第26話「人さらい山登頂」
第26話「人さらい山登頂」
山の麓まで着くと、傾いた看板が立っていた。
『山道入口』
あたりは木々に囲まれ、他に登れそうな道は見当たらない。ここか。
山道を登って行くと、ゆるい勾配の道が続いていた。しかし、足下が土から石ころに変わり、低木が目立ってくると、厳しいルートを取る山肌にそった桟道がのびていていた。
峻厳な桟道の前まで来る。
「ハァハァ・・・」なんか疲れてきたぞ。鋼の盾がとにかく思い。20キロくらいあるんじゃないか。
・俺は『鋼の盾』をすてた
「だらしないな、と言ってもこの先は馬でも難しそうだ」
カンちゃんは軽やかに馬から降りた。「縛っておいても死んじゃうし、馬はここで諦めるしかないか」
意外にいいヤツだな、と思っていると。
「ファイアーボールで焼肉にしても全部、持っていけないからな」
「・・・」いつもの事か。
山肌にのびる桟道を壁面に腹をこするように進んでいく。
「こええっ!」
振り向くと、出発した村がミニチュアのように見える。滑落したら確実に死ぬ。
ペンちゃんとカンちゃんは、案外、ひょいひょいと断崖絶壁の道をこなしていく。
軽装だと、こういうとき便利だな。
「ゼェゼェ・・・」やっと桟道をこえて、尾根の道を登っていく。ここまで敵に遭わなかったのは、さすがに道が狭かったのと、高度の限界を超えているからだろう。ヤギの姿は何度か見たが。
やっとのことで山頂についた。民家の庭くらいの広さだった。その中心に赤黒く汚れた台座が設置されていた。俺は身構えた。しばしの静寂。一陣の風が山頂を吹き抜けた。
「うーん、何も出てこないぞ」
ぽかんと、頂上に立ち尽くしていると。
「そりゃ、そうでしょ、生け贄もってきてないしな」
カンちゃんが切って捨てた。
「ええ? マジか、そういうことは村を出る前に言ってくれ!」
俺はげっそりした。「ここは下山して、飯食って、寝るか」
「待って下さい。台座からわずかに生命反応を感じます・・・」
ペンちゃんは台座に手を当てて、つぶやいた。
「ああ、エネルギー感知型か。台座に生き物が乗っていないと反応しない」
カンちゃんは俺を見て「オマエ、ためしに台座の上に乗れ」と言った。
「イヤに決まっているだろう!」
「使えねぇな」
「わたしが囮になります・・・生娘が条件だと言っていましたので」
ペンちゃんは顔を赤らめた。
カンちゃんはしばし考えたあと、懐から何らかの呪文と絵が書かれた紙を取り出した。
「うまくいくかわらんけど、やってみるか。久しぶりだな」
台座の上に長方形の紙切れをおいて、詠唱しはじめた。
「ごにゃごにゃ(聞き取れん)急急如律令!」
急に辺りが薄暗くなって、頂上に五芒星が出現した。
「あ、痛! なんだ貴様らは」
台座の前に身の丈3メートルはありそうな、猿の化け物が立っていた。
つづく




