第34話「どうしてこうなった」
第34話「どうしてこうなった」
どーかん、どかーん。灯台にめがけて砲弾が炸裂する。
なんとなく、やると思った。
岬の灯台に来たのはカンちゃんの方が遅かったと思う。だがカンちゃんは漁港の民をたばねて、すばやく陣形を整えてた。
これは酷い。何が酷いかのか分からない、いや、これは嫉妬か。天才なのか。
「灯台に立てこもりぃぃ? 大砲か、遠方投石機だろ。もしくはワタシの魔法?」ビールを片手にあふれるばかりのカリスマ性を発揮しているカンちゃん。「的が合ってないぞ。使えねえな」
前言撤回。やばいやつだった。
「このままでは、灯台の人質に被害が出てしまいます」
ペンちゃんがしごく真っ当な意見を述べる。
「ふーん、それなら、そこのザコとやってみろよ」
「やります」
ペンちゃんがおれのえり首をひっかんで、灯台の中に突入する。「ひえええ」
灯台の1階? には、やせた若者が身を寄せ合っている。どれもおびえた表情だ。
「すいません、すいませんでした、ありがとうございました」
ペンちゃんが素早く魚狂団とおぼしき面々をボコっていく、あれ案外、早くおわりそうだ。
「待てよ、クソ餓鬼・・・」
あれれ、灯台の上からリーダーらしき、いかつい男が降りてきたぞ。
「!?」
やばいぜ・・・こんちくしょう、人質と爆弾を抱えてやがる。ひたいに汗がにじんだ。
「人質交渉といましょう」ペンちゃんが穏やかに手を広げた。
「人質を返して、ここから、退去すれば、わたしたちは、何もしません」
「となりの漁港を荒らせば、ゴールドは思いのままだっていうのに、このザマかよ、いまさら後に引けるか!」リーダーが爆弾の導火線に火口をむけたとき。
「はい、ファイアーボール!」火花が散り、リーダーのどってぱらに穴が開いた。
「アンタいい線行っているのに残念だね」カンちゃんが灯台の入り口に立っていた。
ちょっと、いいですか、キメているのはいいけど、火の粉が爆弾に引火するぞ。おれは急いで散らかった火を手ではたいた。
「カンテローザさん、いかなる事情があっても許せません。人を殺めるとは。神の名において成敗します」
「ああ~? 僧職には許せないってか? 遊んであげるぜ。ペンペルール。アンタとは一度、サシでやって見たかったんだよ」
ふたりの殺気がここまで伝わってくる。やばいぞ、これは。
「いくぞ! ファ・・・」空気が動いた。
カンちゃんがファイアーボールを詠唱する一瞬の隙をついて、ペンちゃんが宙を飛ぶ。距離をつめた!
「ちっ、速い。フレイム・・・ぐえ」カンちゃんの顔面にこん棒がヒットした。
カンちゃんの鼻から血がしたたり落ちる。
「オマエ、本気か・・・」血をぬぐいながらカンちゃんが応える。
「それじゃあ、成仏してください」
ペンちゃんがカンちゃんの頭上にこん棒を振り下ろす。
「甘いよ・・・」カンちゃんが血で汚れた手のひらを握る。
「(フレイム)ピラ」
「!? うわあ」
ペンちゃんが立っている地点に炎柱が出現した。炎がペンちゃんを包む。
「くっ」ペンちゃんはバックステップして、炎を振り払う。あたりに煙が広がった。
「燃えにくい服を買ってくれて助かりました。勇者様、ありがとうございます」おれの方を向いてペンちゃんが微笑む。なんか怖いぞ。
「勇者? なるほど、そいつが勇者だな。最初から分かっていたけど」
かくいうおれ(勇者)は残った魚狂団の連中を灯台の外へ放り投げていた。
「おお、いにしえの勇者が降臨して、ここに清浄の地が開く・・・」
人質のボケ老人が何かに触発されて、何かをしゃべり始めた! やめてくれ。
「興が冷めた。一時、休戦かな」「ですね」
2人の眼光に耐えられなくなり、おれは人質を抱えて灯台の外へとすっ飛んだ。
「邪魔もいなくなったし、つぎ行こうか」「構いません」
ひりついた魔法力と闘気が灯台に充満する。(ちらっと、カンちゃんも本気を出したな、と思った)
青白い閃光(ペンちゃんも本気を出したな)そして爆音と耳をつんざく高らかな詠唱。
あの・・・君たちは・・・。
ふたりは崩れゆく灯台の中に消えた。
つづく




