2話 人種の技術
●黒皇 セリア・フォア・ラムザ 視点
あれからさらに、情報を集める傍ら、この世界の技術を収集していた。
(...モンスターを倒す為、けがを治す為、更なる豊さの為。
人の欲は際限がない。しかし、だからこそ常に前へ進む...)
ポーション、魔導、魔道具。
人が開発した技術は感嘆に値する。
(...我が黒皇として存在していた時代は、確かに平和ではあった。
しかし、その平和によって技術の競争や闘争は存在しなかった。
あるのは、精々種族同士のいざこざくらいだ。
生物同士の縄張り争いは野生での常識だ。)
それゆえに、人種の技術はすさまじいものだった。
特に、魔導。
この技術があるからこそ高度な文明を築きあげたといっても過言ではない。
皇が使う魔法、これは膨大な魔力を消費することで常識を超える事象を起こす。
しかし、魔導は違う。
人種はそれほど魔力が多くない。
それゆえに、効率的に魔法を使うために簡略化されたもの、それが魔導だ。
魔法でそのまま火を放つと、山が消し飛ぶ。
魔導で放つと、焚火を付ける程度。
そのくらいの差がある、しかし、魔力が多くない人種にはそのくらいで十分だった。
ようは使い道の問題だ。
人は様々な魔導を生み出し、それを加工し、文明レベルを上げたのだ。
(...この屋敷の明かりでさえ、魔導具だ...)
魔導具、魔導の効果を永続的に維持する道具だ。
しかし、魔法自体を永続させることは困難だ...
膨大な魔力を誇る皇なら可能であるが、通常では絶対にできないことであった。
その問題を解決させたのもまた技術であった。
魔精石...人が発見したエネルギーの塊だ。
ダンジョンと呼ばれる宝の山、それを発見したのがこの国の初代王。
彼は、建国時にこの地を脅かしていたドラゴンを倒した。
しかし、ドラゴンは門”ゲート”となってダンジョンを生み出した。
その中に入ると魔精石の宝庫であり、彼は魔精石を持ち帰り研究した。
その結果、魔力を内蔵する石であることが判明。
そこからが、人種の技術の発展の始まりだった。
(...まぁ、これは建国王の物語という本の内容だ...)
でも、明らかにおかしい点がいくつか存在した。
一つ、魔導という技術が簡単なはずがない。
それも人という魔法を扱えない人種が研究できる分野ではない。
二つ、そんな都合よく魔精石みたいなエネルギーがあるわけない。
三つ、ダンジョンの内容、扉があり、それを潜ると魔精石の宝庫であったというあの一説。
扉の向こうにさらに違う空間が広がる、明らかに次元魔法だ。
(...次元魔法...異皇の力...)
序列8位 異皇
司る権能は”次元と暴食”
(...手がかりが増えたな...)
人の技術の裏で皇の気配がする。
さらに、調べる必要があるな。




