を扱えるようになることで、大きな現象を起こすことができるようになる」
そう話すのは、家庭教師のエルザ。
金髪のきつめの女性だ。
「ラムザ様には、ラムザ家の次期当主としての教養を身に着けてもらいます。
まずは、最低限の体力と魔力を付けてもらいます。」
「...わかりました。」
(敬語にも慣れたな...)
「まず、魔力を増やしましょう。
そのためには、まず魔力を体に纏いましょう。このように...」
そう言った瞬間、エルザは体に魔力を纏う。
「この状態を一時間維持します。やってみなさい。」
「...はい。」
体に魔力を纏う。薄い膜を体に被るイメージ。
(...結構、難しいな...)
魔力がない今の状態では、あまり維持することができない。
(...魔力が足りない。維持、でき、ない...)
その瞬間、脱力感がラムザを襲い、座り込む。
「...ふむ。30秒ですか、3歳にしては上出来です。」
「はぁ、はぁ、はぁ...」
荒い息が続く。
(...この体は本当に鬱陶しいな...)
「これを毎日繰り返して行います。そうすれば、魔力はおのずと増えていきます。
では、今日はここまでです。」
「あり、が、とう、ござい、ます...」
息を切らしながらに声を出す。
「では、この世界についての勉強をしていきます。
私たちが住むこの場所は、ユリエア王国とういって、大陸南部に存在する国です。
建国されてから大体100年が経ちます。
建国王”ユリエア・ラザ・ソーマ”
モンスター溢れるこの世界で人々の安住の地を作るべく、生み出した国家。
それがユリエア王国です。」
黒板にこの国の地図を張りながらエルザ先生は話す。
「ユリエア王国はこのような形をしており、東西に長く、南部は海に面しています。
海とは、塩味のする水がずっと広がっているところです
まだラムザ様は行ったことがないと思いますので、機会がありましたら行ってみて下さい。」
(...正直、海には何度か行ったことがある。
序列6位 海皇
あいつの支配領域であるからだ。)
「先生!質問です!
その地図には外側が書いてありません!どうしてですか?」
「いい質問です。
この地図では王国の外側がわかりません。
ではなぜか、答えは簡単です。
わからないからです。」
「...わからない、ですか...?」
「そうです。
人々はモンスターから逃げまどい、彷徨い、数を減らしていきました。
その過程で、これまで培われた技術、知識、歴史、様々なものを失いました。
建国された100年前以前のそれらの情報はもう残っていないです。」
~授業後~
(...歴史が残ってない?
そんなわけ、あるはずない...)
黒皇は先ほどの授業を疑っていた。
(...我の時代でも人種は数百万人の人口がいた。
地上、地下、上空...様々な場所で生息していた人種が簡単に知識を捨てるはずがない...
しかし、あることが確認できた。
ここは、クローディアス大陸の南部だ。)
先ほどの地図、そこに映っていた国の形が上空から以前見た、大陸の一部によく似ていたのだ。
「...わからない...か、目標がまた増えたな...」




