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俺は勇者だ  作者: ごっち
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第6話「王城について」

 第6話「王城について」


○城の前


※門番が立っている。勇者は無視して城門へと近づく。


*門番右「また貴様か」


*門番左「今度は牢にぶち込むぞ」


 門番達が道をふさいだ。



・勇者は『おうさまのてがみ』を見せた。



*門番右「おお、これは勇者さま(こ汚い浮浪者め)」


*門番左「ようこそ王城へ(失せろ、乞食)」



(SE)ゴゴゴゴゴゴ・・・



 勇者のために城門が開かれた。



*勇者「・・・(対応違いすぎるだろ)」


 あきらかに納得のいかない表情の門番たちを横目に勇者は城へ入った。



○玄関ホール


 城門から入った玄関ホールに中央階段の横や東西にのびる廊下に配置された兵士どもの姿が見えた。とりあえず話しかけてみよう。


*兵士1「王様が二階でお待ちです(・・・)」


*兵士2「王様が二階でお待ちです(・・・)」


*兵士3「王様が二階でお待ちです(・・・)」


 以下、略。


 こいつらは馬鹿だ。誰に話しかけても同じリアクションしか返ってこない。王様に会うまで絶対、己が持っている情報を教えまいとする頑なな心の表れだ。今後、兵士に会っても話しかけるだけ無駄なので無視して歩いて行くことにした。



○噴水前の休憩所


 城の内部のちょっとしたスペースには、よく椅子やら台座やらが置いてある。はっきりって無駄だ。ここの人たちはそんなに休憩したいのだろうか。そして、そういう場所には何のために居るか分からない人たちがたむろしている。そこの噴水前の休憩所にも何をするでもなく座っている商人風の男がいるではないか。どれ、話しかけてみるか。


*商人「最近、モンスターが増えて他の街に仕入れにいくのにも一苦労ですよ」


*勇者「私が来たからにはもう安心です(自分で退治しろよ)」


 なんちゃって、自分の商業の道ぐらい自分の自警団で警備しろ。



○兵士訓練所(部屋)


 いささか気分を害して、城を巡る回廊と思われる通路を西に折れて進んで行くと、左側にある扉から威勢のいい掛け声が聞こえてきた。何だろうな。俺はその扉を開けた。


「むほぉ!」


 俺は反射的に鼻を押さえた。人いきれと三日間はき続けた靴下にも似た臭いがその扉の中から流れ出し、あたりの空気を汚していた。


 おそるおそる部屋の中を覗いてみた。壁面にはびっしりと刀剣やら槍やら盾やらがかけられ、部屋の奥には鈍い色を放つフルプレートメイルが鎮座し睨みを利かせている。その中で筋骨隆々の城兵と思われる野郎どもが猛烈な剣戟を交わしていた。他の者は木刀で素振りをしている。あきらかにヤバイ場所から一刻も早く立ち去ろうとしたが、俺をみとめた隊長格と見える筋肉お化けの胸毛が近づいてきて話しかけてきた。いや来るなよ。


*ギャランドゥ(筋肉お化け)「やあ、やあ、勇者殿。城の守りは万全にございます(なんだ、このぺっぽこは?)」


*勇者「そ、それは・・・どうも・・・」


 俺はそれだけ言うと、さっさと扉を閉めた。なんで城の一室で訓練なんぞやっているのか。この国には兵舎というものがないのか。それとも国の総兵力が一部屋に収まるくらいしか居ないのか。謎だ。


 それだけ言うと、俺は退去した。あいつらよく平気だな。俺は城の裏手へ足を運んだ。



○城の裏


 城の裏側の廊下は、何本か柱が立っているだけで壁がなく直接、裏庭が望めるようになっている。


 裏庭にある花壇の周りを子供が蝶々を追いかけながら走り回っている。その近くに母親とおぼしき女性が石の台座の上に腰を下ろしていた。何の収穫もなさそうだが、勇者の義務として一応、話しかけてみる。


*子供「わーい、わーい(捕まえて羽をもいでやるぜ)」


 ちなみにガキがちょろまか動き回るから、捕まえるのに2度ほど失敗してしまった。なんあるのか、ここ。


○厨房


 勝手口の方から中に入っていくと、給仕のおばさんが石造りのカマの前でうろうろしていた。とりあえず、厨房にあるツボの中や棚を物色しつつ、給仕のおばさんに話しかけてみた。


*おばさん「最近、北にある森にモンスターが住み着いてね。大切な薬草が採れないのよ。身体の弱い王子様には必要な食材なんだけど。(はやく採ってこい)←でたよ、おつかいイベント」

のるか。


○宝物庫


「ガコン、ガコン」


・鉄格子の扉には鍵が掛かっている。


なぜ、勇者である俺に全力で協力しないのか?


○玄関ホール隅


 なかなか面白い施設だったな。他になんかのアトラクションないの?

 あれ、案内係っぽい、じじいがいるな。


 俺はそいつに近づき、さっそく話しかけてみることにした。


*老賢者「おお、偉大なる勇者に光りあれ」


*勇者「♪♪♪」


 一瞬、あたりが白くフラッシュし、俺のMPは回復した。謎の光線により相手のMPを回復させる老賢者であった。


 実際にはMPはまだ満タンなので、MPが回復したわけではないのだが、なんだか気分がいいもので、調子に乗り、もう一度、話しかけてみた。


*老賢者「おお、偉大なる勇者に光りあれ」


*勇者「♪♪♪」


 非常によい気分だ。いちいち世界が光るのも演出過剰でいいな。勇者を称えるセリフも最高である。まだ何もやっていないのに『偉大な勇者』とか言ってやがる。けけけ。俺は笑いながら、さらにもう一度、話しかけた。


*老賢者「おお、偉大なる勇者に光りあれ(いい加減にしろ。このMP乞食め)」


*勇者「……」


 さっきとはうってかわって、世界の光かたが弱々しくなった気がする。もしかしたらMPを回復させるのもけっこう疲れる作業なのかな。まぁ俺には関係ないが。俺はもう一度、話しかけようとカウンターに身を乗り出した。すると老賢者が鬼のような形相で俺を睨んでいた。さすがにこれ以上、話しかけるとMPを回復させるどころではなく、高度な攻撃呪文が飛んできそうな気がしたので、俺はしかたなく、その場を後にした。



 さあ、いよいよ王様に謁見する時が来た。


俺は高鳴る胸をときめかせて、二階へと続く中央階段を上り始めた。


(se)ザッザッザッザッ。


 フェードアウト。


 第7話「王様について(前編)」



つづく・・・


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