第30話「サカナトール村(前編)」
第30話「サカナトール村(前編)」
森を抜けたら、なだらな平地が続いていた。木々も高いものから低木へまばらに散っていく。
「このままいけば、漁村にたどりつきます」
ペンちゃんが道案内をしてくれる。いつもすまんね。
「ん?」ペンちゃんからすえた臭いがした・・・が、無視した。
おれにもデリカシーってモンがある。
「海かぁ」
しばらく行くと、遠くに海岸線が見えた。地面が砂地にかわり、よく分からん植物が点々と生えている。
「おれの冒険も、7つの海へ開けたなぁ。あははは」
いい気分で進んで、けっこうな広さを持つ漁村に入る。
「ここはサカナトール村だ」
お約束のセリフを聞いて。
村に入ると。違和感を感じた。周囲の視線がおれらに集中している。いや。
漁民どもは、ペンちゃんを見ているようだ。
「ゾンビ?」「殺し屋?」「見てはいけません」母親は子どもの目をおおった。
ペンちゃんは当惑した面持ちでおれを見た。「ん? どうした」
「いえ・・・」しおれているペンちゃんの姿を改めて観察した。「あっ!」
あまりに冒険になれてしまったのだ。ペンちゃんの身なりは一般人からすると物騒すぎた。
服の正面には戦闘の返り血、背中には矢をひき抜いたあとの血糊がべっとり。
なんか殺人事件の被害者みたいになっている。ひどいな。このままではいかん。
「ペンちゃん、装備を一新しよう」
近くにいた村人にたずねた。
「なんか装備をととのえる店とかない?」
「装備? ああ、道具屋ならそこの角を曲がったところにあるぜ」
おれたちはその店に向かった。
ここかぁ。そっけない平屋建ての店舗だ。なにやら店の前に水槽が並んでいる。気にかかるが。
「はい、どうも。お客さんですか? 今日はなに用で」
ハゲの店主? が現れた。
「装備を見ていきたい。それも女性用で」
「装備? はいはい、女性用の品も取りそろえていますよ」
「できれば、耐久力に富んだ、柔軟性のあるものを」
「ではこちらとか、いかかでしょうか。防水、防寒。伸縮性。いい品だと思いますが」
店主は派手なパーカーとズボンを持ってきた。
「うむ、ごわごわしているが、丈夫そうだ。あと、靴もそろえたいな」
「靴? ああ、長靴ですね。これなんかどうでしょう」
店主は、内面ボアのブーツ? を差し出してきた。
「防水、保温、可動域も。最高の長靴です。普段使いでもいけます」
「長靴・・・? 普段?」
疑問点があるし、ほいほい乗せられている気がするぜ。おれを甘く見るなよ。
「いくら?」
「全部で200Gです」
「しぶいな。やめっようかなぁ~。なんか、おまけはないの?」
「なかなかの商売上手。よし、この手銛をつけましょう。いかが?」
「なかなか・・・」
「すいません。わたしには装備できません。刃物が付いている武器は職業上」
ペンちゃんは交渉をさえぎった。
「たしかにお嬢ちゃんの力で魚を突くのは無理でしょう。じゃあ、これはサービス。タモはどうでしょう。魚釣りには必須だと思えますが」
「魚釣り?」どこのだれが? まぁいいか。
「じゃあ、買おう」「お買い上げ、ありがとうございます」
「ペンちゃん、装備買えたよ!」
おれは誇らしげにいった。
「あ、はい・・・」ペンちゃんは店の奥で着替えた。
・極彩色のパーカー「フードまで被れば、僧侶っぽいか」
僧侶帽を捨てようとしたら頑なに拒否された。「これは・・・」
・謎のズボン「暖かそうだ」
・長靴「ブーツとは違うらしい」
・おまけでタモも(なんだこれは)つけてくれた
「武器や防具は装備しないと意味がないぞ」
店主のオヤジはペンちゃんにタモを装備させた。
「これ、すくい網では・・・」
「いいじゃない、アンタにあってるよ」カンちゃんは他の商品を物色しながらいった。
「うむ」完璧だ。ペンちゃん頑張ったからなぁ。
※そして、ペンちゃんは後にこう振り返る
何をいっているのだろうか、この人たちは
なにかが、違う気がする・・・
ペンちゃんは、店主に頭をさげた。
・タイリョー釣具店にて
つづく




