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3話 レーヌとの出会い

 どれだけ気を失っていたのだろうか?

 僕は気づくと水辺に倒れていた。


 僕はゆっくりと起き上がる。


 先ほどから何が起こっているのか全くわからなかった。


 僕は体を確かめる。


 素っ裸のまま、体にはどこにも異常はない。


 全く状況が理解できない。


 だがここに居ても仕方ないのは事実だ。


 とりあえず僕は、適当な集落を探すために、近くにあった道を歩き出した。



 しばらく歩いていると、これは馬だろうか?それとも、いやこれは馬車であろう。


 遠くからけたたましい音が聞こえてきた。


 どうやら僕の後ろから走ってきているようだ。


 数秒もしないうちに、馬車が僕の横を通り過ぎて行った。

 護衛も3人、別の馬で同行している、間違いなくこの国の中で重要人物を護衛していることは、間違いないだろう。


 僕は馬車を眺める。


 だが、次の瞬間、馬車を引いている馬が急に倒れた。


 もちろん馬車はその速度のまま馬にぶつかって半壊する。


 僕は、あまりの事故にそちらの方に走り出した。


 現場に駆け付ける。

 僕の目にはあわてる兵士と馬車からなんとかはい出て来る少女が映った。


 1人の兵士は少女の救護を、後2人の兵士は警戒し、辺りに目を凝らしている。


 僕が現場に着く直前に、半壊した馬車の周の草むらから、大柄な大人の姿が数名現れ、馬車を取り囲んだ。


 あれは盗賊だ、間違いない。


 数は10人程、3人の兵士と少女では勝ち目はないだろう。


「これはいい獲物だ、その嬢ちゃんを置いていけば、命は取らねぇ」

 盗賊はニタニタしながら兵士達に腰から剣を抜き、距離を詰める。


「この方を誰と心得る、西方を守護する辺境令嬢、レーヌ・バーイヤーであらせられるぞ、その汚い手を触れて見ろ、ただでは済まないぞ‼」

 盗賊達はその言葉を馬鹿にしたように笑う。

「上玉でさらに人質としては申し分ないじゃないか、これ以上の獲物はねぇな」

 盗賊の首領である男は腹を抱えて笑い続ける。


 レーヌ・バーイヤー間違いがなければ彼女は僕の妹であるはずだ、間違いない。

 僕は魔術を唱える。

「その怒りで悪しきに罰を、ライトニングブレイク‼」


 その瞬間、僕は体中に激痛を感じた。

 痛い、焼ける様だ。


 それと同時に、馬車を取り囲んでいる盗賊達は、雷の魔術に打たれ絶命した。


 僕は、あまりの痛みに地にうずくまり呼吸を整える。


 僕は今まで魔術を使ってもこの様なことになったことはない。

 僕はどうしてしまったのだろうか?



 少女の方を向くと、少女は自らに回復魔術を使っていた。

「我に再び立ち上がる力を、ライトヒーリング‼」


 少女もケガをしていたが、たちまち体の傷がふさがっていく。

 少女は僕の方にゆっくり歩いてくる。


「助けてくれて、ありがとうございます。私はレーヌ・バーイヤー、治癒術師です。体調がすぐれないようですね、どうなさいましたか?」


 魔術を使った後の痛みが徐々に引いていた僕は、ゆっくりと立ち上がる。

「大丈夫です、お気になさらず」


 そう言いながら、僕はレーヌと目が合った。

 どこか、母の面影を感じる顔の輪郭に、母と同じ金髪の髪の毛、父のような力強い瞳、そして治癒術師の正装を着こなしている。


「僕は……」

 僕は自分の名前を言いかけてためらった。


 父、オクトー・バーイヤーに拒絶されたことを思い出す。


「僕の名前はヴェルフと申します、無事でなによりです、それでは……」


 そう言って、レーヌの横を通り、先へ進もうとしたとき、レーヌが僕に声をかけてきた。

「ヴェルフさん少しお待ちになって下さい、それに、そんな恰好でどこへ行くのですか?」


 僕は素っ裸のままに気づく。

 そんな僕に護衛の一人がマントを貸してくれた。


 そんな僕にレーヌは僕に微笑みかけながら言う。

「馬車は壊れてしまいましたが、馬は3頭おります、一緒に町まで行きませんか?後、お礼をしないと」


「お礼なんて思い浮かびません」

 僕は即座に答えた。


「では、町に着くまでに考えておいてください、貴方は命の恩人なのですから」

 僕の言葉にレーヌは優しく微笑んだ。


 残念ながら、馬車の御者だけは助からなかった。

 治癒術師は教会に属し、聖職者としての方面もある。

 レーヌは、手早く儀式をすませ、その場で御者を火葬した。


 僕たちは御者をとむらった後、次の町へと急いだ。

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