第20回「ゴブリン洞窟」
第20回「ゴブリン洞窟」
とりあえず、行くあてもないので、シュヘンの町をいったん離れて、カンちゃん(そう呼ぶなと言われた)の道案内にしたがって、ゴブリン洞窟の近くまでやってきた。
「けっこう、それっぽい洞窟だな」
「当たり前だ、すべて、調査済みだ!」
「さて、どうするかな・・・」火矢を放って陽動(得意)か、草むらに隠れて奇襲(不得意)か・・・。考えあぐねていると。
「さてはキサマ、シロウトだな」
カンちゃんのニヤケ顔が気にさわる。
「むぐぐ・・・」たしかに本格的なダンジョン攻略は、はじめてだった。
「じゃあ、お手本を見せてやるよ」
カンちゃんは、ときの声を上げて命令を発した。
「気合いを入れて行け! それだけ!」なんという精神主義者!
魔法職のカンちゃんが、みずから真っ先にかけて洞窟の入口へせまった。(RPGのセオリーを完全に無視しているな)
入口近くにいた敵も近くにいた味方(2名)もあっけにとられて、身動きできなかった。カンちゃんは、洞窟内部に素早くもぐりこむと、詠唱の叫びをあげた。
「ファイアーボール!」
あまり当たらないと評判のファイアーボールも狭い洞窟だと乱反射して、面白いようにゴブリンに当たっている。
洞窟の外まで焦げくさい煙が立ちこめてきた。
「ダサい。こんな敵なんて、ワタシの魔法で十分だった」
カンちゃんはわらっているようだ。
ヒュン、ヒュン、ヒュン。
そのとき。おっと、あぶない。洞窟の奥から数本の矢が飛んで来た。
その一本がカンちゃんをかすめた。
「生意気な!」
火に油を注ぐとは、このことだ。怒り狂ったカンちゃんが「ファイアーボール、ファイアーボール、ファイアーボール」を連呼して、実際、ファイアーボールを何発もぶっ放している。いや、やりすぎると、洞窟にある支柱や扉へ引火するぞ・・・。やばい、こいつマジモンだ。
近づいて、洞窟の内部をのぞいていると。
「わたしも行きます!」とペンちゃんもおどり出て、洞窟内の残党を排除している。
俺のターンは・・・。
しばらくして、誰も居なくなった(ゆかには哀れなゴブリンの焼死体がゴロゴロと転がっている。中には頭を叩きつぶされたものも・・・)洞窟を手探りに進む。
たいまつがともっている奥の扉をまえに2人の姿が見えた。
「あけろ! 焼き殺すぞ」
「いや、わたしがたたき壊します」
俺の? パーティはますます手に負えなくなっている。
「案外、楽勝でしたね」
「でしょ」カンちゃんは軽くウインクした。
「ゴブリンなんて、人間に害をくわえる外道です。滅びるべきです」
ペンちゃんはカンちゃんにうなずきながら答えた。どうやら、悪い影響を受けているようだ。
俺は少し離れたところから、そのやりとりをながめていた。
ペンちゃんは俺よりずっと勇者に向いているかもしれないな。
「あと、少しよ! 頑張っていきましょい!」
カンちゃんはいった。だが、お前は異常だ。
こういう性格のキャラは自分の目的に対して手段を選ばない。
なにやら背筋に寒気が走った。
身震いしていると、ついに奥の扉がぶち破られた。
小部屋には、ゴブリンの子どもたちが身を寄せ合っていた。
「じゃあ、これくらいで・・・」俺が駆け寄ると。
「ファイアーボール!」
小部屋は炎に包まれた。
「・・・」
「やりました、勇者様!」
「当然だわ。 ん? 勇者?」
俺はなんとなくこの世界に違和感を覚えた。そして、突き刺さるような冷たい視線も。
「勇者・・・?」
つづく




